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第13話 ある生徒の独白

 正直に言えば、生きていて楽しいと思えなかった。ある意味、順風満帆。そんな人生。でもそれは、スリルもリスクも無い人生。成功は約束されていたのだろう。家族も友達も口を揃えてそう言っていた。


 自分がいたのが、ごく限られた人しか成功できない業界であることは知っていた。それでも俺は順調に成功を積み重ねることができていたと思う。やる気も何もかもが削がれていくような気がしたのはその頃だったと思う。

 だからか、俺はそれを良しとしなかった。正体不明の招待状に招かれるままに日本に渡る、その選択は正解だった。親はきっと今も怒っているだろうけど仕方ない。

 あの日、何も無いかのような日常の裏で、ごく一部の人だけで共有されているツール、魔術を知った。


 ──まさか、こんなものがあるなんてね。


 俺にとってそれは新しい光になった。まるで自分の思うようにはいかないツール。それでいて、できるようになれば新たに挑戦する問題が待っている。成功への道筋がまるで見えない中で、成功を目指して進んでいける。

 魔術など正直ありえないと思っていた。今も右も左も分からないまま1日1日と過ぎていく。


 俺にはそれが心地良い。今まで考えることのなかった生活。安全など何処にも保証されず、可能性に溢れた道なのだ。更には別の世界に飛ばされて。


 ──まるで夢と現実が入れ替わったみたいだ。


 夢でも何でもない、異世界で生きていく。あの城はその自覚を持たせてくれた象徴とも言える存在。


 俺は──この新たな生活を満喫し、奪われないよう足掻く。そう決めた。


追いつかないのでお茶濁し。

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