第Ⅳ章:魔術評議会の影
「……凛が“白”に目覚めただと……?」
陰に包まれた大広間。その中心に立つのは、魔術評議会議長・アグレアス。
彼の眼差しは、かつて凛に封印の刻印を命じた張本人――。
「それは、あの子の中の“均衡”が崩れた証。放っておけば、白が黒を飲み込み……世界の理さえ揺らぐ」
「……本当に目覚めたのか? 真なる白に……」
「間違いない。監視魔法が砕けた瞬間、全大陸に“光の脈動”が走った。あれは、純白の魔力だ」
一瞬の沈黙。やがて、誰かが言う。
「抹殺すべきです。“彼女”が崩れれば、再び均衡は保たれる……」
アグレアスは静かに頷いた。
「白が覚醒し、黒が混ざるのなら、凛は“魔核”となる。――この世界に、第二の魔法災害を引き起こす」
「討伐隊を派遣しよう。だが油断するな。あの娘はもう、“ただの魔女”ではない」
議会の決定は下された。
“白黒混合存在”――凛の処分。
それは、彼女の存在そのものをこの世界から消し去る命令だった。
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一方その頃、凛は――
母との再会から数日。彼女は小さな庵で静かな時を過ごしていた。
花に触れ、小鳥の歌を聞き、初めて「普通の娘」のような時間を噛みしめていた。
けれど、彼女の背に――世界の影が、ゆっくりと忍び寄っていた。