第八話「世界は広くて狭い」
寒いね、ほんとうに寒い。
「率直に聞こう。釧路世良はなにものだ。」
天音先輩は茜さんに問い詰められている。
「至って普通の女子高生ですけど」
「それにしては行動がおかしい」
「例えば?」
「彼女はこれまでの数ヶ月部活動に入っていなかったのにこのタイミングで入った。」
「それは合宿じゃないの?」
「天文部はさぼりもOKで合宿にいけるで有名だ。」
「誇ることじゃないよ」
「君は黙ってて、合宿なら最初から入れる」
「知らなかったんじゃないの?」
「あなたと知り合ってこの学校に来たのに知らないはずがないでしょう」
「別に他の理由かもよ?」
「蒼人くんと知り合っただけだ」
「蒼人くんは人気なんでしょ?」
「だからって天文部に入る子はいない」
「分からないよ?」
「あの子は本当の彼を知っている」
「それでも入るかもよ?」
「入るはずがない。話してよ」
「なにを?」
「彼女の秘密」
「あの子に聞けば?」
「秘密があるんだね」
と言ってにこっと笑ってありがとうと言った。
「圧迫面接みたいだったよ」
「途中から楽しくなっちゃった」
「茜さんがいっちゃん怖いよ」
「君にも聞きたいことがあるんだよね」
「黙秘権を使います」
「それを侵害したら私が悪者だ。辞めておこう」
「その手があったか」
それぞれが1口飲み物を飲んだ。すると透先輩が
「お腹がすいたね。お菓子を買いに行こう。」
そう言って財布をとって俺は車椅子の準備をすると
「いいよ歩くから」
「まーた怒られるよ」
「怒られたらそこは君たちのせいということで」
エレベーターには人はいなくスムーズに売店までいけた。
「好きなの買っていいよお二人さん」
「いいよー悪いからー」
「大丈夫っすよ」
「ご遠慮なさらず!使い所のないお金なので」
「そのジョークはだれも幸せにならないよ透ちゃん」
「はいはーいまぁ今回は奢らせてよ」
「そんじゃま遠慮なく」
「はーいどぞ!ほら蒼人くんも」
「あざっす!じゃがりこ何味いいすか?」
と微笑む。
「青いのと普通のがいいな」
「おっけぇーっす」
お菓子を買ってあの人に見つからないように病室に戻った。先輩はドアを開けて
「セーフ!」
と言って病室に入った。するとドアの横から看護師さんが
「はい!アウトー」
「げっ、そりゃバレるわけないや」
「検診の時間くらい覚えてなさい」
「茜ちゃんとえーと君はなんだっけ」
「蒼人くんだよっ」
「あーそれそれ。甘く見るなってこないだ言っただろー?」
「頭悪いんで忘れちゃいましたー」
「ちなみに彼次席です」
「えっ蒼人くん頭よ」
「昔の話です」
「君医者にならないか」
「考えときますー」
「はーいとりあえずベット乗りなさい」
「ちょいお二人さん外で待っててー」
「「あいよー」」
俺と茜さんは外へ出てドアを閉めた。
「蒼人くん」
「はい」
「透ちゃんは君を知ってるのかい?」
「星香のことは話しました」
「君にとって星香ちゃんはなんだ」
「彼女です」
「ちげぇよ。今の君にとってだ。たしかに彼女だ。だけど私が聞きたいことは違うことだ」
「俺にとっての星香。」
「言い訳に使うんじゃねぇよ私の星香を」
茜さんの口調が出会った時みたいだった。男らしい感じの誰にでも仲良く強く当たっていた熊崎茜。
「茜さんにとってトリガーは星香なんですね」
「、、、そうだよ。だからもう戻れないんだ」
「俺にとって星香は呪いみたいなもんですよ」
「俺たちだろ?」
「そう。俺たち。」
そう。きっともう失ったことは身体も心も理解はしている。している上で俺はもう新しい関わりを持とうとできない。轟星奈。そして轟星海。連絡先はもってる。彼女たちが今どう生きているかなんて関係ない。ないけど知る権利はある。けど前を向いて生きているなら俺が彼女たちの人生に関わってしまったら過去を見ないといけなくなる。来年の3月。きっとあいつはここに来る。俺は嫌でも会うことは決まっている。
