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8-絶賛遭難中。野営?いいえ、野宿です

はじめに投稿してから今日で丸1ヶ月。

と、いうことで今週二回目の投稿です。

本日はいつもよりイラスト多目に描いてみました。

そろそろドラゴンのイラストが描きたいのに話の流れ的にまだまだ出てこないというこのもどかしさ。

と、いうのはおいて置きまして、まだまだ旦那様の元に辿りつかない主人公の道中を見守っていただけると幸いです。

 バウンドボアに追われ、小さな滝がある泉のような所に落ちた私は、絶賛水中で格闘しています。

 水面に打ち付けられた体は痛みを伴い、慣れない水の温度は刺すように冷たく、体温を奪っていくように感じられました。しかも、高い場所から落ちてきた勢いはまだ健在で、どんどん私を水底のほうへ容赦なく沈めていきます。

 それに逆らって水を掻き、水面に上がろうとしても、水を吸った衣服は重く、スカートはまるで私を邪魔するかのように足に纏わり付いてきて思い通りにいきません。

 こんなことなら、前世で行った着衣水泳の授業を真面目に受けておくんだったと思いますが、もう後の祭りと言いますか…。流石に二十年近く前のことなので覚えていたほうが奇跡かと思われます。


 そんなことを考えながら、そろそろ息を止めるのにも限界が近付いてきたとき、私の体は水底にたどり着きました。無我夢中で水底をけり、光の差す水面を目指して平泳ぎのように水を掻き分けながら進みます。


「けほっこほっ!!」


 水面から顔を出して、思い切り息を吸い込みます。空気と一緒に水も入ってきてむせ込んでしまいましたが、何とか持ち直して自分が泉のどの辺りにいるのか確認する余裕くらいは出来るようになりました。

 一番短い距離で岸にたどり着けそうな方向に泳ぎ、ようやく岸に上がることが出来てホッと胸を撫で下ろしました。…それにしても、いくら水が飲みたいと思っていたからって、これはないですよね…。


 さて、如何に疲れたからといって、このまま濡れ鼠のままでいたら余計に体力を奪われてしまうのは目に見ています。火も焚けなくて温まれないし、湯を沸かすことも出来ませんが、服さえ乾けば少しは違うはずです。

 私は、人もいないので思い切って服を脱ぎ、シミーズとドロワーズの下着姿のまま、脱いだ服を絞って手ごろな木に干します。本当はそのシミーズなども干したいところなのですが、流石にそれは諦めて、ぎゅっと水気を切るだけに留めました。

 不幸中の幸いは、山の中で少々涼しいとはいえ、夏なので放っておけば直ぐにでも乾きそうなことでしょうか。


挿絵(By みてみん)



 日が暮れた頃、生乾き程度には乾いた服を着直した私は、少しは安全に休める場所を探して泉の付近を歩いていました。ルンバたんは現在、私の肩に乗っています。

 歩き回るにあたり、飴玉の入っていた瓶に泉の水を入れ、叔父様が買ってくれたドワーフ製の刃渡り十五センチメートルほどのナイフを直ぐに取り出せるようにしておきました。戦闘経験などは皆無ですが、直ぐに出せるようにしておけば咄嗟のときに役に立つかもしれませんしね。

 煮沸していない水を飲むのは危ないかもしれませんが、脱水症状を起こすよりはと思いますし、湧き水みたいに綺麗なので多分大丈夫だろうということにしておきます。


「あの木のうろは…いや、流石に狭くて入れないか…」


 現在手元には、無いよりはまし程度に足元を照らす妖精石をぶら下げていますが、正直何が出てくるか分からずおっかなびっくり進んでいる状態です。

 泉の付近を中心に探しているのは、いざという時に飲み水を補充しやすいようになのですが、なかなか思うように見つかるものではありません。まして、昼間の視界ならともかく、日暮れの森を薄明かりを頼りに探すとなると、見つかる気がしないのもまた事実です。

 それでも諦めずに探索を続けられるのは、ひとえに肩に感じるルンバたんの存在があるからでしょうか。別におしゃべりが出来たりするわけでもないですが、気を許せる存在が近くにいるのといないのとでは、心細さが違いますから。


「いっそのこと、枝とか蔓で簡易的な隠れ場所を作ったほうが早いかも知れないけど…それだけじゃ魔獣に見つかったら一撃で壊されるだろうし…せめて熊が入り込めないような入り口の洞窟でもあればいいんだけど…。」


 時計を持っていないので正確な時間は分かりませんが、かれこれ体感時間で二時間ほど歩き回ったように思います。闇雲に歩き回っても、余計な体力を使うだけになるので、そろそろ諦めて少しでも体を休めるように考えなければいけないかもしれません。


 そのときでした。少し先の木々の向こうに、なにやら光が舞っているのが見えました。蛍火のようにも、手に持っている妖精石の光にも見える、その光。モンスターか何かでしょうか?

