第三話「共有者と生徒会の偉い人」
テストが終わった次の日曜日。俺は世良に送られたカフェのURLのところに向かった。朝起きるとすい姉はまだ寝ていた。起こさなければ12時くらいまできっと寝てるだろうし起こしたらなんかきそうだからそのまま寝かして置いてと母さんに言って家を出た。
そのカフェは駅と少し大きな病院が近いところのでたぶん世良が昨日降りたところの駅を覚えていてそこにしてくれたんだと思う。予定の時間は11:00らしいのでバスで行こうかと思ったけど時間もあるので15分ほど歩いていくことにした。
五分ほど歩くと「メテオレーゲン」という名前の花屋がある。メテオレーゲンはドイツ語でいう流星群。そこの花屋では母さんの知り合いの人がやっている店で良く花をくれる。母の日とか迷ったらメテオに行って適当にくださいって言えば準備をしてくれるのでありがたい。
駅ビルについて、カフェの場所は駅の出口が反対なので少し本屋などによって時間を潰そうと思った。そんな中目に入った1つの本。『心臓病の希望にかけた1人の少女』。心臓病。俺が生きていく上であまり考えることのなかった病気。世良の残りの余命的にもやりたくてもやれることは限られてくる。なるべく力を貸してあげたい。そんなことを考えていると予定の15分前になったのでカフェに向かう。
カフェに着いたので一通り店内を見てもまだ来ていないので席もまだたくさん空いてるのでとりあえず外で待っていることにした。5分程度たったら少し距離のある信号で車椅子を押している世良が見えた。まだ分からないけど心臓に不可とかかかるのかとか思って駆け寄った。
「あっ!蒼人くんもう来てたんだ」
「あぁ。変わろうか?」
「おぉ、ありがとう。非力なもんでね。あっ!こちら生徒会副会長の紗星蒼人くんです」
そう言って車椅子に乗っている黒髪のボブの色白い少女に俺を紹介した。
「紗星蒼人です」
そういうと車椅子の少女は微笑み
「天音とおるです。まさか共有者が生徒会の偉い人とは思わなかった」
俺は車椅子の取手をもって
「失礼します」
「ありがとう。おねがいします」
と言って歩きはじめた。
「天音さんって天文部ですよね?」
「えっ?どうして知ってるの?」
「茜先輩から一度名前だけ聞いたことがあって」
「へー、茜ちゃんが。蒼人くんも天文部なの?」
「一応天文部です。」
「さすが蒼人くん記憶力がいいねぇー」
「あっそうだ世良、テストどうだった」
「えっやめてくんない?」
一連の出会って1週間の流れを行ってると
「君たち会ってまだ1週間らしいね仲良しだぁ」
とからかうように言ってきた。すると世良は
「この子可愛い子虐めるの趣味だよー?気をつけてねとおるちゃん」
「変な趣味を俺につけんな」
「可愛いことは否定しないんだぁー」
「そんでテストは?」
「うるっさい」
「それでどうだったの?世良ちゃん」
と楽しそうに聞く天音先輩、
「とおるちゃんまで虐めるの!?」
「ところで蒼人くん。どうして共有者に?」
「世良が話してきたので無理やりですね」
「い、いやだった?」
と少し困惑した感じで世良が顔を覗いてきた。
「いや、昔に少し戻れた気がするから」
天音先輩はそれを聞いて
「よかったと?」
「そうですね」
「ならよかった。入ろっか」
「おー!」
カフェで注文なんてしたことがなかったので適当にコーヒーを注文しよかなと考えてたら2人が楽しそうにメニューを見てパンケーキと紅茶を言うので世良のこのパンケーキも少し食べたいと言ってくるので圧に負けて買わされた。後先短い子に奢らせる権利をあげるなんて言われたらそりゃ買うしかない。まぁ美味しかったし2人からも1口分貰えたのでよかった。
話していて分かったのは近くの病院に入院している天音先輩は昔から貧血などでよく病院に通っていたそう、中学1年生のときは通院だけで元気だったが中学2年生になるとまた貧血気味になってしまったらしく中学生の間はほとんどを病院で過ごしたらしい。
そんな2人の出会いは世良が心臓病と言われた日だった。病室でずっと泣き叫んでいたところを天音先輩が通りかかったという。そこから自分の過去を話してだんだんと仲良くなったという。そして俺もまた1週間ぶりに死んだあいつの話をした。
「まぁまぁ色んな過去を持った3人が集まったね」
そういって天音先輩は最後のパンケーキの欠片を口に入れた。口にまだ入れたまま先輩は俺に聞いた。
「蒼人くんは今もその人のこと思ってるの?」
「俺は、、、」
