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ぶち抜いた空

 ミーティアは、ポッキリ折れた高層ビルの床を、思いっきり蹴りつけてジャンプした。

 壊れかけのビルは揺れる。灰色の鉄筋コンクリートでも、縦にヒビが入ったものでは、ミーティアの脚力を支えきれなかったのだ。

 ヒビの周辺で、大きく瓦礫が剥がれる。

 ミーティアは、あっと言う間に、ドームの天井に届いていた。

 また、左指4本を、岩に突き刺して体勢を固定する。


 こつこつ、黒炭色の岩壁を叩いた。


「フンゥ!!」


 ミーティアは岩壁をげんこつで殴りつけた。天井からドーム全体に揺れが響き、また高層ビルのヒビから瓦礫が剥がれる。

『震度4を感知しました』

 折れた高層ビルの上に、鉄色のヘリコプターが上昇してくる。それは二機あって、屋上となったビルの中腹を左右から挟む。

 プロロロロロロ……

 プロペラの風。よしきの黒い装飾の姿を、突風で覆った。その左右で、参院のカウボーイが銃を向けている。


「うわぁ!」

「赤毛族、なんてやつだ」

「目の前に集中しろ! こいつは異世界最強だぞ」


よしきは片目を大きく開けて、風の強い中、手を指鉄砲の形にして、両脇のカウボーイたちに向ける。


「あれれれれ? 君たち、それをわかっててこんなことしてんのかい?」


 ジャキン、ジャキン、ジャキン。本物の拳銃の音がした。

 カウボーイ三人は銃のハンマーを下ろした。彼らは、太っていたり、背が高かったり、むきむきだったり、多様な体格をしていた。


よしきはその中の一人な体格に見入る。


「そうかぁ、まあ、そっちの太ってるやつと背が高いやつは、銃使ってんのまだ分かるわ。でもな、なんでそっちの筋骨隆々は手のひらよりちっちゃいもん使ってんだ?」

「お、俺のことか?」

「そうだ、誰がいるんだ?」


筋骨隆々のカウボーイの背中を、太ったカウボーイがパチンと叩く。


「やったなロビー! あの詠嘆のエクレツェアに話しかけてもらってるぞ!!」


彼らの反対側のカウボーイは羨ましそうに眺めていた。


「俺も筋骨隆々になる!!」


この中で一番真面目なのは、筋骨隆々のカウボーイらしい。


「だから集中しろって!!」

「ファンならサインは書くけどな」

「だまってろ!! 俺たちは、ノットバレットカルテルの端くれダァ」


 よしきは両手を挙げて、左右を目で見た。目の前には、黒檀の岩壁のドームと、ブラックライトの景色。

 瓦礫の残骸は足元を転がっていて、今にもビルは倒壊しそうだ。

 その時、よしきはかかとを三回鳴らす。


 こつ、こつ、こつん。


カウボーイたちが一斉に構え直す。


「動くんじゃねぇ! 劣化物質の弾だぞ!?」

「そうだそうだ!」

「異世界最強にだって、容赦はしない!!」


畳み掛けるように戦闘ヘリのプロペラ音が聞こえてきた。


『錬成・戦闘ヘリ・RN434(あーるえぬ、ふぉーすりーふぉー)」

『工場システム・6機の対人ロボットを生産しました』


 プロロロロロロロ……


 屋上を、さらに戦闘ヘリが取り囲んだ。周囲は、全8機の舞台が、プロペラで風を撒き散らす。取り巻く風が嵐のようになっていた。

 よしきの黒髪が大きく乱れる。

 スミレの紫の着物は、風をはらんで大きくなっていた。

 ミーティアの赤毛も、烈火のように逆立っていく。

 カウボーイたちも、帽子を飛ばされないように抑えていた。


「この施設はもう破棄されている!」

「俺たちはあんたをここで倒すように言われてるんだ!」


よしきは宙にサインを描きながら、

「なるほど、じゃあ、サインはいらないのね」

「サインは、後でいくらでも貰ってやるよ!」

「そうだな、じゃあ、今ここで胸に刻めや、なっ!?」

「「「?」」」


 よしきは、ビルに大きく足を踏み込んだ。その瞬間、天地が揺れる。

 ドームの中は地下なので、全部地なのだが、その全部が大きく揺れたのだ。ビルは堰を切ったように倒壊を始め、瓦礫が下に降り注いでいた。下にある、銃の巨大な倉庫に、三角の瓦礫が降り注ぐ。

