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6 最初のローディ、そして戦友の握手

 フロアに出てきた時には既に最前列は「どう見てもPH7のファンではない」少女達と男達が占めていた。

 一列にはだいたい十五人から二十人がいる。前の柵に手を置いて待っている。

 チチチチ、とハイハットを刻む音がした。

 はっとナホコは身構える。彼女は二列目に身体をねじ込ませていた。

 PH7のために立っている客はだいたい五列くらいなものだった。その中の一列は確実にPH7のファンではない。

 どーなるのよぉ、と思いながらもナホコは機関銃の様な音で自分が撃たれる瞬間を待っていた。

 一斉にライトが点く。

 ずん、とベース音が胸にキた。ナホコは一列目の少女達が一瞬跳ね上がるのを見た。だがすぐに周囲を気にしている暇はなくなった。身体が勝手に反応してしまう。


 いつものと、違う!


 同じ曲で始まった。聞き覚えのあるHISAKAのメロディがギターの音で判る。タイセイの、そう激しくはないが正確な音がそれを知らせてくれる。なのに、いつもより身体が動く。動いてしまう!


「***!」


 そこへMAVOの声が飛び込んできた。それもいつもより、ヴォリュームがある。両肩を押さえつけられている気分だった。息苦しい。

 TEARはベースを弾きながらくるくるとステップを踏む。意識してやっているのかどうか判らないが、実に鮮やかに左右へと動き回る。長い手足のせいか、下手にちょこまかとした印象は与えない。珍しく着ている、袖無しだが長めの上着の裾がくるりと回るたびに広がる。ロングスケールのベースをやや下気味に構えて、時々それを上下させる。そのたびに胸にかかったじゃらじゃらしたネックレスやペンダントが揺れてライトの光をきらきらと反射させる。


「…か、恰好いい…」


 左隣に陣取っていたアナミの声が聞こえた気がした。

 それは右隣の面識のない少女も同様だったようで、ぼーっとしてステージ左側のベーシストを見ている。

 ―――ようやく一曲終わると、顔から汗がだらだら流れているのが判る。ちょっと待て。ナホコは気付けなかった自分に驚く。横のアナミと顔を見合わせて苦笑いする。


「元気かーっ!」


 ステージのMAVOが叫ぶ。その時「一列目」はやっと我に戻ったようだった。

 横同士と顔を見合わせて、いいな、とか目配せ、指のサインが大急ぎで交わされる。ぱっとしゃがんでバッグに手を突っ込む者もいる。


 …何かやる!


 そう思いながらもMAVOの声に捉えられて動けない自分もナホコには判る。


 どうしよう! 連中行動起こしちゃうじゃない!


「久しぶり… 少しの間だけど滅茶苦茶になれよーっ!」


 と、その時だった。

 ブー、と声が飛んだ。「一列目」だった。

 何が起こったのか、ナホコとアナミ以外の二列目以降には判らなかった。最初の声が飛んですぐ、次から次へと声が飛び、手を高くあげて親指を下に向ける集団がいたのである。

 一列目真ん中の一人は何か丸いものを持っていた。


 やめろ!


 ナホコはそれに飛びつこうとした。

 卵だ。飛びつく瞬間判った。


「何すんの!」


 だが遅かった。飛びつく寸前にそれは手を離れていた。

 遅かった!

 飛びついたその一人だけではない。「一列目」の全員が手に手に卵を持ち、それを投げだした。

 「嫌い」なバンドに攻撃を仕掛ける時には、後々のバンドの迷惑など全く考えていない。卵はモニターの背や床や、後ろのドラム付近まで飛んで弾けた。

 ナホコは自分が飛びついた一人の背にのっかってMAVOを見上げる。どうやら一つの当たり具合が悪かったらしく、すらりとした腕には黄身が、そして白い顔に赤い筋が走っていた。

