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11-いざ合流地点へ

今週もよろしくお願い致します!(*´ω`*)

 ひょんな事から、盗賊兄妹にお世話になることになった私は、その晩妹さんと一緒に休むことになりました。兄貴さんは、見張りをしてくれるそうです。途中交代するにしても、同性のほうが安心して体を休める気になるだろうという気遣いみたいです。…正直、兄貴さんのほうが女性っぽいのですがね。

 横になりながら、このちょっぴりお人好しというか世話焼きな兄妹が本当に盗賊なのかな?と首を傾げたくなります。盗賊ならもっとこう、情け容赦ないというか、命の危険を感じそうなものですが、この二人はもっと、もう少し人道的な気がするというかなんと言うか。

 死にたくないとか何とかで私を保護してくれた状況は、腫れ物に触らないように気をつけているだけなのかもしれませんけど、とても気になります。


「あの、本当に盗賊さんなんですか?」

「ん?ああ、そうだよ。なんだ、怖いか?安心しなよ、アタシらは君をどうこうするつもりは無いからね」

「なんでですか?」

「いや、そりゃ、あれだ。盗賊が此処の領主に目ぇつけられたら、やばいからだよ」

「やばいというのは、捕まるってことですか?」

「まぁ、そうだな。それから、高確率で物理的に死ぬ」


 妹さんは、首に手をちょんと当てました。…死刑確定なんですか、そうなんですね。


「では、何故盗賊をしているのですか?捕まったら死ぬかもしれないのでしょう?」

「ああ、それな…仕方なかったんだよ。アタシらはかれこれ五年盗賊やってんだけどな…」


 妹さん――サーシャさんというらしい――は、横になったまま話してくれました。今から五年前。終戦から一年程経ったころ、サーシャさんとレトさんは盗賊として生きることを余儀なくされたそうです。

 サーシャさんたちはあの戦争中に大黒柱を無くし、母親と細々と暮らしていたそうです。あの頃はよくあった話ではありますが、女手ひとつで子供二人を養っていくことは本当に大変なことでした。

 戦争中で充分な食事もとれず、働けど働けど暮らしは良くならず。身を粉にして働いていた母親は無理が祟って病気になってしまったそうです。

 母親の薬を手に入れるために兄妹は手分けをして働こうとしましたが、どこも自分のところで手一杯。仕事を見つけることが出来ませんでした。そして借金が増え、二人はスリや万引きなどの犯罪に手を染めなければ生きていけなかったとのこと。

 そして、終戦から一年程経ったある日、母親が亡くなり、それを切っ掛けに地上げ屋が土地などを奪っていき、足りない借金のかたとして二人を奴隷として売り払おうとしたそうです。

 二人は追っ手を避けて町から逃げ出し、転々と渡り歩きました。盗みを働きながら過ごしているうちにお尋ね者となり、現在に至るそうです。武器や防具はモンスターに敗れた冒険者のものを拝借したものが殆どとのことでした。


「言い訳じゃねえけどよ、アタシらはモンスターは殺してきたけど、まだ人間は殺っちゃいねぇからな?人間は不意討ちで荷物や馬を奪うぐらいでさ」

「…よく反撃を受けずに生きてこられましたね」

「まったく受けなかったわけじゃないけど、アタシらには頼れる足がいるからなんとかなってる」

「頼れる足、ですか?」

「ああ。明日乗せてやるよ。あいつ等の足にかかれば、ローゼンベルクだって遠くねえぜ。」


 不意打ちしても反撃されたら無事じゃないだろうなと思ったのですが、大丈夫だった理由も、それに対する自信というか信頼もあったようです。きっと、足の速い生き物なんでしょう、サーシャさんは自慢げに語ってくださいます。


「へぇ…楽しみです………あふ…」

「ん、喋り過ぎたな。子供はもう寝とけよな」


 疲れてあくびが出てしまったのを聞いたサーシャさんは、そこで話を切り上げました。若干というか、ナチュラルに子供扱いされてしまいます。…まあ、童顔なのは認めますけどね…。

 身長も、この国の平均より低いから仕方ないんでしょうけど、こう、なんというかモヤッとします。緑のイガイガボールがあるのなら、『モヤッと』という効果音と共に投げつけてやりたいです。


「…コレでも十六歳なんですけど」

「は?まじで?アタシと一つしか違わねぇの?!精々行ってて十四くらいかと思った」


 だと思いましたよ。そんな対応だと思ってましたよ。行ってて十四くらいってことは、それ以下だと思っていたんですかね。

 そりゃあ貴族には一回り以上離れた適齢期前の幼妻を娶るような方もおりますがね?これでも、これでも結婚適齢期にはなってますから!日本でも一応は結婚が認められる年齢ですから!!!ちょぴっと歳は離れているかもしれませんが、まだ常識の範囲ですから!光源氏さんとは断じて違いますから!…多分。


 ちなみに私が年齢暴露したことで、盗賊兄妹の年齢が十九歳と十七歳だということがわかりましたが、割とどうでもいい情報なので、そのまま不貞寝しましたよ。




 翌朝、目が覚めると既に二人は起きていて、昨日の残りのスープに米を足したリゾットを温めていました。いい匂いです。


「おはようございます」

「起きたか。とりあえずそこ座れ」

「ほい朝飯。これ食ったらすぐに出発するかんな」

「はい、わかりました。頂きます」


 兄妹揃って世話焼きさんですね、盗賊なのに。なんとなくなんですけど、この二人をこのまま盗賊にさせておいたら、スラムの孤児とかに懐かれて、結構大きな盗賊団に成長しそうだなぁとか思ってしまいます。それってやっぱり面倒なことになりますよね。後でセドリックにでも相談することにしましょう。


