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監視対象コード:RYTHEM

本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません。


一部に暴力的描写・性的表現・過激な言動が含まれる場合があります。苦手な方は閲覧をお控えください。


今日は休息日である。

いや、訂正すると仕事ではあるのだが、今日調査する監視対象は比較的扱いやすい個体で、その上私を友人として尊重してくれているためとてつもなくやりやすいのだ。まぁとある数点を除けば基本的に良い奴だ。


_職員コード『監視人』、早く、行ってください。


『博士』の疲れた声が聞こえる。昨日の飲み会にもいなかったし、仕事が山のようにある上層部と研究員をかけ持ちしているんだから疲れなんて取れないのだろう。哀れ。


_中の監視対象がやかま、…騒がしいので。

_ああもう!通信に割り込まないでください!


あぁ…。今から調査する監視対象は電気系統に強いから、恐らくハッキングだかジャミングだかで割り込んで私を早く寄越すように『博士』に直接抗議しているのか。相変わらず騒がしいやつで何よりだ。


「『監視人』、業務を開始します」


* * *


「ようっやく来たぁ!俺めっちゃ待ったんだけど!」


「ははは、今日も騒がしいねリズム」


確認

監視対象コード:RYTHEM-1

    危険度:Unknown

    友好度:High


見た目は茶髪に緑色の瞳、至って平凡な男子学生の見た目をしている。また、視力には問題無いはずだが、形が気に入ったらしく眼鏡をかけている。このメガネは昔の当方とのコミュニケーション行為でカタログから選んだものでありとても気に入っているらしい。


尚、RYTHEM-1は大変友好度の高い監視対象であり、新人研修の際にも協力してもらっている。


「ほら監視人!最近あった俺の中での面白いこと!

 暇だったからフリップに纏めといたぜ!」


RYTHEM-1の調査は比較的簡単。変にちょっかいを掛けてくる他の監視対象よりもずっと好感度が高いのはこれのお陰である。もう報告書をそのまま書いて欲しいまであるのだけれど、…。通信が乱れました。


「まずは健康診断で色んなやつと話せたこと!

 あとお利口だってお菓子もらった!

 後で監視人にも分けてやるから!

 あとはね、あとなー…」


「社交的で、管理している側として誇らしい。

 お菓子で良ければ今度私も焼いてくるから、

 リズム、受け取ってくれる?」


「まじ!?受け取る!めっちゃ受け取る!

 お茶会しようぜ!美味しいお茶用意しとく!」


RYTHEM-1の感情度高揚を確認、喜んでいる。後ほど上層部に申請書類を提出しますので、RYTHEM-1に対する贈り物の許可をください。


_許可します。


確認。


「それで、話は変わるけど、お願いがあるんだ」


「んー?いいよ!なんでも言って!」


「リズムの本体の確認をしたいんだけど」


「えっ、」


RYTHEM-1はRYTHEM(Original)を見られることを嫌っている傾向が確認されている。確かに威圧的ではあるが。


「えー、…いいけど、怖がらないでね?」


「勿論だ」


調査区域変更:RYTHEM-1対応部屋→本体収容施設


_ぶぶ、ぶぶぶ


確認

監視対象コード:RYTHEM(Original)

    危険度:Unknown

    友好度:High


RYTHEM(Original)は巨大な蜂型の元素生物である。全体的にビビットイエローをしていて、腹部に黒いラインが入っていることが確認される。羽音は大きく、人間に嫌悪感を抱かせる。人から嫌われやすい自分の本体の姿を嫌がっているらしいRYTHEM-1は心配そうにこちらを見ていた。敵意は見られないので当方としてはどうでもいいが。安心させるように腹部の黒いライン撫でれば擽ったそうに身を捩る。


「俺に触れちゃうんだもん、監視人は凄いねぇ」


敵意を向けられれば死ぬのだから、向けてこない相手をどれだけ警戒したって無駄だというただの諦めなのだが、まぁどちらにせよRYTHEM-1が喜んでいるのならそれでいい。


「写真を撮るね?」


「えー…、えー、…監視人が言うなら、まぁ」


1枚、2枚、計5枚の写真を端末で送信。

今日の業務はこれで終わりです。


「ありがとうリズム、これで仕事は終わりだ」


追記:接触確認。


「どうしたの?」


「か、帰らないよね?帰るわけないよね?」


「いや、でも業務は…」


「なんで、俺と監視人は親友でしょ!?

 待ってたって言ったじゃん!

 もっとさ、お話とか、遊ぼうよ…」


RYTHEM-1の感情度低下を確認。確認、RYTHEM-1のケアに移りますか?当方は午後から休暇です。


_休暇を取り消し、ケアに当たってください。


「…。了解。

 ごめんねフリル、意地悪した」


RYTHEM-1との接触。嫌がられる様子はなく、むしろ喜んでいるように思える。感情度の低下の改善が見られる。直接接触行為を好むRYTHEM-1には今の通りの虚偽申告と単純なコミュニケーションが最適。また、RYTHEM-1は比較的簡単な性格をしていることからケアも短時間で行われると想定される。終わり次第休暇を申請します。


「私もリズムと会えなくて寂しかったよ。

 今日の仕事は終わったけど、

 もう少しだけここにいてもいいかな」


「うん、」


「ごめんねリズム、笑って?

 私、リズムの太陽みたいな笑った顔が好きだな」


RYTHEM-1からの接触を確認、また表情筋の弛緩も確認。感情度の高揚も見られる。単純で扱い易い、ですがRYTHEM両体の危険度は未だ不明であり警戒は必要。


「俺、傷付いた、からさぁ。

 今日のお話終わっても、また来てくれる?」


要求『再訪問』を確認。


受け入れます、また受け入れ以前に監視対象コードRYTHEMは『監視人』の管轄であり、再訪問は要求されずとも確定されたこと。RYTHEMが拒否したとしても『監視人』には訪問の義務があります。


「勿論だよ、私達は親友でしょ?」


RYTHEM-1は『親友』という単語に固執しており、ことある事に当方にそれを求めます。受け入れることでRYTHEMを更に扱い易くすることが可能になる。


「うん!良かった、俺だけじゃないんだよな?

 監視人も、俺の事親友って思ってるよな?」


虚偽申告を行います。


「当たり前でしょ?」


「っ!よかった、…よかった」


現在からケア行為に移ります。念の為通信は一度電源をオフにするため、当方が部屋から退出するまで緊急連絡事項は館内放送でお願いします。またRYTHEM-1からの通信妨害も懸念されるので十分注意をして連絡を行ってください。




《通信終了》


-----


「『親友』ってなんだと思う?」


「え、急になに?」


同僚の『掃除屋』が困ったように笑いながら聞き返してくる。それに、だから、と前置きを置いたのは先程まで耳にタコができるほど聞いた『親友』という単語に若干イライラしているからなのかもしれない。流石に、聞きすぎてノイローゼになってしまいそうだ。まだRYTHEM-1の声でその単語が耳に張り付いている。


「特別仲がいい人、とか?」


だよなぁ、と掃除屋に返す。


「男女で、というか職員と監視対象で成り立つと思う?」


「思わないよ。

 男女で、ならともかく、後者は絶対に無い」


「やっぱりそう思うよなぁ」


私も、全くの同意見だ。





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