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01 前世での死

【注意】

 首吊りの表現があります。

 トラウマなどがある方は十分ご注意ください。

 私は、愛されない人間だ。


 父は私が幼い頃家を出ていった。きつい薔薇の香りを纏った若い女を連れていた。

 母は父に行かないでと泣いて縋り、兄と私はただその光景を見ていた。


「あぁもう何でそんなところにいるのよ、この不細工!!私の視界に入らないでっていつも言ってるでしょ!」


 私は顔が醜かった。重い一重瞼に鼻は低くて丸い。兄も母も綺麗な二重瞼なのにな。

 父はどうだったか覚えてないけれど、もしかしたら私のような目だったのかもしれない。父が出て行ってから狂ってしまった母は、私を不細工だ、醜い、目が気に入らないんだと罵りよく殴ったから。


 アルコールに依存し、酔った母に酒瓶で殴られたことがある。

 五歳上の兄はその様子をただ見ても平然としていた。

 多分母にも私にも興味がなかったんだと思う。兄が家に帰ってくることなんてほとんどなかったし、話しかけても無視されるから会話をしたことも片手で数えられるくらいしかない。


 兄には友人が多いが、私には友人がいない。

 母から虐待を受けていた私の身なりは汚く、誰も関わりたくなかったんだと思う。

 そのため小学生の頃は腫れ物のように扱われ遠巻きにされていたが、中学生になると虐めを受けるようになった。


「キャハハ!見てこの不っ細工な顔!」

「ボロ雑巾がよ〜くお似合いでちゅよ〜!」


 クラスメイトも担任も、皆虐めを黙認していた。虐めの主犯格の女子は美人で家がお金持ちの、クラスで人気者の子。一方虐めを受けていた私は不細工で、家庭環境に問題がある。


 もし、私が美人に生まれていたなら。

 もし、私が家庭環境に恵まれていたなら。


 ビリビリに破かれたノートやゴミ箱に放り込まれた筆箱が入った古い鞄を床に落とした。

 目の前では、やけに静かな母が虚な目で揺れていた。

 ブラブラ、ギシギシ、ポタポタ

 縄が垂れ下がった天井が軋み、母の足の先から液体が垂れている。

 救急車を、呼ばなければ。

 スマホを手に取ろうとしたが、虐めっ子たちに壊された後だった。

 私は走った。

 いつも殴るし、罵るし、けれどそれでも私のお母さんだった。

 警察署に駆け込んで事情を説明すれば、きっと救急車も手配してくれるだろうし兄にも連絡を入れてくれるだろう。

 警察署まで後少し、そんな時に、全身が明るいライトで照らされた。重い衝撃が全身に伝わったかと思うと、途端に激しい痛みに襲われた。


 もしも私が美人に生まれていたなら。

母は私を憎まなかったかもしれない。兄ともっと話せたかもしれない。虐められなかったかもしれない。


 神様、どうかお願いです。次もしまた生まれ変わるのなら、美しい容姿を、温かい家庭を、私にください。


次回から本編に入ります。更新は不定期です。

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