再会
伊吹は人混みをすいすいと抜けるように歩いてゆく。
沙夜は手を引かれながらついていくのがやっとだ。
あの紐の匂いを嗅いだだけで、まるで千早がいる場所が分かっているかのようになんのためらいもなく進む。
沙夜は伊吹が紐の匂いを嗅いだことに疑問を持っていたが、今それを尋ねてもゆっくりと答えてもらえないだろうと思い、ただ黙ってついていった。
どれ程歩いたのだろうか・・・・・・?
実際そんなに長い時間ではないはずだが、祭りのあの独特の雰囲気の中にいると時間の感覚がなくなっていく。
突然伊吹が立ち止まった。
沙夜は伊吹にぶつかってしまった。
「きゃっ!」
「大丈夫か、沙夜?」
そう言った伊吹の声に少し笑いが含まれていて、沙夜は思わず言い返した。
「だ・・・・・・大丈夫よ・・・・・・。急に止まらないでよぅ・・・・・・!」
「すまない。だが、ほら・・・・・・」
伊吹が指差した先には、周りをきょろきょろとみながら誰かを探すように歩く千早と咲音の姿があった。
あ・・・・・・!!
「伊吹、なんで・・・・・・!?」
沙夜の驚いた様子などお構いなし、と言うように伊吹が優しく背を押した。
「いっておいで―――」
「伊吹も、きて?」
沙夜は伊吹の返事も聞かず、手を引いて千早と咲音のもとへと向かった。
「千早!咲音!」
「あ、沙夜!!」
3人は互いに手を取り合った。
「よかったねぇ、やっと会えた・・・・・・」
「こっちも大変だったのよ?沙夜ったら急にいなくなるから・・・・・・!!」
咲音にそう言われて、沙夜は謝るしかなかった・・・・・・。
「ごめんね。いつのまにかはぐれちゃってて・・・・・・」
「まぁ、いいじゃない。今から一緒にまわろう?」
千早が助け舟を出してくれて助かった・・・・・・。
「あ、でもよくわかったね、わたしたちのこと」
「そうそう!!まるで私達があそこにいるって分かってるみたいにずんずん歩いてくるんだもの」
え・・・・・・?
「あのね、実は途中で・・・・・・」
沙夜は伊吹のことを、顔を隠していたがっていたことと、祭り着の紐のことを除いて話した。
なぜか、言ってはいけないような気がしたのだ。
「それで、伊吹が一緒に探してくれたの。ね、伊吹?」
そう言って振り返るとそこには誰の姿もなかった―――。
「誰?誰もいないじゃない?」
いや、いることはいるのだ。
祭りで行きかう人々が―――。
けれど、その中にあの狐のお面はなかった・・・・・・。
「さっきまでは一緒だったの。ほら、2人のところにきて・・・・・・。あ、そう!駆け寄ったときに手を離したんだわ!2人も見たでしょう?」
2人の答えは・・・・・・。
「え?誰?あのとき、沙夜一人だったわよ?」
「うん・・・・・・。沙夜、あの時確かに一人だった」
沙夜は混乱してきた。
確かに自分は伊吹の手を引いて、この2人の元まできたはずなのだ。
なのに、何故2人とも伊吹の姿を見ていないのだろう・・・・・・!?
めずらしく、いつもより長いですw
何故伊吹の姿が見えないのか?
その謎は・・・・・・そのうち明らかになるはずですwww