 そしてぎくっとした。

 MAVOは表情一つ動かしていない。

 ブーイングは続く。MAVOは無言でぺろりと舌を出して腕についた黄身をなめる。


「毒は入ってないじゃん」


 さらりとそんなことを言う。非常に、あっさりと。だがはっきりと、通る声で。

 ナホコは背筋に悪寒が走った。


「そんなにあたし達にキョーミがあるんだ」


 見おろす。一列目を見下げる。


「なら聴きなさい」


 MAVOは足元のモニターに片足を掛け、やや前のめりの姿勢で言い放つ。

 ナホコはその時見た。やや逆光にはなっていたが、MAVOの表情を。


 この人は何とも思っていない。


 ブーイングが止まった。

 ふっとMAVOが手を挙げる。静まった会場に、それが合図のようにカウント4が響く。


「ハレルヤ!」


 曲のタイトルを叫ぶ。それを合図に、二列目以降の客が前へ突進した。現在のこのバンドの最速の轟音ナンバーだ。HISAKAのドラムが無茶苦茶とも言える速度になる。

 彼女お得意のツインバス・ドラムがマシンガンになって客の心臓を射抜く。ベースの振動と混ざって床を空気を伝って少女達の胸をそのまま揺さぶる。

 揺さぶられた客は勝手に自分の身体が動いているのが判る。掛け合いで手を挙げ、指を突きつけるMAVOの動きに合わせて「お約束」の掛け合い文句を怒鳴る。

 叫ぶんじゃない。誰より強く、誰よりも声に気付いてほしい、そんな感覚で怒鳴るのだ。喉が痛い。終われば絶対そうなるのが判っていて、それでもやめることはできない。

 「一列目」は押し潰れそうになるのが判る。

 この連中のテンポなんて絶対にノリたくない! なのにノラないと押しつぶされる! 「一列目」は次第にこのノリに身体が動いていってしまうのを感じた。


 あ。


 ナホコはひらり、とMAVOの顔に笑いが浮かんだような気がした。そのままTEARに近寄り、肩を組んでコーラスをねだる。身長が違うから絡んでも顔が同じ位置には来ない。TEARはやや首を傾ける。


 …


 飲み込まれる。轟音の中、ナホコは思考がマヒしていくのが判る。


 あはははは。


 加速度を増していくあのドラムに頭が引きずられていくのが判る。ベースに腰がやられる。MAVOの声に頭の中が占められる。

 気付かないうちにナホコは笑っていた。


 気付くと、頭がくらくらして胸がむかむかしていた。

 やばい、酸欠だ。ナホコはゆっくりと、曲のスキをつくようにして流れてきた空調の冷たい空気を吸い込んだ。

 だらだらと全身から汗が流れる。まわりの子の体温もあって気持ち悪いくらいだ。

 四曲連続で速い曲が続いた。その間ずっとあのリズムに合わせて身体と頭を振りっぱなしだった。心臓の鼓動の速さがもの凄く速くなっている。HISAKAのバスドラムのようだった。彼女のドラムに心臓が合わせてしまったかのようだった。

 やっと思い出して左横を見るとアナミの姿がない。いつの間にか彼女は右端にいた。…よく見たら自分の位置も当初とはずいぶん違っている。

 ようやく呼吸が整った所でステージを改めて見回す。


 あれ?