 朝食を終えるといよいよ出発です。兄貴さんが指笛を吹くと、どこからともかく、大きな何かが駆けて来る足音が聞こえてきました。


「くけけ~!!!」

「くぇええ!!!」

「うわっ!きょ、恐竜!?」


 暫くして姿を表したのは、まさしく恐竜といった見た目の生き物でした。羽毛が生えた大きな二足歩行の爬虫類的な風貌をしています。ええと、なんとなく前世の兄に付き合わさてプレイした、某ハンターゲームの鳥竜種マッ○ォさんに似た雰囲気をしているような気がします。…うろ覚えですけど。

 そんな恐竜チックな生き物が突然茂みから飛び出してきたもので、正直かなりビビりました。飛び出してきたあとは盗賊兄妹さんに擦り寄っていたので、これが自慢の足とやらなんだなと理解しましたけども。


「おどろかせたか?」

「え、ええ…この生き物は?」

「こいつらはムブニ。場所によっちゃ駆竜くりゅうって呼ぶこともある生き物だ」

「地味な方がメスで、少し派手な方がオスな。ちなみにこいつらは魔獣じゃないぜ」

「魔獣じゃないんですか?」

「ああ、こいつらはそこらにいるトカゲや獣と変わらない。人間の気配を察知すれば逃げるし、足は素早く発達しているが、魔獣と違ってマナを操れないからな」


 魔獣に分類される生き物は、魔法の使用の有無に限らず、マナを体内に循環させるなり纏うなりして身体能力を向上させていたりするのだそうです。だから大きさに見合わずタフだったり攻撃力が高かったりするのだとか。勉強になります。

 ちなみにこのムブニは森などに生息していて、植物や蟲などを食べているそうです。走ることに特化した進化を遂げた生き物と言う観点から見ると、ダチョウに近いものを感じますね。


 さて、番いのムブニに鞍をつけて荷物入れにカバンとルンバたんを入れたら、あとは乗るだけです。

 馬よりも背中が高い位置にあるので一苦労しそうだなと思ったのですが、サーシャさんが背中をポンポン叩くと地面に伏せてくれたので簡単に乗ることができました。

 ただ、鞍の後ろに乗った兄貴さんが手綱を引いて立たせたとき、急に目線がかなり高くなったので、思わず悲鳴を上げてしまいましたが。


挿絵(By みてみん)


 ムブニ達は木々の間を縫っているのに、まるで障害物がないような軽やかさで素早く走ります。時速で言うと50キロ以上は出ているでしょうか。とても速いです。

 正直、こんな障害物の多い森のなかでこれほどのスピードを出されると、打つかるんじゃないかとヒヤヒヤするよりも、ビュンビュン過ぎ去っていく景色に目が回って酔いそうになります。倒木とかもジャンプして避けたりするので上下運動も凄いですしね…。

 本当は移動中に、あとどれくらいで着くのかとか聞こうかと思っていたりもしたのですが、そんな感じだったので、かなりグロッキーな状態で話す気力も皆無でした。兄貴さんたちはたまに話していたりしたのですが、慣れなんですかね…。私からすると、絶叫マシンで落ちながらおしゃべりしてる猛者にしか見えません。


 それから何度か休憩を――グロッキーな私を気遣って――挟みつつ、日が傾き始めた頃、少し先に町らしいものが見え始めました。どうやらあそこがハイネストの町のようです。あと30分もあれば着くでしょうか。

 その時です、突然ルブニたちが急ブレーキをかけるように止まりました。


「くけぇえ!!」

「くけけけけ!!!」

「モンスターか!?」


 威嚇するようなルブニの鳴き声に、兄貴さんたちが緊張したように身構え、ククリナイフに手をかけました。私もルブニ達の視線の先を見ると、確かに何かがこちらに凄い速さで近づいてくるのが見えます。

 町までもう少しというところで戦闘になるのでしょうか。私もナイフに手を添えて、固唾を呑んで身構えます。それにしても、先程から、何かがどんどん大きな音で聞こえ始めているのですが何でしょう。


「…ぉ……ぉぉ……!!!!」


 音と共に近づいてくるそれは、どうやら人型をしているようです。


「うぉおおぉおおぉおおおおじょおおおおさぁああまああぁあぁあああああああ!!!!」


 …え?よく聞くとお嬢様って言ってます?ごしごしと目をこすって、もう一度目を凝らしてみます。


「…って…セドリックぅうぅうう!??!?」


 嘘ぉおぉ!?お前かよおぉおおおお!?!?モンスターかと思ったって言うか、走るの速すぎでしょぉおお?!


「し、知り合いなのか?」


 心のなかで色々絶叫していたのですが、引きつった顔で聞いてくる兄貴さんの声で引き戻されました。………。思わず現実から目を逸らしたくなった私は悪く無いと思います。いや、あれ、普通に考えて人間離れしすぎているし身内と思われたくないですよね?

気がついたらセドリックが人間離れしていた件。こんなはずじゃなかったんですが。

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