第Ⅵ章:世界が揺れる日
その日、空は**“白と黒”の間色に染まった**。
天を裂いた光の柱は、はるか空中都市の議会席にまで届き、魔術士たちは色を失った。
「まさか……“あれ”が、解放されたというのか……」
「馬鹿な! 白黒同調など、理論上ありえないはずだ!」
「いや――奴は“凛”だ。我々が封じようとした“災厄の魔女”だ」
議場は騒然となった。
だが一人、老婆の姿をした評議員が静かに立ち上がる。
その目は静かに光り、誰よりも長い沈黙を破る。
「――違う。“凛”は、かつて私の姉の娘だった。あれは“災厄”などではない」
名は、《セレナ・リュミエール》。かつて白魔術を極めた最高位の大賢者。そして凛の母の双子の姉。
ざわめきが止む。
「お前が……あの、セレナ……!?」
「凛を“封じた”のは、貴様ではないか……!」
「封じたのではない。“守った”のだ」
「……彼女の力を抑えるために、“母であるリア私に頼まれ刻印を施し、全てを封じた。それが、彼女の選んだ生き方だった」
――その日を境に、魔術評議会は真っ二つに分かれることとなる。
---
一方、凛とカインは森を抜け、静かな山の村へ身を寄せていた。
村の空は穏やかで、子どもたちの笑い声が遠くで聞こえる。
「……我の存在が、世界を壊すのならば、我は……どうすればよい」
カインは答えず、代わりに彼女の手を取った。
「壊す力を持っているからこそ、“守る”こともできるんだ。お前は……“光でも闇でもない、凛”だ」
凛の瞳に、小さく光が灯る。