いやそれよりも前に俺は会えてしまうかもしれない。12月1日。星香が死んだ日。俺からじゃなくてもあっちから連絡がくるかもしれない。俺は時間を見つけいつものメンツで墓参りに行くつもりだ。そこで会ってしまうか、呼ばれるか。主導権は誰よりも星海にある。
「考えすぎだ君は」
茜さんは俺の顎に当てていた手の腕を払った。俺はバランスを崩して茜さんとあと少しでキスしそうなくらい近づいた。茜さんは特に焦らず首根っこ掴んで
「どうせ星海と星奈のことでも考えてんだろ」
「茜さんからの予想だったらどうなると思います?」
「12月1日か?」
「はい」
「私は連絡が来ると思う」
「どうして?」
「きっと君殺されるよ」
「それは考えすぎなんじゃないすか?」
「いや星海は君を殺しにくる」
「その心は?」
「星香ちゃんが死んだ理由は君がいたからだ。君がいればきっと車に轢かれようがバイクに轢かれようが、人に刺されようが君なら大丈夫だ。君はあの日星香ちゃんと会う予定だったろ。もし君が迎えに行く、星香ちゃんが君を迎えに行く、待ち合わせ場所を別の場所にする。もしくは君たちがその日遊ばない、会わない。究極君と出会わなければよかったと」
「そんなタラレバで人を殺せますか?」
「私は君を殺しただろ」
「殺したなんて言えるんですか?」
「私は君を殺したんだ」
「それじゃ次は精神的じゃなくて物理的にか」
「もし私の見解通り会うことになってしかも待ち合わせ場所が星香ちゃんと会う予定だったカフェの前もしくは星香ちゃんが死んだところだったら蓮司と一緒にいけ」
「わかりました」
「そんじゃ、私は熊崎茜になってくるからトイレ行ったって言っておいて」
「うぃっす」
俺を殺しにくる、ね。俺なら潔くしぬって考えての蓮司だろうな。まぁあと数ヶ月何事もなく茜さんの見解どおりなら俺はきっと死ぬんだろう。
「なに話してたの?女たらし君」
「なんすかそのあだ名は」
「合ってるだろあんな美女3人とりあえず友達で誰も君は見ていない。ずいぶんとまぁ女たらしだね君は」
「関わらない方がいいと思いますかね」
「世良ちゃん?」
「世良もだし透先輩もみんなも。俺と関わったらみんなどうせ悲しむ。俺より先に死んだらきっと俺はもう立てない」
「君。人の死を知ってるのかい?」
「俺の彼女は目の前で死にました。」
「君が殺した訳ではないんだろ?」
「それはそうだけど俺と会う約束なんてしてなければ星香はしななかった」
「星香って彼女?」
「はい」
「蒼人君、連絡先教えてくれる?」
「医者にはなりませんよ」
「ならなくていい。とりあえず教えて欲しい」
「なんかあるんですか」
「轟星香だろ」
星香なんて読みなら誰だっている。この病院にだってきっと探せば2、3人はいる。
「なんか知ってるんですか」
「あぁ」
「それならお願いします」
「お二人さんっ!なーに話してんのぉー?」
「帰りに寄ってくれ近藤だ」
「了解っす」
「ねー何話してたのー?」
「内緒っす」
「ケチだ」
「ケチっす」
「ねー近さん!」
「私も、ケチなの知ってんだろ」
「うっわ、後で茜に聞こー」
そう言ってぴょんぴょん飛んで
「お菓子、食べよ?」
といつもどうりになったんで良かった。茜さんもトイレから戻ってきて
「そんじゃ世良の話の続きをしよう」
と(*^^*)と透先輩に迫った。
「茜ちゃん、こわい」
:( ;´꒳`;):プルプルと震えている先輩。いつも通り。いつも通りなんだ。そう。俺はきっといつも通りになれる。
透先輩に呼び出された理由は特にない。釧路世良についてただ知りたいという茜先輩はかれこれずっと透先輩に聞いていたらしい。そこで犠牲者を増やすために共有者の俺を呼んだ。けど特に話すこともないし、なんなら俺が知りたいくらいだったので結局透先輩はなんの救いでもなかったよ。と俺に言った。
俺は用事があると言って病室を抜けた。そしてカウンターみたいな所に行って受付の人に近藤という名をだした。そしたら奥から眠そうにして遅ぇぞという看護師がいた。