表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/48

エピローグ



 新入生オリエンテーションを終えたハルキチは真っ先にライブ配信を行った。


 動画の内容はハラスメント設定について。

 最初は簡単に『今後も変わりなく現状維持でいきます』と伝えるだけの予定だったのだが……なぜかハルキチはモグラーと名乗る謎の集団によってプチ炎上させられていて……仕方なく焼きおにぎりを焼きながら配信を行うことになった。


 動画のコメント欄には【醤油が焼ける香りで内容が入ってこない】とか、【ハラスメント設定とかどうでもいいから焼きおにぎりをはよ!】とか、いまいち情報が正確に伝わっている気がしなかったが、最低限の義務は果たしたのでハルキチは良しとした。

 高天原と地球の平和は守られたのだ。





 そして4月5日の12時。

 仮眠を取って、仲間たちの要望で重箱に入ったお弁当をこさえたハルキチは【桜の森】にお花見をしに来ていた。

 セーラー服を脱ぎ捨てて、ひとり黒いジャージ姿で歩くハルキチに、他の花見客たちが口々に声を掛けてくる。


「姉さ~ん!」

「優勝おめでとう!」

「かっこよかったよーっ!」


 声を掛けられるたび、ハルキチは軽く手を振って引きつった愛想笑いを返した。

 全校生徒に見守られる中で戦ったことと、新入生オリエンテーションにおけるハルキチの活躍を編集した動画が公開されたことで、ハルキチの知名度は天元突破したらしい。


 フォロワー数も一気に300万人を超えて、今もまだ急増している。


 たったの数日で100万倍になったフォロワーの数には冷や汗しか出ない。


 さらに問題を挙げるとすれば、セーラー服姿で戦っていたうえに【飯テロ姉さん】なんて二つ名を付けられているせいで、多くの生徒から女子だと思われていることだが……それに関してはコツコツ間違いを訂正していくしかないだろう。


 そんなわけでハルキチは『お料理男子』と名乗ることを心に決めた。

 まずは自分に男子のレッテルを貼ることで女性疑惑を払拭するのだ。

 実に狡い情報戦術である。




 そして共用お花見区域を抜けてプライベートお花見区域へと到着したハルキチは、桜の森でレジャーシートを敷いて【頭がフワフワする飲み物】をあおっている仲間たちの姿を見つけて、ほっと安堵の息を吐いた。

 会場設置のために先に来ていた彼女たちも、ハルキチの姿に気付いて声を掛けてくる。


「せんぱ~い! こっちこっち~!」

「先に始めてるぞハルキチ! お前も早く飲め!」

「あっ!? ハルハルが着替えてる!? もっとセーラー服姿見たかったのにっ!」


 すでにだいぶ飲んでいるのか、赤ら顔の友人たち。

 そしてその傍らにはハルキチの専属メイドもちゃっかり並んでいた。


『遅いですよマスター。早くおつまみをください!』


 相変わらずマイペースな仲間たちの姿に、ハルキチは苦笑を漏らす。

 満開に咲き誇る桜と自分を迎えてくれる美少女たち。


 たとえそれが0と1の数列が織り成すデータでしかなかったとしても、美少女たちの中身がおっさんだったとしても、彼の目に映るのは紛れもない桃源郷で……



「……俺もここに永住しようかな」



 そんな呟きが零れるくらい、ハルキチはこの学園が好きになっていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