 煙を上げて、木っ端微塵に砕ける。倉庫は柱も折れ、天井も崩れ、コンクリートの上に折りたたまれていく。中の商品はぐしゃっと潰された。


「「「ぎゃああああ」」」


 カウボーイたちは足元が崩れて、下の階に足を滑らせる。上半身だけで、床にへばりつく。


『震度7を検知』


戦闘ヘリの中室な音声が響く。

ミーティアがよしきに叫ぶ頃には、彼はスミレの元へと駆けつけていた。


「危ないっすよ!!」

「私、縛られてるのよ!?」

「スミレ、捕まれ!!」


 よしきはあっと今にスミレの元へ走ってきた。しかし、その後ろから、ビルの日々が追いかけてくる。縦に割いたように、四角い建設物がパックリと割れた。

 スミレの椅子の下も裂けて、大きな亀裂が出来た。

 よしきは、その亀裂が広がる前に、スミレの腹を抱えて飛び上がる。またびるを大きく蹴りつけた。

 高層ビルは、よしきが走ってきた方向とはは反対にへし折れる。裂けた長方形は、扇型になって、黒炭色の壁に崩れていった。

 カウボーイたちは、ブラックライトの下から、ヘリに助けられる。それそれ尾翼につかまりながら、飛び上がるよしきを銃撃していた。


「このやろー!」

「めちゃくちゃにしやがって!!」

「多々じゃ帰さないぞ!!」


3人による一斉射撃。赤色の弾丸は線を描いてまっすぐに乱射され、好きだらけの軌道を描いていた。


よしきはスミレを抱えて銃弾の雨をやすやすとくぐる。


「よしき! 撃ってきてるわよ!!」

「そんなもんが効くと思ってんのかよ、あいつらは」


 たまに、銃弾は二人を捉えるものの、よしきが銃弾をたやすく掴み取るのでまるで意味がない。止まっている虫でもにぎりしめるように、右手に集める。

 2、3回手元で転がすと、ブラックライトの空中にパラパラと放り投げた。

 銃弾には、いつの間にかよしきのサインが刻まれていた。

スミレはよしきの肩をポンポンと叩いて心配する。スミレは劣化物質という物を知っているらしく、手で握ったのがたまらなく心配だったのだ。


「触っちゃって大丈夫なの?」

「このタイツは、一応、放射部線を弾く素材だ」

「あぁ、その服やっぱりタイツだったのね」

「あっ……ちがう、これは服だ。服」

「はいはい、ありがとうね」


 よしきは、スミレを抱えたまま、ミーティアの隣の天井に張り付いた。足を、黒檀の岩壁にかかとから突き刺している。

 ミーティアは壁をトントン叩いて、どこを殴ろうか模索しているのだ。

よしきは、下の方では無いがミーティアの下で滑空を続ける。背面飛行しながら、ミーティアに様子を尋ねた。


「いけそうか?」

「はいっす!」

「大丈夫なの?」

「問題ないっす!」


ミーティアの綺麗な敬礼を見て、よしきはスミレを抱き直す。


「スミレ、もう一回下に降りるぞ?」

「え!? なんでよ! ああああああああ!!」


 ヘリの音がする。

 ドームの天井から下を眺めると、ブラックライトに照らされた鉄の戦闘ヘリ。紫色に輝いて、黒いガトリング砲台にも、うっすら光沢があった。

 全13機、それぞれの操縦席に、親指のような形のロボットも載っていた。手元には、太一と同じ『フィガー』を装着してる。時計のようなそれをつけたまま、操縦桿そうじゅうかんを握っていた。


『錬成・ジェットエンジン』

『垂直離着陸可能。錬成・誘導ミサイル』

『フィガー・プラネタリウムSTシューティングゲーム


 ドーム全体に、光り輝く粒が現れる。それぞれだ以上あるものの、幾つか星を線で繋ぐと、エクレツェアの12星座が出来上がるのだ。

 宇宙空間の中で、目の前には、真空を飛ぶ戦闘機たち。ヘリは、すべてジェットエンジンで、縦横無尽な移動を始めていた。

 しゅこ〜、と、ドームの壁に穴が開く。室内の空気を、地上に排出しているようだった。いよいよ、宇宙空間に寄せてくる。

 その頃には、カウボーイたちも酸素濃度の関係で、ヘリコプターから滑り落ちていた。


「Xバースト!!」


 よしきは、慌ててカウボーイたちを追いかける。手のひらと足から、光り輝くエネルギーを放出、体のひねり一つで左右へと自在に飛び回る。

 ヘリコプターの軍勢、6機の群れの中に飛び込んでいった。真空空間になる前ではあるが、ヘリのプロペラはすでに回っておらず、腹側のジェットエンジンから火力を得て、前後左右垂直に飛行していた。

