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中庭決戦6

 スミレは小柄な体をすべて使って、鎖がまを引っ張り続ける。決して滑り落としてはいけない。



「マリちゃん……がんばって!」



 マリも想像以上の重力がかかる。遠心力に振り回されて、体に巻きつく鎖が痛い。



 必死に耐えて、南の塔にたどり着く。だが、窓などはなく、ただ壁に激突しそうだった。



 それでも、マリはキシヨを信じる。絶対に守るといったのだから、マリは決して鎖から手を離さなかった。



「天つ神・国つ神」



 小さな声。その途端、マリの前のに立ちはだかっていた城壁が斜めに切り裂かれた。瞬く間に大きな穴が開く。



 その壁の奥には、キシヨとアカリが結婚させられかけていた本堂があったのだ。



 そこ先にはとっても妖艶な女性が。肌がすべてぷるぷるで、唇も官能的、ドレスは胸を大きくはだけた開放的な姿。しかもその下にさらしを巻いて絶対に谷間を見せない。



 この女性が城壁を切り裂いたのだろうか。



 隣にはツンとした白衣を着た女性。その隣に座っている寝間着姿で朱色の髪の毛の女性。



 振り子の要領で、マリは本堂の中に入り込んだ。



 本堂の床板は冷えていて、靴の下からでもしっとり冷たかった。



 マリはユー・ユーに抱きとめられる。



「あらかわいいわね。私のお嫁に来ないかしら?」


「そんなことよりキシヨが危ないんです!」


「わかってますよ。可愛いお姫さま、ふふふ」



 塔の目の前には、黒数珠繋ぎのほとんどを身にまとったリスグランツが。隕石かはたまた宇宙人の侵略のように迫っていた。



「だらしがない姿ね」



 ユー・ユーは少し侮蔑した。

 そこにコーデルの通信が入る。



『ユー・ユー。それ切れ』

「了解」



 マリは耳を疑った。



「切る……?」



 ユー・ユーの姿を見るとふた振りの剣を備えている。



「まさか、ありえない」

「あらあら、ありえないはありえないわよ」



 迫っているリスグランツが丸絵スローモーションに見えるほど、ユー・ユーは静かにゆっくりと歩いて行った。



 時間をたっぷりかけて、リスグランツに剣を向ける。



「天つ神・国つ神」



 そして手首を返した。かすかに剣を動かして、空間を切ったように見える。



 でも、その先には何もなくて、かなり離れた場所にリスグランツと黒数珠繋ぎが。



 スパン



 リスグランツが体制を崩した。なぜか重力に負けるような姿勢で斜め前にずり落ちてきたのだ。



 マリは目を疑った。



 ユー・ユーがクスクス笑っているの背景に、それまで圧倒的に大きかったあの黒い触手の塊が、斜めにスライスされていたのだ。



 マリは自分よりはるかに妖艶な女性が、マリを狙う巨大な化け物より圧倒的に強いことを知った。



「まだよ、可愛いお姫さま」


「え?」


「あなたのフィアンセは戦っているわ」



 リスグランツの後ろにキシヨの姿が。暴れるリスグランツのこめかみに銃を突きつけた。



「散々暴れてくれたなぁ!」


『皇帝の娘ぉお!』


「お前の相手はこの俺ダァア!」



 キシヨがリスグランツの顔を自分の方向に向ける。



「さあ、決着をつけようか」

『きさまぁああ!』



 そこに、スミレが着地した。



「さあ、早く止めを!」

「まだだ! こいつを宝物庫にぶつけないと!」

「なんでそんなことを!?」

「家系図を手に入れる!」

「でもどうやるの?」



 確かに、今リスグランツがいる場所は宝物庫よりもかなり下に位置する。



 リスグランツのにまとわりつく黒数珠繋ぎは重く絡みついて離れる様子はない。



 キシヨにこの巨体を上に突き上げる方法はなかった。



 その時、ミズノからの連絡が。



——キシヨさん、揺れに備えてください——


「はぃ?」


——ミーティアさんを転送します——


「おまたせっすぅ〜!」



 ミーティアの声が聞こえたが、姿が見えない。



「キシヨさん、ちょっと揺れるっすけど絶対に落ちないでくださいっすね!」


「ミーティア、いったいどこに!?」


「下っすよ、下っす!」



 どうやら声が前から聞こえている。



 スミレが触手を走って見に行くと、塊の切断面にミーティアの姿が。



「何をしてるの!?」

