第1話「俺、死ぬの?」
(俺、確かトラックに跳ねられて、、、俺、こんな所で死ぬのかよ、、、。)
いきなりクライマックスから始まったのが、俺の物語だ。
俺は何処にでもいる至って普通の高校二年生須藤康介だ。
特技があるでも無いし、才能も無い、やる気も無いが揃った怠惰な人生を送っている。
今日も学校の授業を終え、帰路に着いていた。
「、、、っと、朝サボったからログボを回収しとかないとな、何か一度通算ログボを逃すと損した気分になるんだよな。」
俺はある程度友人と帰路を共にしつつも、家の数十メートル前で別れを告げ歩道を歩いていた。
さっさと家に帰ってやりたい事をやらなくては。
ゲームにアニメ、漫画にと山程あるのだから。
その帰路の途中でながらスマホに夢中になっていた。
学校では何気無い時間に友人と共通の話題としてソシャゲの話をする事がある。
だから俺は今日もログボボーナスを回収する作業に入る、別に多少溢してしまっても構いはしないが何となく暇だったからだ。
俺がやっているソシャゲは古臭いイベント特攻の重課金必須のゲームでは無く、リセマラでSSRを確保しておき、ある程度育成をしておけば長らく遊べるタイプのゲームであった。
そもそも俺も、友人も学生なので重課金等出来る筈も無いが。
学校の休み時間で行われるソシャゲの協力プレイで足を引っ張るのを想像すると友人に嫌な顔をされるのでは、と思い暇な時や休日を使って育成を余儀なくされるのだ。
一通りログボを回収し終えると、俺はソシャゲの音ゲーを起動する。
普段はイヤホンを差し込み、アニソンを聞いているのだが流石に音ゲーを演奏しながら聴くことは無い。
アニソンが特別好きな訳じゃ無いが休み時間の最中に流れるアニソンを聴くと友人が、「誰だよ、この曲流したの!」「これって神アニメの奴じゃん!?」とか騒ぎ出すので同調する為に聞いておかなければならない。
まぁ、俺としても友人と共通の話題で盛り上がるのは嫌いじゃ無いけどさ。
目の前の信号は赤信号なので忘れず横断機のボタンを押しておき、ライブの演奏を開始する。
ふと、思ったが何故緑色の信号は青信号と呼ばれるのだろうか?。
今はそう言う物何だと納得している訳なのだが、何となく暇だったのでそんな事を考える。
ハッキリと言って時間の無駄なのであるが、そんな時間も俺の平和でいつも通りの日常が過ぎ行く事を示している訳なので嫌いな訳じゃ無いが。
そんな 事を考える内に携帯の画面から少しだけ見える視界で青信号を捉え、ライブの演奏中ではあるが、また信号が変わるのを待つのは億劫なのでながらスマホをしながらそのまま、信号を渡る。
俺はながらスマホ歴が長いので人とぶつかる事はほぼ無い。
一応僅かながらの視界から得た情報で目の前の障害物を避ける事が可能なのだ。
危険を察知したら一応その場に留まって安全を確保し、相手に道を譲る事で未然に事故を防ぐ。
だが、ここは車道なので赤信号に変わってしまう、立ち止まるのは自殺行為以外の何者でもないので急ぎ目に歩を進める。
キキッーーーー!!!!
ドンッ!!!
前方の視界に注意を向けていた俺は何が起きたかも分からず、何かに吹き飛ばされ地面に叩き付けられていた。
(いづっ、、、、声も出ねぇ、、、。)
こう言う時、ラノベの主人公ならトラックに跳ねられたのか!?とか思う訳なのだが俺は非現実に応対する事が出来ず、パニックになるしかない。
俺の眼前には駆け寄ってきた通行人、不謹慎な事にこちらに携帯を向けてくる者、そしてトラックがあった。
(そっか、、、俺はトラックに跳ねられて、、、俺、こんな所で死ぬのかよ、、、。)
消えゆく命の灯火を肌に感じながら走馬灯が流れる訳でも無く、(もしかしたら俺、異世界転生でもするんかな、、、)何てくだらない事を考え始める。
そして異世界転生物のアニメの主人公と違って意識が長持ちする筈も無く、あっさりと俺は意識を手放した、、、。
そう、俺は短い生涯を終えたのだ。
そして世界は、いつも通りの日々が流れる。