表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『凛 ― 黒の封印と白の真実』  作者: 赤虎鉄馬
4/13

第Ⅲ章:再会の光





 白きドレスに包まれた凛は、黒の封印が砕けたその日から、微かな“呼び声”を感じていた。


 それはまるで心の奥底から響く歌のようで、懐かしさと痛みを含んでいた。




 彼女は、旅に出る。


 失われたはずの過去を、その手で確かめるために。




 * * *




 古都リュミエールの最果て、静かな森の奥。


 風に揺れる白い花々の中に、それはあった――白きいおり




 戸口の前で、凛はふと足を止める。


 心臓が高鳴っていた。記憶の彼方で泣いていたあの日の少女が、静かに手を伸ばす。




 きぃ、と木の扉が開いた。




 そこにいたのは――




 「……リア様、お客……あら……」




 振り返ったのは、白髪を編み込んだ一人の女性。


 優しく穏やかな瞳。そして、同じ形の目を持つ少女の顔を見て、彼女の手が震えた。




 「……凛、なの……?」




 「……母様……」




 時間が止まった。




 再会の言葉は必要なかった。


 二人はただ、そっと抱き合った。




 凛の肩にそっと触れるリアの指先は、もう震えてはいない。


 かつて刻んだ封印が、今はぬくもりへと変わっていた。




 「ずっと、会いたかった……ずっと……」




 「……我も、ずっと……違う。わたしも、ずっと……」




 その日、凛は初めて“我”ではなく、“わたし”として泣いた。


 母の胸の中で、過去の罪も孤独も、すべて涙とともに流れていった。




 * * *




 やがて、リアは語った。


 封印の真意――それは、凛の力を封じるためではなかった。




 「あなたの中にあった“白”を、壊さぬように守るためだったの。黒に侵されぬよう、白を眠らせていたのよ」




 だからこそ、黒の封印が砕けたとき、白が目覚めた。


 それは呪いではなく、母が込めた祈りの魔術だったのだ。




 ――母の愛は、ただ一度も途切れてなどいなかった。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