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呪具

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 旅行先で、楽器を買った。カスタネット(幼稚園で習うのは正式にはカスタネットではなく、日本人が開発したミハルスというものらしい)みたいな打楽器で、カタン、カタンという音がする。


 もちろん、ハレの日に使う物だと店主に確認して買ってきた。ケの日につかう呪術具を土産に買ってきてエライ目に遭った人の話を聞いていたから。


 黒い物が付いてくるようになり、お祓いに大金が掛かってしまったとのこと。

 喜びのダンスのリズムを刻む打楽器だと、しつこい位確認して買った。


 帰国して、カタンカタンと鳴らしてみる。夕立が降り出した。夏の暑さを下げる恵みの雨。

 ハッと思って楽器を写真を撮りネットで検索した。これもまた、呪術具では……


 案の定、呪いに使うものだった。リズムによって祈る内容が変わるというものだった。モールス信号みたいに、神に向かって通信するようなものみたいだ。どっかの大学の文化人類学科の論文がヒットした。


 そして、私の実家は神社である。神主は兄が継いでいるが私とも相性がよかったらしい。道理でいきなり効果が出てるわけである。ちなみに、前記の黒い物が付いてきた話は兄から聞いている。だから、念を押したのに。


 私は楽器を押し入れにしまった。


 10年後戦争が始まりそうになった。領土を主張している国が攻め入ろうとしたのだ。兄は戦勝祈願の祈祷を始めたが、私はあの楽器を思い出した。たしか、和平を祈るリズムも見たはず。


 押し入れから探し出し、ネットにあるとおり、打ち鳴らす。


 カタン、カタタン、カタタタタン、カタン、カタ、カタタタン。


 心を込めて打ち鳴らす。

 疲れて寝てしまうまで。


 起きてテレビをみたら、敵軍がクーデター起こしていて、侵攻を命令した指導者は拘束されていた。軍の同意を得ない戦争が続くわけがなく、あっさりと終戦となった。もちろん、呪いだけで効果があったという気はない。侵攻に疑問を持った軍を初めとする人々のお陰だ。


 私は八百万の神の1柱として、神棚にその楽器を置き直した。

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