自主練習とオールバック
野生の動物たちも静かに
巣穴の中で寝息を立てている中、1人の男が
「昨日の事もあるしまだここら辺じゃあ練習したら流石にばれるよね…」
とつぶやきながら
パンロプ村の門から外に出かけていった。
………………
「いいかいナツ、魔法というのは体内の魔力を体の中のゲートを通して放出した時初めて魔法という現象が起こるんだ。ほら、このように」
とネネさんが手のひらの上に炎をだし、
実演してみてくれた。
「そのゲートというのも種類があって、火、水、風、光、闇の5種類がある。
火の魔法を使う時は火のゲート、水の魔法を使う時は水のゲートというように、
使う魔法によって使うゲートが違うんだ、
その為、人によって、得意な魔法と苦手な魔法が出てくる。もし風の魔法を得意としない者が使おうとしたら、最悪、そよ風しか起こせない場合もあるだろう。
魔法を使うものはまず、自分の適正魔法を知り、どのようにゲートの中で魔力を魔法へと効率よく変換して現象として体外へ放出させるかと言う方法を学び、その後は魔力をを現象へと、魔法を使う鍛錬をする。そうする事で初めて魔法が使えるようになるんだ。」
…………
と、昨日の夜、ネネさんに教えてもらったことを
思い出しながら、練習できるような場所を捜して歩いた
「昨日の事もあるから、広い場所を見つけてやらないと、」
逸る気持ちに、ブレーキをかけながら
練習に適した広く辺りに人がいない場所を捜して
走り回った。
「あった!!ここなら」
ナツが見つけた場所は、見晴らしが良く
辺りの草原を360度見渡せる少し小高くなった
丘の上だった。
「とりあえず辺り一面草ばっかだし、火の魔法はダメだよね、風の魔法でも試してみようかな?」
昨日と同じように、ネネさんの見様見真似でまた同じようにそこら辺に落ちていた枝に魔法をかけてみた。
今回は昨日と違い、力を込めて試してみた、
あたりの草がナツを中心にしてたなびき、大気を唸らせ
手元の枝に空気が集結してきた。
すぐにその空気たちは姿を変え、風の刃と化した。
「ふんっ!!!」
ズドンッ!!!
昨日と同じで凄まじい音がした。
ただ、今日は昨日と違い全力で振り抜いたのにもかかわらず、さほど草が切れた範囲に違いがなかった。
あれっ?なんでだ
そう思った瞬間ヒザの力がガクッと抜けた。
「力が入らない、それになんだか体がだるい」
回らない頭で必死に考えてみた。
「もしかして魔力が底をついた?」
ゲームや漫画をベースに考えてみた結果
その結論に至った。
「異世界転移したからっていって、反則的な強さを与えられてるって訳じゃないんだ……」
少しだけ、期待していた、いやかなり期待してた。
でも現実はそんなに甘くないよね…
「まあ、そんなもんか……
来てすぐだけど、今日は練習出来なさそうだし
さっさと帰ろう、」
パンロプ村からは2km位離れたところまで来てしまった
なんとか無事にたどり着ければいいけど。
歩いて来たあぜ道まで戻り村に向かって歩き始めた
来た時は15分くらいで来れたのに
今はもう30分以上かかってる、
「やばい、今もしモンスターに襲われたら逃げ切れない!!」
近くの草の茂みからガサゴソと何かが動く気配があった
「………………………これ言っちゃダメなやつだった?」
誰だ献身的にフラグを回収に来るモンスターは!!
空気を読めすぎるやつめ!!
人の気持ちもいざ知らずで、すでに戦闘態勢で
茂みから、オオカミに似たモンスターが飛び出して来た。
フラグ回収おつかれさまでーす。
「って言ってらんないわ!!」
オオカミに似たモンスターが大地を蹴り跳躍し
いざナツの喉笛にかみつこうとした瞬間、
ナツの体も宙に舞っていた。
というか引っ張り上げられていた。
何が起こったのかわからず、
反射的に閉じていた目を開くと、
オールバックがよく似合う少しワイルドなお兄さんが
手綱を握ってる馬の後ろに乗せられていた。
その男が馬を操りながら振り返り、
「にいちゃん、大丈夫か?」
笑いながら
そう問いかけて来た。