表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/32

5-初めての異世界バザール

※叔父様とお買い物に行くことになりました。

※今回ちょっとしたイラスト付きです。

※本日2回目の投稿です。

 さて、ついにやってきました。この世界に転生してから初めて、露天商が立ち並ぶ活気に満ちたバザールに!

 もうね、ワクワクが止まりません。ろくに外出なんてしてこなかったので、自分で直接商品を見てお買い物なんてした事がありませんでしたからね。まったく、何処のお貴族様か引き篭もりだよって…ああ、どっちもでした。


 まあ、それはさておき。叔父様に頼んでバザールを見学させて貰うことになった私の目の前には、食材から武器、工芸品など見たこともないような商品が沢山並んでいます。


 干し肉や燻製肉がぶら下げられた店や、日本の屋台のようにひとつの料理に特化して販売している店。ドワーフが直接売り子もしているちょっとお高い武器の店。手作り感溢れるぬいぐるみや木彫りのおもちゃが売られている店には子供が集まっていて、色々なアクセサリーが売られている店では若い女性たちが値踏みをしています。


 面白いものだと、檻に入れられた動物が売られている店や、ランプのような取っ手が付けられた鉱石を売っている店もあります。ペットや飾りでしょうか。


「ノエルはこういうところに来るのは初めてかい?領都にはこういう出店は少ないからね」


 私がきょろきょろしながら色々と興味を引かれていると、叔父様がそう訊ねてきました。


 …叔父様、その通りと言うか…ろくに屋敷の外に出たことがないので、実は領都にどんなお店があるのかも知りませんでした。世間知らずでごめんなさい。


「はい。バザールとはこんなに活気があるものだったのですね。あの、叔父様あれはなんですか?」

「あれかい?あれは妖精石フェアリルストーンのランプだね。妖精石は暗くなると光り始めるから、机上灯くらいには使えるのさ。」

「へぇ…」

「もっとも、あれくらい大きなものだとなかなかでないし、少々値が張るのだが。まあ、あそこまで大きいと持ち運びに不便だから、あれは飾りのようなものだね。」

 

 私が指を指すと、叔父様は説明をしてくださいました。


 なるほど、あれは妖精石というんですね。今は日中なので光っては居ませんが、向こうの世界ではランプの代わりになるくらい光る石なんて存在しませんでしたから、ちょっと興味があります。


 叔父様がそのまま妖精石の売っている店に立ち寄って商品を見始めたので、私も横に並んでしげしげと石を観察することにしました。


 色合いは、青っぽいものから赤っぽいもの、緑っぽいものや紫などが縞々を描いているものまで様々。水晶のように透き通っているものがほとんどで、なんとなく蛍石フローライトに似ているなあと思います。


 大きさも様々で、ペンダントトップや指輪などのアクセサリーになっている小さめのものや、ランプに加工されている中くらいや特大サイズものまで。私が一番最初に目に留めた特大ランプは、お店の看板のようなものだったようですが。


 商品を見ていると、ふと、木箱の上に無造作に置かれた無加工らしき石に目が留まりました。濃い青から、淡いクリアブルーのグラデーションが綺麗な石です。


挿絵(By みてみん)


 原石そのものといった素朴な風合いで、飾らない美しさとでもいうのでしょうか。光る光らないはこの際置いておいても、素敵だなぁと思えてしまいます。


「お嬢さん、何か気に入ったのかい?」

「あ、いや、その、えっと」


 思わず見入っていると、店のおじさんがニコニコしながら声を掛けていました。きっと売れるかもしれないと思ったのでしょう。


 でも私は、自分で自由に使っていいお金なんて持ち歩いている訳がありません。そもそもこれがどれくらいの価値のものなのか、果たして安いのかなんていうのもチンプンカンプンです。

 うーむ、これは後でセドリックにお金の価値とか相場とか教えて貰う必要がありますね…。


 そんなこんなでしどろもどろになっていると、叔父様がどれかな?と覗き込んできました。


「ノエル、折角だから私からプレゼントしよう。どれがいいんだい?」

「え、でも…」

「遠慮なんてしなくていい。妖精石はお守りに持つこともあるものだからね。血の繋がった家族から、旅のお守りを渡すのは自然なことだろう?」

「お守り、ですか」

「そうだ。道中はこれからまだ長い。惹かれたものがあるなら、持っておいてもいいと思う。それはノエルを守ってくれるかもしれないから」


 遠慮しようと思っていたのに、そんな風に押し切られてしまいました。これかな?と指を指され、頷くと、叔父様は銀貨二枚をお店のおじさんに渡します。フムフム、銀貨一枚で1,000ゼタなんですね。少しは勉強になりました。