 見慣れないものがあった。キーボードだった。誰が使うんだ、とナホコは首をひねる。きっと明日はこの首が回らないだろう、と思いながら。


「…結構やるじゃないの」


 MAVOはあたりを見渡して言う。「一列目」はいつの間にか後ろのファンに体当たりされ、ねじ込まれた挙げ句、後ろへと大半が押し出されていた。

 だがその中でも残った連中は居た。MAVOはその残った連中の視線が自分に向いているのを確認する。


 それでいいのよ。


 彼女は笑みを浮かべる。


 あたしの方を向かないなんて許さない。

 好きでも嫌いでもとにかくあたしの方を向きなさい。


 声はそうは言ってはいないが、そう言っているような音を発している。


「…じゃ最後の曲」


 そう言った時、MAVOのちょうど後ろの位置のHISAKAの姿がドラムから消えているのに誰もが気付いた。

 キン、と鋭い音が響いた。ピアノに良く似た音。


 あ。


 ナホコはその時やっとキーボードの意味が判った。HISAKAがそこには居た。

 2小節、ゆっくりした音が響き… そして次の瞬間、まるで彼女のドラムのような速い音が舞った。ピアノに似た音は、切ないメロディを基調にして、縦横無尽に動き回る。

 16小節、それは会場を走り回り、…不協和音が重く落ちてきた。

 ナホコは息を呑んだ。

 そして次の瞬間、今度はピアノの音が鳴った。

 ゆっくりとしたテンポで、最小限の音だけが。

 そこへベースが入る。ギターが入る。


「…」


 コトバを考えるのに、ひどく時間のかかった曲だった。ギター一本でTEARが作った例の曲だった。HISAKAはその曲を初のスローナンバーとすることにした。

 そしてどうせなら客を驚かせたい、と思ったのだ。実際客が驚いているのはHISAKAにも見えた。

 ドラムをぶっ続けで叩いた後だから、手がじんじんして、やや動きがよろしくない。だがそこは昔からやってきた人間というものである。ここでは「正確」より「はったり」の方が大事だった。

 TEARの原曲の歌メロは、TEARの歌える範囲でしかなかったので、HISAKAはそれをやや変えた。MAVOの音域の高低ぎりぎりまで使ったのだ。さすがにTEARは何じゃこりゃ、と叫んだ。だがドラマティックになったのは事実だったので、面白い、と使ってみた。

