真夏の陰
皆さんはどうでしょう?
この世界、世の中には幽霊が存在すると思いますか?
それとも幽霊やこの世ならざるものをみたことはあるでしょうか?
私はあります
あれは暑い真夏のときでした───
当時、私は小学生で暑い日差しを学帽で防ぎながら毎日のように学校へ登校していた
木に止まっている蝉がこちらの鼓膜を破壊したいのか、人が前を通ろうとすると木の陰から勢い良く鳴き始める
いい加減そんな鳴き声が聞き飽き始める頃にあることを思い出した
合宿である
私がいた学校は、小学生高学年になると夏に2日間だけ合宿を設けるのだ。目的は自然に触れ合い知ることや単に交友するための行事だと聞いた
行き場所は山で、少し離れたところには海がある
自然を触れ合うには絶好の場所と言えるだろう
合宿が間近になると、そこからの日の経ち方は異常に速く感じられた。それだけ楽しみにしていたのだろう
なにせ私にとっては合宿は勿論、友達と一緒に外泊をすることが初めてである。異様にテンションが高くなってしまったのも今では頷ける
合宿当日
いつものとは違う時間帯に目が覚めてしまった
前日にテンションを上げすぎてしまったせいか、うまく寝付けることができなかった
前日の疲れもまともに取れていない体を持ち上げて、合宿のための支度を済ませる
といっても、ほとんどのものを寝る前に済ませていたので後は確認するだけである
案の定、持っていく鞄の中身には必要なものが全て入っており、確認するまでもなかった
しかし、速く起きてしまったせいで暇になってしまった
ただでさえ、何もやる気が起きてこないのにぼーっとしているともう一度寝てしまいそうだ
この頃は不思議と合宿だと言うのに気持ちがうまく上がらなかったのを覚えている
学校に行けば、同じクラスの子がまだまだ時間があるというのにほとんど揃っている
私はケツから5番目だった
あと当時の私の学年の人数は一クラスのみで30人しかいなかった
一般的に見れば少なく感じてしまうが、今回起こってしまったことを考えるとこの人数で良かったと思った。もし、これ以上の人がいればもっと大変なことが起きてたでしょう
クラス全員が無事揃い、クーラーが効いて涼しくなっているバスへと雪崩のように駆け込む
よっぽど炎天下の下でいるのが嫌であったのが伺えた
その後も何事もなくバスは発進することとなり学校から出る
途中、高速にのったあたりから皆がバスの窓から見える景色に飽き飽きしたところで、クラス一人がしりとりを提案してきた
何もすることがない私達はその意見に賛成するほかありません
しりとりは思っていた以上に楽しく、容易に時間が過ぎていった
いよいよ言葉が出てこなく成り始めてきた頃、バスが止まる
どうやらパーキングエリアについたようで休憩のようだ
バスから降りると再び炎天下の下で私達を焼いてくる
皆、暑いのか早足で涼しいところに避難する
ある人はパーキングエリアのお店を見て、ある人はオアシスを探し、ある人はトイレへといった
私もまたトイレにいった
「なあ、こんなうわさを知ってるか?」
私がトイレを済ませて時休憩間を潰していると、同じくトイレを済ましたA君が話をかけてきた
何やら言いたげにニコニコと笑みを浮かべながら口を開ける
「僕達が行こうとしている合宿先って出るだしいよ」
「出るって?」
A君が出るっと言う言葉になんのことがさっぱりだった私が聞く
それ言って数秒もしないうちに何が出てくるのか自分の頭の中で答えを導き出された
しかし、A君の口は止まることもなく喋る
「幽霊だよ、幽霊!」
意気揚々と喋る姿はまるで長年の夢がかなったこのように喜び始めるA君
どうやら彼は昔から幽霊を一目見たかったらしく、今回の合宿先で出てくることを知ってウキウキしているようだ
「何でもその幽霊、真夜中に出てくるらしい」
「それだけ?」
「それだけ」
あまりにも情報が少なく本当に幽霊が出てくるのか心配してしまった
当時の私はそれなりに心霊が好きだったのでその話を聞いて心做しか見てみたいと思っていたのにこの始末である
「多分それ嘘だよ」
「いーや、嘘じゃない」
「どうして?」
