第0130 1話 深夜に浮かぶ赤色
昔は縁無しと思っていた深夜という時間帯。それが今では当然となっていた。
希少価値に見ていた深夜帯は今では一般的なものとなっていた。
これは慣れか、適応か、追求の結果か。そんなことはともかく、今日も深夜帯の中、泥々と過ごしている。
一日分の体力も大分消費した。思考力もブツブツと途切れかけている。それなのに何故か椅子に座っている。
やるべきことはあるといえばある。しかし、手を付けるのに時間がかかってしまう。
思考力は深夜帯が進むにつれて更に低下していく。
気付けば意識のある銅像と化していた。そんな銅像が見る先には、一輪の鮮やかな赤い薔薇があった。
余りにも鮮やかな赤薔薇。しかしそれは植物を装った造り物である。
しかし、その赤薔薇が、見えている視界の中で最も鮮やかで目立っていた。視界の中に有れば、見なくとも視界のどこかで赤色が主張していた。それが余りにも気になってしまう。一度でも意識してしまうと、それ以降思考がそっちに向いてしまう。昼間と同じ赤色なのに、深夜帯だといつもより色濃く見える。ただの造花だというのに、何故か生き物だと錯覚してしまう。詰まる所、とにかく気になって仕方がない。
我に返って椅子から立ち上がると、その赤薔薇が入っている花瓶を椅子から見えない場所に移した。
あれは、あの赤色は、私の深夜帯を奪い喰らうものだと感じたからだ。