 もしかしたら、アンコウのように光で獲物をおびき寄せようとしているモンスターかもしれません。でも、不思議とあれは大丈夫だという感じがしました。いや、それもモンスターの作戦なのかもしれませんが、ゆっくり近寄れば大丈夫と自分に言い聞かせて、光のほうに行ってみることにしました。



挿絵(By みてみん)



「きれい…」


 果たしてこれはなんでしょうか。妖精石や蛍のように光っている本体も無ければ、モンスターでもないようです。幽霊やお化けとも、また違うと思います。自然そのものの雰囲気と温かな気配を持っているので、強いて言うなら、精霊というやつかもしれません。

 思わず見とれていると、精霊のような光はすうっと漂っていき、集まったかと思うと消えていきました。もっと見ていたかったのですが、残念です。


 と、突然ルンバたんが肩から飛び降りて、光の消えた辺りに向っていきました。どうしたんでしょうか?


「ぴるるる」


 ルンバたんは何かを見つけたのか、触手を使っておいでおいでと手招きしています。…この場合、触手なので触手招きでしょうか…?いや、今はそんなくだらないことを考えるより、ルンバたんが何を見つけたのかを確認するのが先でしたね。

 ひょいっと妖精石を掲げてそちらを覗くと、そこには四つん這いになれば入れるくらいの穴が開いていました。光を翳して中を見ても何もいる様子はありませんし、そこそこ広そうに見えます。

 もし巣穴だった場所でも、もう長いこと使われてはいないような雰囲気が漂っているので、ここならば少しは落ち着いて休めるかもしれません。


 私は思い切って、中に入って見ることにしました。




 中に入って見ると思ったより空間は広く、進んでいるときは頭を下げたり屈んだりする必要はありましたが、座っている分には頭を打つ事もありませんでした。


 奥まったところで休むことに決め、鞄の中から食料を取り出します。水没してしまったおかげで、食べられそうなものは減ってしまいましたが、それでもないよりはマシです。

 いったい何日でこの遭難状態を抜けられるか分からないので、まだマシそうな物は後に回し、濡れてべしゃべしゃになっていたカステラ玉のようなお菓子を潰して、お粥のように流し込んで終わりにします。ちょっとひもじいですが、少しはお腹の足しになってくれたので良しとしましょう。


 食料を口にした後は、することもありません。精々入り口のほうに注意を向けながら体を休めるくらいなものです。ともすると、静寂と暗闇を色濃く感じるもので、心細さが急に襲ってくるものです。孤独感に耐えられえなくなって、私はシンとした洞穴の中で膝を抱えこみました。


 そういえば、この心細さは何かに似ています。ああ、そうです。悪戯をして納戸に一人閉じ込められたときに感じた心細さに似ているのかもしれません。

 閉じ込められても初めの頃は意外と平気で、暗闇の中、納戸にあるもので遊び始めるくらいの気持ちでいるのに、ふとした瞬間に心細さが襲ってくるのです。まるで、暗闇から恐ろしい何かが出てくるんじゃないだろうかとか、このまま真っ暗な世界に閉じ込められて二度と出れなくなるんじゃないかとか、このまま忘れられてしまうんじゃないだろうかとか。頭の中で止め処も無く溢れてくる怖い想像に震えて、気がつけば納戸の扉に縋っているような、あの心細さに。


「おかあさん…」


 気付けば口に出して呼んでいたのは、果たしてどちらの母だったのでしょう。どちらともかもしれません。幼い日、私の中ではどちらも絶対的な信頼を置ける人物だったのは間違いないのですから。


 ふと、何かが頭をなでるのを感じました。


 はっとして見ると、ルンバたんが触手を伸ばして、私をなでてくれていました。どうやら心配してくれていたみたいです。私はルンバたんを抱き上げて、その体をなでます。


挿絵(By みてみん)


「そうだね、ルンバたんがいるから、一人じゃなかったね」

「ぴるるるん♪」


 ルンバたんは満足そうに鳴きます。それを見ていたら、先ほどまで心を蝕んでいた心細さが、嘘みたいに消えていることに気がつきました。


「…よっし!考えてても仕方が無いから寝よっと!」


 モンスターに襲われたときはそのときです。私は嫌な想像を頭の片隅に追いやって、ルンバたんを抱きしめたままゴツゴツとした地面に体を横にするのでした。

今日もありがとうございました!



落書き風に遭難したクロノアールの現在の持ち物などを大雑把に描いて見ました。

挿絵(By みてみん)


うん、デザイン力が欲しいです。どなたか、ドレスのデザイン方法とかコツを教えてくださいませんか?


では、次回もよろしくお願いします!


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