 お金を受け取ったおじさんは器用に革紐を石に括り付けたあと、小さな皮袋を被せて私に手渡してくれました。


「2,000ゼタ、確かに頂戴いたしました。このくらいの大きさがあれば、夜の足元を照らす明りくらいにはなるでしょう。それからお嬢さん、妖精石に宿る力は、気に入った持ち主に加護を与えるといいます。石の加護がお嬢さんにありますように」


 妖精石を買った後は、気になる店を覗きながらバザールを楽しみました。


 途中、斜め掛けの革鞄に一目惚れしてしまったり、懐かしい味噌や醤油らしき調味料を発見して歓喜したり、美味しそうなにおいの誘惑に負けたりして、叔父様に笑われましたが。


 何でも貴族の令嬢たちは普通、こういった場所に居たがらないか、屋台で物を買って食べようとはしないんだとか。まあ、普通そうなんでしょうね。


 でも、叔父様は私に付き合って一緒に買い食いしてくれたり、味噌を味見して離さなくなった私を見て自分の分までお買い上げしてくれたり、貴族なのに安い買い物だなぁなんて言いながら色々買い与えてくれました。主に食べ物を。


 使用人たちには内緒だと言う叔父様の目は、昔良く遊んでくれた時のように、いたずらっ子のような色を浮かべていたのが印象的です。


 確かに、セドリックなんかに知られた暁には、お二人とも貴族としての自覚が足りませんとかお小言を言われそうな気がしてなりません。そう考えると、何で叔父様が使用人を連れて来なかったのか分かったような気がします。つまり、叔父様も遊びたかったんですね!


 それにしても、バザールで楽しんでいる時、事あるごとに――特に美味しく食べ物を頂いているときなどに――叔父様が頭を撫でてきたのですがなんだったんでしょう。

 たまにノエルは子犬みたいだなぁとか呟いていた気がするんですけど、聞こえなかったことにしておきます。子犬って…なんだか餌付けされてる感半端ないじゃないですか。あれでしょうか、これは案に私の黒歴史が響いているだけなんでしょうか。



 さて。叔父様のおかげで私の新しい肩掛け鞄が、綺麗な飴やらクッキーやら調味料やらで一杯になったころ――あ、荷物は叔父様が持ってくれています――私は、ペットとして売られている動物たちをモフモフしたりして楽しんでいました。


 もうね、可愛いんですよ。犬や猫、鳥なんかは勿論のこと、毛玉にくりくりお目々が付いている毬藻っぽい謎生物とか。

 因みにお店の人に聞いたら、スライム系統の魔物で、ダスタースライムというらしいです。なんでも、部屋の隅っこに溜まった塵などのゴミを掃除してくれるらしく、忙しい主婦に人気なんだとか。日本で流行っていたお掃除ロボットみたいですね。


 貴族宅は使用人さんたちが綺麗にしてくれるので、ほぼ埃とは無縁なんですけど、可愛いからいつかは飼ってみたいです。そのときは勿論ルンバと名付ける事にしましょう。あ、スーモとかモリゾーとかキッコロでも可ですが。


 あまりに可愛くて時間を忘れてモフってしまい、そんなに気に入ったのなら買おうかと叔父様に聞かれてしまいましたが、流石にお断りさせていただきました。

 勿論、ものすっごく後ろ髪は引かれるんですけど、無責任に生き物を旅に連れて行けないですしね。


 さよならルンバたん…!だめよ、そんなつぶらなお目々で、まるで仲間になりたそうにこっちを見てもっ!くぅっそんなモフモフにあがらえる訳がないのは分かっているでしょう、この小悪魔ちゃんめ。



 …結局その日は、夕方になるまでモフモフたちから離れられずに、叔父様に生暖かい視線を送られることになるのでした。

読んでくださりありがとうございます!通貨が出てきたので、明日あたりにそのあたりの設定の覚書を投稿する予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