決意表明
サブタイの決意表明は自分自身のものでもあります。
妄想大好き。書いてみたいけど書く習慣ない。→書かなきゃ始まらない。
スモールステップでがんばりまーす。
『
拝啓
神崎心音 様
お元気でしょうか。
私は貴方に全てを捧げていた日々から離れ、とても寂しく感じております。
このような日が来ることを知っていれば、いえ過去を悔やんでも仕方がないですね。
話は変わり私事になりますが、魔法使いになりました。
30歳まで童貞を守れば、などという都市伝説を信じていたわけではありませんが、世の中というのは不思議ですね、偶然なのか30歳を迎えたその日自分がこの世に生まれたことに感謝をし、両親に自分を生んでくれた感謝と結婚していないことによる多少の申し訳無さを旅行というプレゼントで誤魔化しつつ、貴方に出会えたことの奇跡を噛み締めていたとき、転生というものを経験しました。
あの時の感情は筆舌に尽くしがたいものがありました。
身体が潰され溶けていく感覚を味わった後、永遠とも思える闇を彷徨い、ようやく悪夢から目覚めたと思ったときの不可解さ、異なる法則・文明の存在する世界に生まれたことの戸惑い、そして何より貴方にもう2度と会えない、見ることさえ出来ないのだということを知った時の絶望。
確かに魔法使いになることが出来たらと願ったこともありましたが、それは何も失うことがないことが前提の話です。ましてや貴方と出会ってからの日々の暮らしは私の人生に光が差し込んだようであり、貴方と離れ離れになるなど言語道断です。転生してからの日々は絶望に染まっていました。
そのような日々から救ってくれたのもまた貴方でした。少し成長した私は貴方を身近に感じられるようにと、貴方の姿を絵に書いたり、木を削り貴方を形作ったりしてたのです。
「ゴーレムを作っているの?」
私の手元を覗き込んだ今世の親が呟いた言葉です。
この時の親の言葉は間違った指摘でしたが、この瞬間、私は天啓を得た気持ちでした。
魔法の存在するこの世界でなら貴方と再会するどころか目の前にし、触れ合うことさえ出来るかもしれない。
これは貴方を創り出せということだ、と。
最後になりましたが、私は生まれた土地を旅立つことに決めました。
貴方を最高の形で迎えるために、貴方を最高の形で創り出すために。
待っていてください。
貴方と少しでも早く再会できるよう全力を尽くします。
再会できる日を楽しみにしています。
敬具
』
手紙の書き方など所々忘れてしまっていたが、なんとか書き終えると丁寧に折りたたんだ。
手紙という形に残したことによって決意を新たに出来た。
実際に出すわけではない手紙を鞄に入れ、兄弟が寝静まった部屋を見渡した。
兄弟達と共に少なくない時間を過ごした我が家の子供部屋だ。
村を出るのは明朝だというのに、なかなか寝付けず深夜にも関わらず手紙なんてものを書いてしまっていた。
俺は小さなランプを消して布団に潜り込む。
明日からは布団で寝ることも恋しくなりそうだと益体もないことを考えながら、眠気がきたことによってようやく寝付けそうなことに安堵した。
そして次の日、俺は生まれた村から旅立った。
さあ、世界を冒険しよう。
愛しいあのヒトを創り出すために、まだ見ぬ素材を見つけ出さねばならない。
愛しいあのヒトを創り出すために、ありとあらゆる技術を知らなければならない。
愛しいあのヒトを目の前に迎えるのだ。
こうして俺は前世で熱を上げていたバーチャルアイドルを創り出すための冒険を始めた。