覚悟の道
キシヨが駆け寄ると、アカリはまだ生きていた。彼は彼女の手を強く握って、
「大丈夫だ。いますぐ病院へ運ぶ。安心しろ」
——いま、医療班を要請しましたぁ! そこで待っててくださいですぅ!——
ミズキが声を荒らげる。その様子は自体が切迫していると伝えていた。
アカリは手に力を込めて、
「妾は覚悟していた。母さまの元に生まれて、物心つく頃には皆とは一線を画したまま一生を終えることを……結婚もそうじゃ、妾は結婚などとうの昔に覚悟しておった。年結婚しなかったのは、母さまの納得すような心の強い男がいなかったからじゃ……小さい頃から強いものと結婚するようにと……言われておったからじゃ……でもな……死ぬ覚悟はしておらんぞ……」
「これ以上喋ったら傷に響く!」
その時、アカリの朱色の瞳から一滴の涙がこぼれた。
「私は……死ぬのか?」
「いいや、死なない! 絶対にだ!」
「ふふふ……また絶対か。さっき違ったろうに」
「大丈夫だと言ったら大丈夫だ!」
キシヨが声を荒らげると天からいつも通りのミズノの声が聞こえた。
——キシヨさん。鏡さんのところへ向かってください。マリ様の居場所が確認できました——
だが彼は首を横に振って、
「ダメだ! まだ敵がいる。医者が来るまで守らないと」
——これは、業務命令です。今すぐ従ってください——
「ふざけるな! 置いて行けるわけないだろ!」
ミーティアがキシヨの肩に手をかける。
「行ってくださいっす。私が守ってますから」
「だが、一人でなんとか出来る相手じゃ!」
すると、ミーティアが大きな声で、
「なめないでくださいっす! 私は全世界で最も気高い赤毛族! 一度守ると決めたからには絶対に守り抜くっす!」
不意なことにキシヨは目を白黒させている間も彼女は冷静だ。
「大切な人は手の届くうちに助けておけっす。それができないなら私が助けに行ってくるっす」
そこでキシヨはようやく本来の目的を思い出した。
「わかった、行ってくる」
彼はアカリの手に力を込めるとその場において、鏡の元へと向かった。