 そしてその上に乗っている歌詞は。


 わかりにくい、とTEARは言った。

 難しい単語ではないんだけど、何か奥歯にはさまっているような詞だ、と。

 そりゃそうだ、と当のMAVOは思う。そういう詞にしたかったのよ、と言って。でも、知りたい人間には判るのよ。そう付け足して。

 会場はしん、と静まっている。決して白けたムードではない。黙って音に声に詞に集中して、聴かずにはいられない、という感じの静まり方だった。


 客達はMAVOの声に捕らわれる。


 捕らわれる。


 …捕らわれた。



「…あー全く」


 機材に卵、で一番嘆いたのはタイセイだった。


「卵って時間が経つと臭ってくるんだから…」

「だから早くっ」


 トガシとイクシマ、そしてその他スタッフもPH7のメンバーもマリコさんも一斉に幕の内側で雑巾をかける。メンバーはスタッフに自分の楽器を心配しな、と言われたが。


「それにして卵とはねえ」


 HISAKAは首をぐるぐると回していた。激しい運動後は必ず整理運動、とマリコさんに厳重に言われているのだ。


「よくまあ持ってきたもんだ。一パックいくらなもんかねぇ」

「TEARさん今度来たときには美味しい卵料理をご馳走しますよ」


 スタッフと一緒に汚れた雑巾をパケツに入れて運んでいたマリコさんが言った。げ、とTEARは苦笑する。


「さっさと片付けて、今日は引き上げましょう」

「タイセイさんどーも今日はありがとうございました」

「あ、ちょっと待って」


 MAVOがマリコさんを止めた。


「何ですか?」

「さっきハルさんが女の子一人引きとめてたから」

「…ああ」


 待っててくれということか、マリコさんは納得した。


「それにあたしもDUとか見てきたいし」

「はいはい」

「あれーっMAVOちゃん、DUキョーミあったの?」


 TEARが汗と楽器を拭きながら訊ねた。


「一応」

「でもその時間はなさそうね」


 HISAKAがにっこりと笑った。関係者入り口からナホコがのぞいていた。


「タイセイさんはどうします? 薄情ですけどあたし達今日は引き上げます。トラブルの後だし、長居は無用」

「OK。でも今度全員で打ち上げしようって話があるからそれには参加してって親父が言ってたから」

「はい」


 HISAKAはうなづき、入り口のナホコを手招きした。


「他の子は?」

「あの二人はこれからが本命ですんで」

「友達見捨てちゃうのーっ? 薄情っ」


 え、とその声にナホコは目を丸くする。メイクを落としたMAVOだった。全然印象が違う。髪こそ立てたままだったが、声のトーンまで変わっている。


「…MAVOさん…? ですよね?」

「うん」


 こくん、とうなづく。本当かよ? とナホコは目を疑った。


「モノ運びするぜっ」


 TEARの声がする。機材と言っても大半が借り物だったが、ベースとドラム、キーボード、それにアンプが二台あった。手早くドラムを分解するとケースに一つ一つ詰め、それをまたどんどん階下のワゴンの中に運んでいく。


「あ、手伝います」


 ナホコははっきり言って疲れきっていた。だが、その時はそう言わずにはいられなかった。


「あ、そお? じゃお願い」


 HISAKAが言う。そういえば、とナホコは気付く。


 機材を運んでいるのはメンバーと、もう一人居る女の人(=マリコさん)だけじゃないの。


 タイセイだって手伝おうとはしない。彼は彼で次のバンドのこととか忙しくて構っている暇はない。

 そのせいかもしれないけれど、一度に重い機材を運ぼうという感じではない。細かく細かく分解して何度も何度も運んでいる。ドラムのパーツ、シンバルとスタンド、椅子だの。さすがに重いアンプだけど、タイミングを合わせて皆で。


 …人手が必要だよなあ…


 ナホコは結局スネアドラムとフロアタム、それにキーボードを運ぶべく階段を往復した。


「これで全部かな」

「そうですね」


 マリコさんが「本日の機材」という表をつけてチェックしている。


「じゃ参りましょうか」

「ほーい」


 HISAKAの号令にTEARとMAVOが手を挙げる。


「…それで…」


 HISAKAはちらり、とナホコの方を見る。


「今からあたし達はあたし達だけの打ち上げに行くけど、どお? 手伝ってくれたことだし」

「手伝いだったらいつだって!」


 反射的にそう返していた。


「こないだHISAKAさんとえ… と」

「こっちはTEAR」


 TEARの方をむいて首をひねっていたのでMAVOが助けた。


「TEARさんに会えた時に… このバンド好きって自覚して… で今日、本当に好きって… 判っちゃって…」


 ふむふむ、とHISAKAはうなづく。


「お願いしますっ! 何かお手伝いさせてください」

「ふむ」


 HISAKAはTEARとMAVOの方を見る。TEARが訊ねる。


「…高校生?」

「はい」

「いろいろ言われない? 親とか」

「…うちは、したいことをすればいいけど、その落とし前はつけろ、って家なんです」

「…と言うと?」

「夜遊びしても成績は落とすな、男と付き合っても避妊はしろ、と」

「大した親だ」


 ほお、とTEARは感心する。自分の家とこうも違うものか。


「だからもしそちらのお手伝いさせてもらえるんなら、その分向こうもがんばらなくちゃならないし、絶対に打ち上げとか行けないだろうけど…」

「…」


 HISAKAはにっこりとした。そして、ナホコの真正面に立つと、


「うちの音が好き?」

「はい」

「どうして?」

「判らないです。やっぱり。歌も曲も音も全部…それに、見えたんです」

「何が?」

「何処かの球場を一杯にしているんです」

「うちが?」

「はい」


 MAVOとTEARは顔を見合わせた。HISAKAはぽん、とナホコの肩を叩いて、


「野望持ちね」

「え」

「でもそういうのは自分のバンド作ってどうとか思わない?」

「思いません」


 即答する。


「あたしは音は作れない。だから、音を作れる人がすごく尊敬できるんです。そういう人の手伝いをしたい。そういう人達と一緒に何か作る手伝いをしたいってずっと思っていたんです」