「俺はまだ死んだ彼女のことを思っています。もうこの世にいない人間を思い続けてることはおかしいかもしれない。けど、俺は忘れることがてきないんです。俺に最後に言った彼女の言葉を信じたいんです。だからっ」
俺はまだあいつのことが好きと言おうとした。すると天音先輩に口を押さえられた。先輩は顔を少し後ろにして笑いそうにしてた。ってか笑ってた。
「分かったよ(笑)君はまだ彼女のことが忘れられないんだね。」
「一途だねー蒼人くん」
「蒼人くん」
「はい」
「君は何もおかしくないよ。故人を愛し続けることは何もおかしくない。君が忘れないで私に話してくれた。そして今私の中に新しい君の彼女さんが生まれた。少なくとも蒼人くんに会う度私はきっと思い出すよ。」
「天音先輩、人生何周目なんですか?」
「1周目だよ?」
「チートですよそんな言葉」
「天音ちゃんは大人なんだよー」
「少しは見習って欲しいよ」
「なんか私への反応冷たくない?」
「目の前に大人びた女性を見たらそうなるわ」
「それはそれはどうもありがとう」
と天音先輩は嬉しそうに紅茶を飲んだ。
「そんじゃそろそろ行こっか!」
そう言って世良は立ち上がった。俺は車椅子を出そうとしたら、近いから頑張って歩くと行ったので車椅子そして世良と天音先輩の荷物を持った。倒れたら抱えないといけないけどそこは女子同士という訳で世良に任せた。
無事に何も無く病院に着いたのでよかったと思ったら天音先輩は俺の後ろに隠れた。目の前にいる看護師がこちらに向かってきた。
「天音ちゃん車椅子は?」
「ちょ、ちょーとリハビリを、、、」
「危ないから外ではやらないでって何度も言ってますよね?」
「お、男の人もいるしいいかなーって」
さっきの大人びた天音先輩とは違く、少しイタズラをした子供のように俺の後ろに隠れて言い訳を言っていた。ギャップが死んだあいつにそっくりだ。
「看護師さんやっほひー! 」
「世良ちゃんなんで止めないの?そしてだれですか?」
「同じ学校の後輩の紗星蒼人です」
そう言うと看護師さんは世良に近づいて
「世良ちゃんどこで見つけたのこんないい男」
「電車で話しかけられました」
「あら、ナンパするような男には見えないけど」
「誤解が生まれる言い方をするな」
「まぁ、そんなことはよくて君も天音ちゃんが無理しないようにしてちょうだい」
「了解です」
「ちょっとくらいいーじゃん」
「ダメです」
「いいよね?蒼人くん?」
「いっ、いいと思います」
「こらっ甘やかすな。もしもを考えての私たちの仕事なんだ心配をかけさせないでおくれ」
天音先輩は少し不貞腐れた様に
「気をつけまーす」
と言って俺が広げた車椅子に座った天音先輩は俺に病室に招待するよと案内してくれた。これから暇が会ったら来てくれると嬉しいと俺に言ってそこで天音先輩とは別れた。そして世良を駅まで送ることにした。
「今日はありがとね蒼人くん」
「特になにもしてないけど?」
「普通会ってほしいなんて言ったら車椅子に乗ってる子が来るとは思わないでしょ」
「特に気にしなかったけどね」
「優しいね蒼人くんって」
「いい先輩だったね誰かと違って大人びていて」
「私そんな子供っぽい?」
「子供じゃないの?」
「そうですかー子供ですかぁー」
「会いに来てくれると嬉しいって言われたけど二人で会うのはちょっとまだレベルたけぇな」
「あっそういうところちゃんとあるんだ」
「なんだと思ってるん」
「ただの感情ない周りに合わしてる人」
「だとしたら自分の過去なんて話さないよ」
「たしかし」
と両手の人差し指と親指をピンと立て俺に向けて言ってきた。
「お前は愉快なやつだ」
「そりゃどーも」
「どういたまして」
「それじゃここでさよなら!」
「おぅ、気をつけて帰れよぉ」
そう言って改札を抜けて手を振った。心臓病の少女の後ろ姿はそこら辺に歩く女性となんら変わりのなかった。帰り道俺はメテオに行ってガーベラを3本買って彼女の骨の粉が入った小さい瓶の横に花瓶にいれて飾った。
第3話「共通者と生徒会の偉い人」読んでいただきありがとうございます!共通者、天音とおる。彼女は大人だけど少しおちゃめ。今後蒼人の進むべき道をしるしてくれる重要な人間の1人です。
化学の力で生きている1人の少女。外から見ればそれはただの元気な女子高生。明日死ぬかもしれない私たちの命。それぞれの命の重さは変わらない。世良の命はただ期限付きというだけです。
次回は普通の日常の中で生きる最強の2人についてのかなと思います!