いざ行かんメッキール王国へ
大きな声で叫んだ後は少し落ち着いた、
いや実際は、不安がないといえば嘘になる。
両親や友達、今までの生活、それらがあった以上は
心残りが多少なりとある。
それでも、今まで小説や漫画で憧れていた異世界に
来れた事で自分の気持ちは高ぶっていた。
「いきなり大声を出してすみませんでした、つい気持ちが高ぶっちゃって」
「ビックリしたよ、ナツがいきなり走り出して叫びだしたから…、それはそうとナツは冒険者ではないのかい?
服装は丈夫そうだけど武器は持ってないし、
さっきのゴブリンの事も魔法の事も聞いて来たし。
そのわりには戦闘が始まってから妙に冷静だったけど……」
ネネさんは不思議そうな顔で聞いて来た。
それもそうだろう、こんな草原の中で倒れていて
もちろん他のモンスターもいるであろう状況の中
武器の1つも持ってないとなると、命知らずにもほどがある。
ただ、ネネさんの質問に
どう答えたらいいかがわからない。
正直に異世界から来たばっかりで、今いる場所がどこかわからないと答えれば最悪の場合おかしな人と思われ
置いてかれてしまうかもしれない。
それだけは今のなにもわからない状況の中では避けなければいけないと思った。
「気がついたらここに…自分の名前以外はなにも覚えてないんです……」
「そうか…それは申し訳ない事を聞いてしまったね。
そうだ!それなら今から私が行く場所までとりあえず一緒に行ってみるというのはどうだろうか??ここであったのも何かの縁、そこで知り合いに会えるかもしれないし、何かを思い出すかもしれない。」
こんなに嬉しい提案はない、
「是非ご一緒させてください!!」
それでも良心が痛む……
こんな善い人に嘘をついてしまうなんて、
でも今この孤立している世界で頼れるのは
ネネさんただ1人…すみません、ネネさん!!
そう心のなかでおもいながら、ネネさんに同行させてもらう事にした。
とりあえず今から行く場所についた後のことは考えずにこの世界の事、魔法の事、冒険者の事
色々ネネさんに聞いてみよう。
「ネネさん、すみませんいまから行く場所の名前は
なんというところなんですか??」
そうネネさんの横を歩きながら尋ねると
ネネさんはこちらを向いて
「これから向かう場所はメッキール王国という国だ、
もともとわたしもそこに用事があって向かっている途中だったのだ。」
と綺麗な髪を風にたなびかせながらそう教えてくれた。
今思うとこんなに綺麗な人と一緒に横に並んで歩いたことがなかったから緊張してしまう、
「メッキール王国……自分が知らないだけかもしれないけど、やっぱり地球にはそんな場所なかったよね……」
気がつくという小声で
ボソボソとつぶやいてしまっていた、すると
ネネさんに所々聞こえてしまっていたらしく
「何か思い出せたのかい、ナツ?」
そう尋ねられてしまった。
ヤバいっ!そう思った自分は
「いや、なにか思い出せるかなと思ったんですが、
なにも思い出せませんでした…
それよりネネさんがさっき使ってた魔法はどんな魔法なんですか?」
と話題を変えようと質問をした。
するとネネさんは丁寧に
「あれは風の魔法で自分の持っている武器に風をまとわせ威力をあげるものなのだ、
鍛錬をすれば、空気を圧縮させる事で風の刃を作り出し攻撃する事も出来るんだ、もしかしたらナツも記憶がなくなる以前は魔法を使っていたかもしれないね、魔法は誰でも勉強と鍛錬をすれば誰でも使えるようになるからね、ただ魔力の量、魔法の威力は生まれつきに影響されることが多く、鍛錬であげられる魔力量や威力には上限があるんだよ。」
そう教えてくれた。誰でも使える……かあ
自分でも使えるのかな?
いや、ネネさんも勉強や鍛錬を行わないと
使えないと言っていたし、やっぱり使えないよね……
そう思いながらも使ってみたくなるのが
異世界から来たものの宿命!!!!
ネネさんが先の様子を見てくると
自分を安全な場所に置いて
見回りをしに行ってくれたので
その間に少し試して見た、
ただ呪文は忘れてしまったので見よう見まねで……
なにを見よう見まねなのかというと、
先ほどのゴブリンとの戦いでネネさんが魔法を行使した瞬間に、ネネさんの体の中を蒼い炎が体の中心から全身に流れていた、なぜ、その蒼い炎が体の中を流れているのを見えたのかはわからないが、多分あれが魔法を使う際に消費される魔力なのだろう!
と、地球のアニメやゲームで得た
にわか知識で勝手に想像してみた。
あたりに落ちてる小枝を拾いそこに先ほどのネネさんのように魔力を集中させるイメージをしてみた、
すると、あろうことか枝の周りに高圧の圧縮された空気の刃が出来上がった。
「できた!!なんで!!」
自分でも出来たことが信じられない中
憧れであった魔法を使えたこと事による興奮が収まらなかった。
「どのくらいの威力なんだろう?」
風の刃を作り出させた以上使ってみたくなってしまった
目の前にはだだっ広い草原が広がっている
自分の身長よりも高くたくましく育っている草に向かって一振り、少しだけ力を込めて振ってみた、
「えいっ!」
「ズドン!!!」
自分が振り抜いた風の刃は、大気を震わせながら
半径200m位先の草たちを一斉に刈り取ってしまった。
いたずらをしてやり過ぎてしまった子供のように
手に握っている小枝を放り捨て、
全身に冷や汗をかきながら
ネネさんが向かった方向に
ネネさんにバレないように何食わぬ顔で走った。