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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第30時限目 遊歩(ゆうほ)のお時間 その16

 私が真剣な視線を風音かざね……そして、浅葱あさぎに向けると、2人共私の視線から逃れるように、視線を泳がせた。


「2人でることが駄目だめだと言う気はないよ。でも、この修学旅行は2人だけの旅行じゃない。だから、せめて同じ班員のことはもっと見てあげて」


「……」


 押し黙る2人。


 いつの間にか立ち上がっていた千華留ちかる華夜かよも、私の後ろでやっぱり黙っている。


 ……さて、どうしよう。


 ここまで引っき回したけれど、どういう落とし所に持っていくべきか、という重要なとこについては何にも考えていなかった、といういつもの話。


 伊久美いくみ姉妹に小馬鹿にされたけれど、確かに……よく考えてみると、考え無しで突っ込んでいることが少し……いや、まあまああるかな……。


 何かしなきゃ! と思って行動するのだけれど、どうしたらゴールなのかまでは考えていないから、しゃべりながら考えている感じ。


 遠巻きに私たちを見た人たちが何やら良からぬ雰囲気ふんいきだなと感じて、そそくさとこの場を離れていくのを横目に見つつ、どうしたものか……と心の中で冷や汗をかいていると。


「あの……色々な場所を撮影したい気持ちは分かります。折角せっかくの修学旅行ですから」


 先に、私の背後から千華留ちかるが落ち着いた口調で言葉を発した。


 …………あ、そうだった。


 千華留は外……というか、私とか華夜かよ以外の前だと、いつものポンコツ成分は引っ込んで、大人びたお姉さん系キャラになるんだった。


 そんなことを思いながら、千華留の言葉に耳を傾ける。


「でも、皆の思い出がバラバラなままで……お互いが嫌な感情を抱えたままで、回りたくはないです」


 そう言って、千華留が私の横を通り過ぎて、浅葱あさぎ風音かざねの前に立つ。


「ですから、一緒いっしょに楽しみましょう。……私もあのドラマは見ていたので、ここに来るの、とても楽しみだったんです」


 千華留が手を差し出すと、浅葱と風音は顔を見合わせた後、浅葱が代表で手を差し出……さず、腕を組んで尋ねた。


「……ドラマ見とったんやったら、どこのシーンが好きかくらいは言えるやろ?」


 浅葱は目をしばらくぱちくりさせてから、口元に手をやってから少し悩み。


「この場所に関するシーンであれば……直哉なおや太一たいちの両親を馬鹿にしてはっきりと言い返すシーンも好きですが、その直哉が最終話の2話前で太一と共に、太一の両親のお墓で手を合わせ、2人で犯人を見つけるとちかったシーンが好きです」


「……」


 しばらく沈黙した浅葱は「……良く分かった」と言った後。


「……それなら、ウチらは仲間や!」


 差し出したままの千華留の手をがっし! としっかりつかんで、握手あくしゅした浅葱。


「ええよな、あそこ!!」


「ええ、本当に」


「分かりますわぁ……」


 3人が強くうなずきあった後、


「それなら華夜も仲間ですね」


 と私の後ろに視線を向ける。


「なんや、工藤くどうもそうなんか。はよ言ってくれれば良かったやん!」


「……」


 多分、色々言いたいことはあるのだろうけれど。


 しばらく無言の後、自分の小さい溜息ためいきっ飛ばしながら近づいて、


「それは、お互い様」


 と苦笑しながら、華夜も輪に入っていった。


 ……あ、相変わらずなんかこう……つな渡りだったけれど、とにかくなんとかなった!


 いや、4人がなんとかしてくれたのだけれども。


 人知れず、私も溜息ためいきを地面に転がした。


「せや! じゅんはどのシーンが好きなんや? やっぱ、あのお墓に手を合わせるとこか?」


 ヤマを乗り切って油断していた私は、突然話を振られ「わひょう!?」とかいうなかなかな奇声を上げた後、


「あー……ご、ごめん。そのドラマ、見てない……」


 と答えた。


 え、この流れで!? と思われても当然で、


「マジか!? あのドラマ、全人類が見てると思っとった」


「ですわねぇ」


 と浅葱、風音両名は目を丸くしていたけれど、


小山こやまさんは転校してきてすぐの頃だったので、見ている暇もあまりなかったでしょうし」


「最初は勉強ばっかで、テレビも見てなかった。仕方がない」


 と訳知りの千華留と華夜がフォローしてくれた。


 ……ホント、少しでも見ておけば良かったかな、と思っても後の祭りだけれど。


「そんなら“全員”で写真でも撮るかー」


 そう浅葱が言ったから、


「ああ、それなら私が撮るよ」


 と私は申し出た。


 私はあのドラマを知らないし、指示された通りに写真を――


「何言っとんねん」


 ぐいっと引っ張られて、私は浅葱の隣に並ばされた。


「……え?」


 目をしばたたかせている私に、浅葱が不敵に笑う。


「“全員”言うたやろ」


「いや、それって“班員全員”じゃ?」


「いいえ」


 風音は自分のかばんから小さいのにかなり伸縮しんしゅくする三脚を取り出し、ジャッとばしてから、


「“巻き込まれた全員”ですわぁ」


 と同じく不敵に笑った。


「……そうですね」


「確かに」


 千華留と華夜も参加して……何故か4:1になっていた!


「ほらほら、文句言わんとさっさと並ぶ!」


 そうして、私は何故か違う班だというのに、浅葱班と5人で……更に、様子を見ていた正木まさきさんたちがもどってきて、8人組で写真を撮った。


 ……うん、でも楽しかったからいいか。


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