1 目が覚めるとそこは
今、何時だろう?
沢山寝たような気もするけれど、周りが暗いということはまだ夜中かしら。
何だか異常に喉も渇いているし、先ずは厨房へ行って水を…
ゴンッ
「痛った!~~~ッ」
体を起こそうとした瞬間、額が何かにぶつかった。
更に、額に手を当てようとした瞬間、肘も何かに打ちつけてしまった。
響くような痛みが額と肘から広がっていく。
何なに!?
私ベッドの周りには何も置いていないはずなのに!
何にぶつかったというの!?
ていうか、暗過ぎじゃない?
起き抜けで目が慣れていないからかと思ったけど、それにしたって暗過ぎる気がするのだけれど…
先ずは状況確認から、
ぺたっ ぺたっ コッン コンコンコンッ
「は、えっ?何これ??」
何かに囲まれてる?何に??何で???ますます訳がわからないわよ!?
狭くて全然体も動かせないし、何なの?これ、箱?
もしかして私、箱の中に閉じ込められてるの!?
え?嫌、やだやだ!!!怖い!!!!
箱のようなものに閉じ込められているとわかった途端パニックに陥った。
「嫌!だっ誰か!!居ないの?!!!お願い助けて!!!!」
ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ
「ここに人が居ます!!お願いだから、誰か!!!!」
ガンッ、ガンッ、ガンッ
「お願いします、誰か助けてください!息が、息が苦しいの!」
ガンッ、コンッ、
「おねがい、します、だれかたすけてください…」
コンッ
「おねがい…たすけて……」
………
どれ程の時間、そうしていただろう。
いくら叫んでも、周りを叩いて音を鳴らしても、誰も来ない。
そもそも、人の気配も全く感じない。
呼吸も段々とし辛くなってきた。
酸素が無くなってきてたのかしら。
「わたし、死ぬの?」
この訳がわからない状況のまま、私死ぬのか………
いいえ、諦めては駄目…………
でも、もう思考がまとまらない………………
キーンとした音がずっと聞こえるわ……………………
これが私の人生の最期だと悟った瞬間、後悔が押し寄せてきた。
私の人生って、何だったのだろう……………
こんなことになるなら……………もっと………………
意識が途切れそうになる中で、私のすぐ頭上から、外から、何か固いものが当たるような音がした。
おと……………?
…………音!?
もしかして誰か助けにきてくれたの………?
私、ここから出られる??
それから何度も、外から ガッ やら ザァー というような音が聞こえてくる。
人だ、人が来たんだ!
希望が見えてきた途端、途切れそうだった意識がハッキリしてきた。
と同時に、自分の中の冷静な部分が囁いた。
これは本当に助けに来た人なのか?
本当は私をここに閉じ込めた誘拐犯で、とどめを刺すために戻ってきたのでは?
そう思うと、再び恐怖が体を支配した。
先ほどまでは「助けに来てくれる人」しか想像していなかったけど、よく考えてみると、意識がない私をここに閉じ込めた人間がいる。
犯人の目的は不明だが、ただの拐かしではなく、
例えば人を殺すことが………
「ハ……ハッ、」
人生の最期を悟っていたというのに、誰かに直接手を下されるかもしれないと思うと、上手く呼吸ができなくなった。
恐怖で涙も出てくる。
外から頻りに聞こえてくるものが、希望の福音なのか、それとも絶望へのカウントダウンなのか判断がつかない………
どれ程の時間が経っただろうか。不意に音が止んだ。
そう気づいた瞬間、私の眼前にあった天井とおぼしきものが離れて行き、光が射し込んできた。
本来ならそれほど強くない光なのだろうけれど、長い時間暗闇の中に居た私には鮮烈な光に感じられた。
反射的に強く目を瞑ってしまったが、慌てて目を開いた。
相手が殺人犯ならば、逃げるなくては!
まだ少し霞む視界の中で、眼前の存在へと意識を向けた。
目の前には、自分と同じ年齢位の青年が居た。
満月を背にした彼は私と視線が合うと、少し目を見開き、口を開いた。
「やっぱり、生きてた。大丈夫か?」
かけられたのは心配の言葉。
ああ、私、助かったんだ。
安心したからか、体力切れか。
私の意識はそこで完全途切れた。




