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死にたがりな私へ

作者: 猫田ポチ

死にたがりの私へ。



貴方がいなくなって5年が経ちました。最近は泣かないです。1人じゃないし、それなりに恵まれた日常を過ごしているから。でも、心の中にポッカリ穴が空いてるんです。この穴は、どんなに楽しい事をしても埋まることは有りません。この穴の所為で、心が時々どうしようもなく苦しくなります。その時ばかりは、泣いてしまいます。悲しみを忘れようとして沢山予定を詰め込んだりしてます。その時は少し心が楽になって忘れられるんです。一瞬だけ穴に蓋を閉める唯一の方法なんです。


貴方は突然いなくなりました。昨日までそこにいたのに。居なくなるなら言って欲しかった。私は貴方と交わした最期の言葉を覚えていません。ちょっと怖かったの。物は投げるし、すぐ怒るから。全部分かってるつもりだった。でも、全然理解してなかった。家族なのに、何も知らなかった。何もしてあげられなかった。もっと沢山話しとけば良かった。もっと手を繋いでおけばよかった。もっと顔を見とけば良かった。もっともっともっと。貴方が死んだ途端、貴方がどれだけ尊い存在かを思い知らされました。死んでから気づくなんて酷いよね。今思えば、沢山合図くれたよね。助けてって言ってたよね。ごめんね。もう、謝っても届かないけどね。



心の整理がつかなくて貴方の部屋は2年以上そのままでした。でも、この前やっと入ってみようと思う事が出来たから、ドアを開けたんです。貴方の匂いが私の身体を優しく包み込んでくれました。と同時に私は急いでドアを閉めました。少しでも貴方の匂いをこの部屋に閉じ込めておきたかったのです。ちょっとタバコ臭くてホコリっぽかったけど大好きな匂い。私は部屋からクッションだけ取って部屋を出ました。貴方の匂いがついたクッションを毎日抱いて寝てました。でも、それもどんどん匂いが薄くなってとても悲しかった。だからもうだめだと思って、一気に窓を開けて貴方の部屋に空気を入れました。貴方の匂いが全部出て空へ昇って行くのを肌で感じました。沢山泣いたけど、ちょっとだけ心がスッキリしたような気がしました。



物も整理しました。沢山趣味がある貴方だから整理するのは大変でした。ガラクタばっかり!これもあれも捨てたくなかったけど思い切って捨てました。ごめんね。捨てても捨てても無くならないから、困ってます。5年経った今でも物の整理はもう少しかかりそうです。でもね、貴方の部屋は綺麗になったよ。こんなに広かったんだって驚いた。狭そうなとこに布団敷いて寝てたよね。物が散乱してたもんね。



貴方のお気に入りの椅子に座って時々考えます。どうやったら過去に戻れるだろう。どうしてたら正解だった?どうしたら貴方の声に気づいてあげれた?いつ道を間違えた?考えてもしょうがない事だけれど沢山考えて、やっぱり泣いてしまいます。貴方が苦しんでいた時、私はぐっすり眠っていたのかと考えたらとても恐ろしい。お通夜があってお葬式ががあって、貴方は焼かれた。目紛しく早かった。起きている事に頭と心が追いつかなくて苦しかった。





誰かが言った。

「居なくなっても何処かで見てくれてるからね」

と。


誰かが言った。

「きっと天国で幸せになってるよ」

と。



これらは励ましの言葉だろう。でも、私はそれと共に、悲しくなった。だって、そう言われるまでの存在に貴方はなってしまったということを証明しているから。


あんなに笑って、あんなに怒って、あんなに話してた貴方が突然消えた。まるで、元々無かったみたいに。


焼かれた後、貴方は灰と塵になりましたね。

当たり前だけど、なんだか呆気なく感じました。



あぁ、人間って最期は灰と塵にしかならないんだなって。






私も灰と塵になりたいな。



そう何度も思いました。


灰と塵になれば、貴方の元に行けるかもしれない。そう何度も考えました。


でも、死ななかった。死ねなかった。



だって、だって、貴方がこの世に居なくても


形も声も何も無くても、





貴方が居たという証拠が確かに此処にあるから。








END

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