やけに自信満々と答えるA君の姿は異常と思えるほどの自信は一体どこから湧いてくるのか不思議と思う
「これまでに行った人全員が何かしら見たって言ってたんだ!」
「例えば?」
「夜中に窓から外を見ると人が敷地内で一人で遊んでいたり、全員が寝た時間帯なのにも関わらずドアにノックされたり、足音が聞こえたりするんだって」
「滅茶苦茶情報あるやん!もっと先に言って!?」
どうやら幽霊は本当にいてもおかしくないとわかった
A君が言ってなかっただけで結構前からあるうわさだとわかった
幽霊が果たして本当にいるのかどうかと考えていると、どうやら休憩時間が終わりと近づいてきて、急いでバスの中へと帰っていく
A君から他に聞いた話はないかと聞こうとしたが、私とA君のバス座席はかなり離れているため話しかけることができない。私は大人しくバスが目的地に着くのを待つことにした
バスが一時間ぐらい走らせていると、どうやらその目的地についたようだ
合宿場所は山だということで勝手に古い旅館だと思っていたが、実際は西洋風の造りで一際目立つ建物であった
バスから降りてもう一度その建物を見るが非常に大きい
当たり前だ、仮にも宿ではあるので部屋が数多くあり、エントランスホールが高級ホテルにあるような広さをしていたのを今でも覚えている
A君から幽霊の事を聞くことはすっかり忘れてしまい、皆が自分の部屋へと一直線に向かった
部屋はどうやら4人部屋ではあるものの二段ベッドが備わっているようで、早速誰が二段ベッドの上で寝るかじゃんけんをして見事私だけが下に行くことになりました
部屋割りはグループで分けられて私たちのグループは5人となっており、そこにはA君もいました
ここからの話はただただ、海に行きカヌーを経験したりシュノーケリングをしたりと順風満帆な合宿を過ごした
海から帰ってきて風呂にはいり塩まみれの体を洗い流したら部屋へと戻る
そしてすぐに寝るというわけにもいかず、大体の人はまだ起きている
別の人の部屋へと行き遊んだりふざけたりして楽しい時間を過ごした
消灯時間になると先生が巡回を始める
ちゃんと寝ているのか確認するためである
それによって部屋から生徒が出ることは無いに等しいだろう
先生の部屋と私たちがいる部屋は隣同士なので尚の事である
「今誰かノックした?」
不意に声を出して聞いてきたB君がいた
彼も同じグループの子でA君から例の話を聞いている
その他2人をC君D君とする
「空耳じゃね?」
B君のそんな不安の声に対して誰一切ノックの音は聞いていない
聞こえるのは窓の外から聞こえる風の音だ
ここは三階で建物が建っているところが山だということで風の勢いが思いの外強く、時々窓が音を立てる
B君が聞いたのはそれだろうと一同納得する
電気を消して全員が二段ベッドの二段目を使うが私は相変わらず一番下である
最初の十分ぐらいは安寧の睡眠ができていたがドアの隣で寝ていた両隣のB君とD君が飛び起きる
「ほらノック!」
「え?っえ!?」
B君は自分が正しかったと言わんばかりに誇らしげに言っていたがD君はなんだか怯えていて、今にも泣きそうだった
このグループでそんなこととは今のところ無縁であるA君、C君、と私はやはり彼らが言ってることには理解できなかった
だけどD君の異常といえる怯え方がそれをものがたせる
電気を急いでつけてドアの向こうへと顔を私は覗かせた
しかし、そこには当然誰もいない
と言うか、部屋を出た先の廊下でさえ明かりがなく、部屋がどこにあるかもわからない状態でノックなんて到底できない
「僕達何も起こってないからなー」
あくまでBとDが経験したことである
たまたま偶然が重なって起きた現象なのかもしれないと割り切って、もう一度電気を消して寝た
電気を消してすぐに窓が大きな音を立てて何かにぶつかった音がした
その音を直に聞いたのは部屋にいる全員だ
間違いなく聞いた
今まで窓から大きな音がなっていることはわかっていたたが今回は全く違う
石でもぶつけたかのような音だった
いい加減目がチカチカとしそうだと思いながらも再び電気がつく
窓には何の変化があるわけでもなく、そこには山から見れる絶景があった