「捕まっていてくださいっすね〜」



 ミーティアは両手で黒術繋ぎの塊を捕まえた。慎重に力を込める。



 触手が跳ね始めたが、ミーティアの腕力はその動きを完全いせいするほど今日リィクだ。



 キシヨたちのいる上部分が揺れ始めた。



「今から投げ飛ばすっす!」



 マリはそれを遠くから聞いていた。耳を再度疑う。



「できるわけがないわ」


「可愛いお姫さま、こkは危ないから少し離れましょうか」



 ユー・ユーがマリの手を引いてその場から連れ出す。



「うぅうおりやぁああっっっっっっっすぅ〜!」



 触手の塊が浮き上がり、本当に投げ飛ばされてしまった。



 リスグランツの顔を掴んでいるキシヨに、スミレが抱きつく。



「きゃああああああ! また空飛んでルゥ!」


「忍者だろお前我慢しろ!」


「できないわよ!」


『貴様らいい加減にしろぉお!』



 周辺の触手が沸き立ち、傀儡の兵士が生まれる。納豆のような見た目の兵士たちは、触手が大きく滅ぼされ少し鈍い。空を飛びながら二人を襲った。



 キシヨはその度に銃を撃ちなったがきりがない。


 そこにコーデルの声が。


『聞いてねキシヨくん! 今からこの世界にエクレツェアを接続するよ。その瞬間、エネルギー濃度が変わるから、君のエネルギーが不安定になる!』


——エネルギー飽和率100%ですぅ——


「なんでそんなことを今するんですか!」


『余計なことは言わないよ! 君のエネルギーが不安定になった瞬間、君のエネルギーが外に噴き出すはずだ! それを使ってリスグランツを宝物こに押しつけるんだよ!』


「急に言われても!!」


『できないなら僕がやる!! それでもいいんだよ!?』


「な……!!」



 その時、和帝の国に来る前によしきに言われた言葉を思い出す。



 もし、俺の納得できない結果だったら、俺はお前をエクレツェアには連れて行かない。



『いいかい!? 君が強いのはみんな知ってるんだよ! だから君をよしきが選んだ!! この世界で一番弱いなんて嘘さ!! できるんだ! やるんだ! お前が信じないで誰が信じる!?』



「……わかってる! わかったからさっさと世界を接続しろぉおーーー!!」



 スミレがキシヨに寄り添った。



「私が押さえててあげる。しっかり決めなさい」


「頼むぞ、スミレ」



 その時、リスグランツがうめき始める。



『も、もう、時間切れか……せめて貴様らだけでも道ずれにしてやるぅう!』



 リスグラングが両手で印を結び始める。これは忍術を使う時の仕草だ。



「その印はまさか!?」


「スミレどうした?」


「自爆するつもりよ! 弱りす着て理性が戻ったみたい!」


「何!?」


『土遁・傀儡自爆』



 りすグランツとその黒数珠繋ぎが光り始めた。ガーゴイルが爆発した時に似ている。



 キシヨは銃を握りしめた。



「いい加減にしろよこのバカやろおおおお!」



 コーデルが叫ぶ。



『世界を接続しろ!』



——はいですぅ!——



 その瞬間、世界が揺れた。地震とは言えない。空間が全て揺れたような、世界という入れ物が揺れて、その中全てが揺れたような感覚。



 同時に、国中の物質から光が解き放たれ始めた。服、石、体、全ての質量が減ったような不思議な感覚。



 そして、キシヨには顕著に表れていた。彼の体が光に包まれる。



 スミレの姿もほのかに光、キシヨの光と混ざってさらに大きくなった。



 これならいける。



 キシヨの背中を押すのがよしきだ。



 よしきは周辺の一番高い場所でそう言った。腕を組んで仁王立ち。そんな勇ましく勇敢な格好は、主人公ならできる格好だ。



「太一ぃいいい! お前なら出来る! お前にできて俺にできないことはない! 俺にできてお前にできないことはない!」



 それはグラップハローでも言っていた。



 俺にできてお前にできないことはない。



 りすグランツの高さは宝物庫より少し上のベストポジション。



 スミレに支えられて、キシヨハリスグランツに銃を向けた。



「さあ、運命の時間だ」

『なにをぉおお!』

「Xバースト!!』



 キシヨの向けた二つの銃口は、彼の人生の中で一番大きく輝いたのだった。

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