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プロローグ

雨がしとしと降る中で、ある子爵令嬢の葬儀が執り行われた。

令嬢の名はスフィーリオ・パルヴィス。

近年貿易業で利益を上げているパルヴィス家の長女で、王立学院では常に上位の成績をキープする程の優秀な人物である。

そんな彼女が昨日の朝、ベッドの上で心肺停止の状態で見つかった。

彼女は命に関わるような持病などは無く、部屋に争った痕跡もみられなかった。

さらに、パルヴィス家で働くメイド達も口を揃えて

「お亡くなりになる前日、彼女はいつも通りに過ごしていた」

と証言したことから、彼女の死は"原因不明の突然死"として処理された。



そして本日、スフィーリオの家族と数人の親族、彼女の婚約者が集まり、しめやかに葬儀が執り行われた。

成人して間もないであろう年若い神父が祈りを捧げ、参列者もそれに倣い祈りを捧げた。

葬儀中、ある者は俯いて涙を流し、またある者は口を引き結んで何かを耐えるような表情で、スフィーリオが眠る棺を見つめていた。


故人への別れの儀が終わり、棺は土の下に。

参列者らが立ち去る中で、スフィーリオの義妹と義弟、彼女の婚約者が最後まで墓前に残っていた。

義妹は彼女の墓石の前に白百合を供えると

「おねえさま、私、おねえさまの分まで頑張りますね。

どうか天国から見守っていてくださいまし。」

と決意を表明した。

それにスフィーリオの婚約者が続く。

「スフィーリオ、君とは政略的な結び付きであったけれど、本当の家族のように思っていたよ。

天国に旅立った君に変わって、僕がアリスティーネ嬢やラウロ君を守るよ。」

「ミケーレ様…」

「アリスティーネ嬢、これ以上は体が冷えてしまう。

君はあまり体が強くないんだから、もう戻ろう。」

「…わかりましたわ。」

義妹とスフィーリオの婚約者が墓を離れていった。

最後に残った義弟は

「義姉上、僕は、何もできなかった。

もう遅いかもしれないけれど…必ず……」

そう呟き、首から下げていたペンダントを外した。

クローバーが刻まれたそのペンダントを墓前に置くと、そっと踵を返した。


斯くして、子爵令嬢スフィーリオ・パルヴィスの物語は幕を閉じたのである。










静まり返る深夜の墓地に、黒髪の青年が一人立っていた。

彼は真新しい墓石の前までやって来ると、その手に握るシャベルを土に突き刺して墓を掘り返し始めた。

月明かりのみを頼りに黙々と掘り続ける姿は不審者そのものである。

それに加えて墓を掘り返すなんて死者に対する冒涜でしかない。

だがしかし、この行為を咎める者はこの場に誰ひとりとしていない。



2時間程経過しただろうか。

青年はついに墓を掘り返した。

その露になった棺には「スフィーリオ・パルヴィス」の名が刻まれている。

それは数時間前に埋葬されたばかりの子爵令嬢の名であった。

青年は躊躇することなく棺を開けた。

そこには子爵令嬢の遺体



ではなく



翡翠のような瞳に涙を湛えながら青年を見上げる、生きた少女の姿があった。

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