ふと、窓の下を見た
窓の下にはこの建物の庭があり、ブランコや鉄棒といった小さな遊び場があったのだ
そんなものがあったのかと思いながら見ていたら、明らかに不自然な動きをしているブランコがあった
そのブランコはまるで人が乗っているかのように前後に動いており、周りのブランコは全く動いていない
ここで不思議と思ったところが二つ、一つはなぜブランコが前後に動いているのか、もしかしたら風かもと思ったが違う。それは二つ目で説明できる。風があんなに吹いているのにも関わらず一切微動だにしていないブランコである
その時には恐怖心というより好奇心のほうが強かった
私は隣の二段目ベッドで寝ているA君を呼んでその光景を見てもらった
彼もまたその異様な光景を見て固まっているようだ
無理もない、ブランコが不自然に動いていたり、風の影響を受けていないブランコがあるんだ不思議でしかない
だが、なぜ彼が固まってずっとブランコを観ていたのか私はすぐにわかった
私も同じようにもう一度ブランコを見てみると、あんなに動いていたブランコはピタッと止まっており、そこに座っている人がいた
いや、あれは人なのだろうか
真夜中で暗闇でもはっきりと何かいると異質な雰囲気を漂わせている人がいる
「ブランコの人って……」
C君が私達が何をしてるのか覗いていると彼も気づいたようで、ブランコの存在に気づいたようだ
間違いないだろう
見えている
「電気消して寝よう」
A君がそう言うと少し急いだ足取りで電気消した
急に消したことでD君がかなりビビりだして二段ベッドで隠れるかのように寝始める
「A君、どうしたん?」
「なんとなくだけど……あの人がこっちをみたように感じた。流石に気持ち悪いから何があっても寝よう」
A君にはそう感じたらしく、幽霊をひと目見たいと思っていた頃が懐かしいほど、今は微塵も感じさせない
寝よう
そうしたら朝になっているはずだ
まぶたを閉じてすぐに眠りにつこうとしたとき、チラッと皆がちゃんと寝ているか確認すると……
「あっ……」
声が漏れてしまった
見てはいけないものを見てしまった
B君が二段ベッドの二段目にいるならば、さっきの奇妙な人……いや、陰が一段目で座っている
しばらくすると陰は次にD、Aと誰もいない一段目のところを座って移動をする
そして私がいるところまで陰がやって来た
怖さのあまりに声が出てこず助けを呼ぶことができない。本来怖いはずなのに、今にでも逃げたいのに体が動く事が出来ない
一瞬、この陰に殺されてしまうのではないかと思い、目だけは動くのでまぶたを閉じることにした
するとドアがいきなり開けられて動かなかった体が飛び上がるかのように起き上がれた
そこには陰の姿はなく、ドアの近くで立っている人が変わりにいた
ドアの前にいるのは隣のグループの部屋の人で苦情を入れに来たらしい
内容がどうやらノックが鳴り止まず隣のグループの仕業だと思い来たらしい
しかし、AやB達には全く持ってわからないことである
そうこうして話していると急にDが騒ぎ始めた
これはまずいと思い先生を呼んだ───
あれから朝になった
Dはかなり落ち着いている様子で安心した
Dが騒いだ後に先生が来て、朝になるまでそこにいてくれたのを覚えている
先生が自分の部屋に戻ったあと、Dが話す
「見たんだ……」
「……何を?」
恐る恐る聞いたのがCだった
Dは一瞬口を紡いだが再び口を開ける
「B君の肩にいた……黒い陰がくっきりといたんだ。B君の首手を当てて笑ってたんだ」
これが私が体験した本当の話です
一部創作ように変えている部分はありますが大筋はあっています
さて、ラストのB君についてですが今も彼は生きています。なんか最後呪いみたいな感じで締めましたけど、B君生きてます
あと、これは陰に関係があるかどうかわかりませんが、朝になって起こった出来事で、風邪を引いた人が5人もいて合宿から離脱し、蜂に刺されてアナフィラキシーショックになって病院に行った人と足首を捻って病院に行った人がほぼ同時に出てきました
多分、慣れない環境での合宿のせいだと今は思っています
今は. . . . . .