孤独
人が多くて息が詰まる・・・・・・。
普段ならこんなに人が居ることなどまずないこの里に、今日は近隣の村から多くの人がやってきている。
毎年、カミへと感謝を捧げるこの祭りは近隣の3つの村と合同で行っているのだ。
カミへ農作物と酒、塩を捧げ祈りの歌を歌ったあとは沢山の店が出る。
子供達はこれが楽しみで仕方がないらしい。
まぁ、沙夜もその一人なのだが。
沙夜は人を半ば掻き分けるようにして歩いていった。
「やっ・・・・・・!」
祭り着のすそに足を取られ、派手に転倒してしまう。
恥ずかしい・・・・・・!!
顔を真っ赤にしながら立ち上がり、木立の方へ行って汚れを払うと妙に惨めな気持ちになった。
みんな仲の良い友達や家族と笑いあって歩いている。
沙夜とて、一人で来たわけではない。
里でいつも一緒にいる咲音と千早と3人で出店を回ろう、と言っていたのだが・・・・・・。
「完全にはぐれちゃった・・・・・・」
はぁ、とため息をつく。
祈りを捧げ、出店を回りだしたときは一緒だったのだ。
人の波にもまれるようにしながら歩いているうちにいつの間にか2人ともいなくなっていた・・・・・・。
どうしよう・・・・・・。
このままいても出会えないかもしれない・・・・・・。
もし沙夜が咲音のように楽観的な性格であったなら、このまま一人でも出店を回りそのうち再会もできたのであろうが。
沙夜はいちいち心配しすぎてしまい、結果失敗するような、そんな性格であった。
ふいに涙が溢れてきた。
皆が笑っているなか、一人取り残されたように思えて。
沙夜は木立の奥に歩いていって、膝を抱えて座り込んだ。
カミへと感謝し、守ってもらえるようお祈りしたのに・・・・・・。
「うぅ・・・・・・」
『決して日が暮れてから森に入ってはならぬぞ。魔ノモノが襲ってくる』
はい、沙夜って心配性ですねw
自分はどちらかというと咲音みたいな人です。
ちょっと補足を―――。
『』内の言葉は沙夜が里の長老から聞いた言葉です。
魔ノモノとは・・・・・・?