 スミレの頬を、エンジンの熱がかすめた。



「熱! 太一と同じ炎!?」

「あれはジェットエンジンっていうんだ、勉強になったな。捕まってろよ」


 右に大きくきりもみ回転。斜めにそれながら、ドーム内を進む。急に切り返して、追尾するヘリコプターたちを振り切った。

 スミレの息がきれる。


「はぁ、はぁ! どうなってるの?」


よしきも息を切らしていた。


「酸素濃度が減ってるな、ミーティア! 早くしろ!!」

「おいっす!!」


 ミーティアは、ドームの天井にゲンコツを叩き込んだ。ドームに破れ鐘のような音が反響する。

 よしきの耳をつんざきながら、玉子の殻のように、黒いドームに亀裂が走る。


スミレが息を切らしながら、よしきの肩を叩いた。


「大丈夫なの!?」

「異世界最強がひと殺してたらシャレになんねぇだろ。ちょっと息止めてろ、スミレ!!」

「わかったわ!!」

「トップスピード!!」


 スミレを振り切らんばかりの勢いで、よしきは空中を飛び出した。両方の手のひらから、焼き尽くすような匂いの咆哮が解き放たれる。

 白い滝のようなエネルギーは、よしきの軌道上に跡を残しながら、海流のように広がっていった。

 戦闘ヘリの脇を抜ける。

 よしきは両手をクロスして、エネルギー波を打ち放った。


「Xバースト!!」

「きゃ!!」

スミレが振り落とされそうになる中、よしきが腕でもう一度持ち上げ、真上に上昇した。

「もうちょっとだ」


ミーティアの活発な声がドームの底に降り注ぐ、 。


「あと、一発で決めるっす」

「ああ、俺も回収が終わりそうだ」


よしきはそういうと、スミレの頭を撫でる。スミレは息が長く、まだ息を止めることができていたのがだ、手の感触で思わず息を吸った。


 ヘリコプターの機動力を逆手に取ったような飛行。手のひらと足の裏から、光のエネルギーを放出して、機体にはありえない小回りを実現してた。

 掻っ攫うようにして、カウボーイ三人を無事保護する。

 だが、目の前に戦闘ヘリが降りてくる。ガトリング砲台をこちらに向けていた。


『狙撃を開始します』

「チィ、敵味方関係なしか」


よしきは急旋回するものの、砲台は俊敏に後を追う。


すみれは左右前後にフラれながら、


「どうするの、よしき!?」

「スミレ、ちょっと本気を出す。眩しいだろうから、しばらく目を瞑ってろ」

「いやよ、そんなの」

「眩しいのが好きか?」

「いいえ、ちゃんとあなたの強さが見たいから」


 スミレは強情そうに鼻を上に上げて、よしきの肩を強くつかんだ。まるで、宇宙空間の戦闘機の背中にしがみつく子供のように、ワクワクしていた。

 よしきは、まいったな、というような顔をしている。これだから、強すぎるとなんでもゆうことを聞いてもらえると思われるのだ。異世界最強の小さな思い出もある。

 戦闘ヘリは、容赦なく銃弾を放った。


「はい、ここで急旋回」

「きゃ!」


 救出したカウボーイたちは、先回の途中で目をさます。だが、真下には紫色のドームの床で、がれきだらけだった。暴れようとはせず、おとなしく黙っている。


「おい、なんで俺たち詠嘆のエクレツェアに摘まれてるんだ?」

「静かにしろ! 振り落とされてもしらねぇぞ」

「……幸せだ」



『照準を再設定』と、戦闘ヘリが迎撃を再開した。

『発射』


 その時、よしきは右手を前に出す。エネルギーが集まって、金色の鱗粉りんぷんが舞う。すると、鱗粉が輝いた。


「シャイニングハンド」


 よしきは左手でXバーストをコントロール、体を左に回転させながら、ガトリング砲弾を交わす。幅を寄せるように、輝いた右手を戦闘ヘリに近づけた。

 突如、ナイフで果物を着るように、戦闘ヘリの鋼の腹に、右手の酒盗を滑り込ませる。

 そのまま、抵抗なく振り抜いて、軌道上には戦闘ヘリの火花が散った。


「いっちょあがり」

「何したのよ?」

「聖なる掌だ」

「意味わかんなかったわ」


よしきは真上を見上げる。ミーティアが猿のように天井にぶら下がっていた。


「ミーティア! 準備はいいな!?」

「もう出来てるっす!!」


 よしきが飛び去る後ろで、戦闘ヘリの座席だけ重力に従った。鋼は、菱形ひしがたにくり抜かれた跡を残すばかりだ。



「おっけ〜、やってくれミーティア!」

「わかったっす!」


 ミーティアは、ドームの天井に、渾身の一撃を叩き込んむ。亀裂がドームを砕くと同時に、地表では大きは爆発が起きていた。


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