祭りの中で
沙夜の手を引いて歩いている間も、伊吹は一向に面をはずす様子がなかった。
沙夜は不思議でならなかった。
面は皆、頭の上につけるのが普通だ。
いや、普通かどうかは分からないが、沙夜の友達は皆そうする。
「ねぇ、伊吹」
「どうかしたのか、沙夜」
その優しげな声音を聞くと、面のことを尋ねるのが憚られたが沙夜は思い切って尋ねてみた。
「ねぇ、どうしてお面を顔につけたままなの?」
伊吹は一瞬驚いたようなそぶりをみせた。
「どうしてと言われてもなぁ・・・・・・」
伊吹が困ったように頭を掻くのを見て、沙夜はそれ以上は尋ねないことにした。
もしここで、伊吹が機嫌を損ねてどこかへ行ってしまったら沙夜はまた、独りになってしまう。
そこまで沙夜が考えたところで、今度は伊吹が問うてきた。
「沙夜はどうしてだと思う?」
沙夜は逆に聞き返されるとは思っていなかった。
確かに、そう言われてみるとどうしてなのか全く理由が分からない。
もしも、自分だったら・・・・・・。
お面をつけて、いいこと・・・・・・。
「顔を・・・・・・見せたくないの?」
面越しではあったが、伊吹が微かに微笑んだのが分かった。
「え・・・・・・?」
沙夜は思いつきで言ってみただけだった。
「そう、俺はね、顔を見られたくない・・・・・・いや、見せてはいけないと言うべきなのかな」
見せてはいけない・・・・・・?
沙夜には理由が分からなかった。
「どうして、見せてはいけないの?」
そう尋ねてみたが、伊吹は微笑んだままだった。
そうなると、いよいよ沙夜は不思議でならなくなってきた。
伊吹が顔を見せてはいけない理由・・・・・・。
沙夜には見当もつかなかった。
平日で明日学校なんで、今日は短いです。
これから沙夜と伊吹にはどうしてもらおうかなw