「ずっと?」

「あ、…違う、このバンドだから、だ」


 ナホコは記憶をたどるようにつぶやく。


「ごめんなさい、PH好きになって、そういうのが形になったんです」

「…」


 TEARもMAVOも、リーダーが決めろ、と目で合図する。


「…野望持ちのお嬢さん、名前は何で言うの?」



「野望か」


 機材を積んでいるワゴン車の中でTEARはつぶやいた。

 車の運転は「呑まないことにしている」マリコさんにまかせて、HISAKAとTEARは後部座席で話していた。アルコールに弱いMAVOはHISAKAの肩に頭をのせて、すでに夢の中だった。


「嫌い?」

「いや」


 HISAKAの問いにTEARは首を振る。


「ある程度は。あんたは好きだろう?」

「判る?」

「判るさ」


 ばれたか、とHISAKAはつぶやく。


「やるからには先頭を走りたいのよ」

「先頭ねえ」

「それこそあの子が言ったんじゃないけど、とりあえず球場クラスをソールドアウトさせるバンドにならなきゃ」

「とりあえず、ね」

「もちろんそこまでにはいくつもクリアしなきゃならないことはあるけどさ」

「…バンド以外の方法ってのは考えなかった訳?」

「あたしはバンドがしたかったのよ」

「なるほど」


 そういうことか、とTEARは思った。だったらいい。


「…誤解してた。ごめん」

「何が」

「あんたがあまりにも客を動かす戦術どうの、とか好きそうだからさ、単にそれだけが目的かなと、ちょっと思ってしまったんで」

「目的じゃないわ、手段よ」

「ん」


 少し声を荒げた拍子にMAVOが目をさました。どうしたの、とねぼけまなこと気の抜けた声で訊ねる。


「何でもないわ。まだ寝てて」

「ん」


 素直にそのまままた彼女は眠りについた。HISAKAはその髪を撫でながら、


「…ものすごく伝えたいことってのがある時、あんただったらどうする? TEAR」

「伝えたいこと?」

「さしずめあたしだったらそれを表現するのは音楽よね」


 あ、そういう意味か、と納得する。


「それだったらあたしも同じさあ。ただあたしはあんたよりコトバを知らないから、音だけになってしまうけど」

「でもいくらそれを作ったところで、人が聞かなくちゃ仕方ないのよね」

「うん」

「その努力はしなくちゃならないのよ」

「…」

「それが野望ってコトバで言うなら言えばいいのよ。あたしはあたしの作ったものをたくさんの人に聞いてもらいたいの。この子の声で広げたいの。この子の声一つひらっと街で流れれば、それがPH7の曲だって誰にもすぐに判るくらいにしたいの。それだけよ。それが夢よ。でもそれを本当にするには、現実で頭を使っていかなきゃならないの」

「確かに」


 それだけ、というにはなかなか大きなものではあるが。一方、TEARは前自分のいたバンドを思い出す。


「チェインの連中はそういう野心がなかった」

「そういうことね」


 HISAKAはにっと笑った。


「最初にあんたと会った日、あんただけが浮いてたもの」

「…ちょっと待て、それじゃあんた」

「初めっからあんたは野心持ちだと思ってたわ」

「…」


 全く。TEARはがっくりと肩を落とす。


「あたしあんた好きよ」

「へ」

「あ、勘違いしないでね、そういう意味じゃないから。やっと戦友が増えた気分なのよ」

「戦友」

「そーよ」

「…そーか、戦友か」


 そう言えばそうだった。何処のバンドに入っても、そういう気分には一度もなったことがなかった。


「ん」


 気がつくとHISAKAの前にTEARは手を突き出していた。


「何」

「あらためて握手」

「ほー」


 そう言いつつもHISAKAは手を出した。結構がっしりとしてやや自分よりも体温の高い手を握りしめる。


「ギタリスト、探さなくちゃね」

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