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戻時神線  作者: 凪月奏詩
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第1話 運命の分岐点

──俺は決して許される事のない大罪を犯した。多くの人間を犠牲にその屍の上を歩き、ただひたすらに自分の願いを叶えるために……。それでも君は

「もう、苦しまないで良いです。本当の貴方は……優しい人、ですから!」

そう言ってくれた。だから、これで最後だ。

「……神よ。我が願いを叶え給え。」

これが……最後の時戻りだ。


 王都は警戒態勢に入っていた。国家反逆罪で指名手配されている元騎士が侵入したという知らせが入ったからだ。しかしこの国にはその人間に対抗する術がない。無能な貴族共が民から搾取した税で私腹を肥やす。そんな腐った国が、反逆者を捕らえる事など不可能だ。そんな事を考えながら街を歩いていた時、事件は起きた。

「誰か……助けて……!」

俺は助けを呼ぶ声が聞こえた方に向かった。そこでは一人の少女が三人の男に襲われていた。そんな事はこの国では日常茶飯事だ。いつもであれば見て見ぬふりをしてしまう。しかし、何故だろうか。今日は……

「貴様ら、そこで何をしている?」

今日だけは、奴らが許せなかった。男の一人がこちらを振り向く。

「誰だお前?俺達は仕事してんだけど。邪魔すんじゃねぇよ。」

「……仕事だと?」

「ああ、そうだよ。こいつの父親はなぁ、俺達のボスに金を借りて逃げたんだよ。金を返せないからってなぁ。本当に、最低のクソ野郎だよなぁ!」

「それと彼女との関係は?」

「は? そんなの決まってんだろ? 親の責任は子供の責任だ。父親が放棄した責任は」

「もういい。それ以上聞くと、貴様の首を刎ね飛ばしてしまいそうだ……!」

「は? てめぇ、自分が何言ってんのか分かってんのか?」

「ああ、勿論分かっているとも。貴様らの主が違法な金貸しをしている事。そして貴様らは不当な取り立てをしている事。俺はそんな腐った世の中に絶望し、()()()()()()。」

「てめぇ、まさか……!」

「死にたくなければ今すぐに、此処から立ち去れ。そうすれば、命だけは奪わない。」

奴らは俺の正体に気づいたのか、逃げるように去っていった。俺も憲兵に気付かれると面倒だ。早く此処から離れたいところだが、彼女を放っておくわけにもいかない。

「君、大丈夫か?」

「は、はい……。助かりました。」

「……俺はただ、奴らが許せなかっただけだ。君を助けた訳じゃない。」

俺は何故、こんなにも感情的になってしまったのか。この少女を見ていると何故、()()を思い出してしまうのか……。

 数分間後、彼女が落ち着いてから彼女の家族について気になっていた事を問う。

「君の母親は?」

「……いません。私が幼い時に病で。」

「それは、辛かっただろうな……。」

彼女にはきっと、帰る場所がない。奴らはおそらく貴族と繋がっている。放っておくと彼女の身に危険が及ぶ。俺はある提案をした。

「他国に俺が以前世話になった貴族がいる。きっとこの街にいるよりも安全だ。君が望むなら俺が彼に紹介しよう。君はどうしたい? 決めるのは君自信でなければならない。」

「……私はずっと誰にも必要とされてなくて、独りで生きてきました。私には生きている価値なんてないんです。私を、殺してくれませんか?」

「……すまない、それは出来ない。何があっても。」

「そう……ですよね。すみません、折角ですが私は他国に行くつもりはありません。私はもう、大丈夫ですから!」

懸命に笑顔を作ってはいるが、きっと彼女も絶望しているのだろう。誰にも必要とされない自分に対して……。

「……俺は四年前まで騎士団に所属していた。この国を守れば、大切な人を守る事ができると、ずっとそう思っていたんだ。だが、それは間違いだった。俺は、この国に裏切られたんだ。」

彼女もこの国の被害者だ。だからもう、迷う必要はない。

「俺と一緒に来い! 俺が君の居場所を作る! 共に、この国を変えよう。」

「……貴方は一体、何者なのですか?」

もう彼女に正体を隠す必要はないだろう。

「国家反逆の大罪人、閃式(せんしき)黎真(れいま)だ。」

「私は咲凪(さくなぎ)優音(ゆうね)です。えっと……」

「黎真で良い。」

「黎真……さん。宜しく、お願いします!」

ようやく、笑ったな。

「宜しくな、優音。」

何故、俺のような人間を信じられるのか。それは分からない。しかし、それはどうでもいい事だろう。気にする必要はない。

「早速だが、俺達の拠点に向かうぞ。仲間に君を紹介する必要がある。もうじき日が沈んでしまうが、憲兵に見つかっては面倒だ。急ぐぞ。」

「はい!」


 人との出会いなど些細な事だ。


  これはまだ、序章に過ぎない。


   何度だってやり直してみせる。


    この国を変える為に。

    

     俺の大切な人を取り戻す為に────

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