この廊下、ブチ抜けるか?
「ロシナンテ、こいつの能力はなんだ?」
「なんでもぶっ放す能力、かな?」
「おぉい、物は言いようだな。節操はあるぜぇ? 例えばこのスナ粒ぅ〜を」
「砂? おい、結局どういう能力だ?」
「なんでも銃弾にしてしまう能力だ」
「さあ、発射ゼェ?」
(この世界のやつは全部好戦的だなあぁ)
地下、ロウソクが坑道の石炭のような壁を照らす。木の枠組みで支えられた、人一人通れる通路。
黒い装飾この上ない服装は、肩の黒炭色を削りながら、容赦なく進んでいった。
ミーティアは、下着もつけない茶色い服を、パタパタさせながら暑がった。赤毛を黒炭色の足元にこすりながら、先に進む。
その先には、大きな部屋があった。
坑道の壁に、大量の武器が並んでいる。デザート大学を襲った奴らが持つ拳銃とは違い、もっと戦力のあるライフルや機関銃だ。
「ミーティア、またここで一休みしよう」
「いいんすかねぇ。なんか、上で騒いでるんすけど、太一さん無事っすか?」
「ロシナンテもつけた、大丈夫だろ。多分」
部屋は3LDKを全て武器庫にしたほどの大きさで、端から端へと駆け抜けることができる。中央にアサルトライフルの細長い姿、傘立てに並べられるように立てかけられていた。
ロウソクはゆれ、よしきとミーティアの影が揺れる。隣のテーブルに覆いかぶさった。
ここは少し湿った匂いがする。
「あれ? こんなところに火薬置いて大丈夫っすかね?」
「しらねぇよ」
「ん? どうしたっすか?」
「人が少なすぎる。まるで、こっちが囮作戦にはめられたみたいにな」
「へへへ〜、珍しいっすね、よしきさん」
「まあ、それくらいこの世界の人間はすごいんだな。うん」
よしきは自分の指を少し舐める。濡れた先っぽで風を感じてみた。
「やっぱり、出口が変わってる」
「変わるっすか?」
「坑道も、機械仕掛けだからな。入り口は開閉可能だ」
「つまり?」
「どうやら、裏口から逃げてるな。スミレが心配だ」
「スミレさん、ビルの一室にいるって言ってなかったすか?」
「地底のビルはこの先だな」
武器庫を進み、坑道を抜けた。
途端に、白い壁の廊下に出て、蛍光灯がつく。
よしきの黒い装飾の服は、浮かび上がったように目立った。
冷房の効いた部屋に、ミーティアも少し凍える。
「どうした?」
「寒いっすよ、急に」
「そこの窓見てみろ。ここは、地下30階だ」
ミーティアは、側にあったまる窓を覗いた。上を眺めると、天井が数十メートル上にあって、黒炭色をしている。よく見ると、本当に黒炭で作られたドームのようだった。
壁に従って、下に視線を向ける。
今いる場所を遥か上空だと知ることになった。
大きなドームは、本当にドームで。今まで通ってきた坑道は、全て中にぶら下がっていた洞窟だとわかる。黒炭の色を反映した蛍光灯は、ブラックライトで照らされたような神秘的な色をしている。
高層ビルが、ドームの中央に続いていた。何かの工場のような、それが足元にあった。今いる四角い通路が繋がっているのだ。
「ミーティア、耳がいいだろ、お前」
「はいっす」
「ちょっと、そこらへんの人気を確認してくれないか?」
「え? 自分でもわかるっすよね? 多分」
「まあ、わかるんだけどな、うん。別にやることがある」
「それならお任せくださいっす!」
ミーティアは、そっと耳をすませた。
「砂漠投擲!(デザ・フリクション!)」
「しゃがめ、太一!!」
「うわあ! 頭を抑えるんじゃああああ」
スパアン!!
「なんだ今の音は? 砂投げただけだろ、な?」
「正解だ、俺は砂を投げたにすぎない」
「ただし、その砂はビルを真っ二つにしているわけだ」
「そんなわけねぇだろ?」
ズズズズズズン……ずんずん……がらがらっ……
「うそだろ? うそだと言ってくれ、ロシナンテ」
「多分、砂を水平に投げつけたんだろうな」
「その通りだ、砂粒の銃弾波、というわけだな」
「というわけだな、じゃないと思うんだけど。なんでもありなんですかね、いい加減にしろ」
(これは逃げるが勝ちかもしれないなぁ)
ミーティアは、耳から手を離して、よしきを見つめた。
よしきはなにやら、床を指でトントン触っていた。振動を、体で抱きしめるように、床を抱いて伏せている。平泳ぎのように見えた。
「よしきさん、やっぱり太一さんやばいんじゃないっすかね?」
「大丈夫だって。人の気配はあったか?」
「はいっす、この真下に数人」
「なるほどねぇ……それでこの振動」
「なにしてるんすか、一体」
「これはなぁ、スミレを探している」
「どうやって?」
「なるほど、地下98階ですねぇ。人間関係のストレスに気をつけて、しばらく家で休んでいてください」
「は?」
「触診だな」
ミーティアはよしきの立ち上がるのを待った。
「もういいっすか?」
「ミーティア、この廊下、ぶち抜けるか?」
「ああ、それくらいならお任せっす」
ミーティアは、赤毛を床に垂らしながら、拳を地面に近づけた。




