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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第6時限目 内緒のお時間 その2

「鍵掛けた」


「じゃあ、お願いします」


「はい」


 園村さんは工藤さんの言葉に頷き、園村さんの言葉に頷く私は、制服の上を脱いでブラのみになる。


「ちゃんとブラ付けてる」


「そりゃあ……ね」


 工藤さんの言葉に私が苦笑しながら答える。まだ2ヶ月くらいしか経っていないのに、少しずつではあるけれどこの格好に慣れ始めている自分が怖いけれど、慣れずにビクビクしているのもそれはそれで不安なので、良いことだとしよう。ほら、中居さんも言っていたし。


「じゃあ、頂きます」


 と園村さんがじっくり私の首元を舐めてから歯を立てる。ざくり、という鈍い音がするけれども、特に痛みは無い。


「……んっく、んっく、んっく」


 私の血を飲み込む音が耳元で響いているのが生々しい。既にこんなことを数回は行っているけれども、ブラ装着と違ってこっちは未だにちっとも慣れないし、慣れたくもない。いや、慣れるのは人間として駄目だと思う……ってそこまで大げさでもないけれど。


 こうやって手芸部に参加するときは、園村さんの吸血行為が必要なとき。既にこれで3回目……いや、最初のを入れると4回目になると思う。


 園村さんが寮生なら寮内で致す……いや、やっぱり響きが悪いので言い直そう、園村さんが寮生なら寮内で吸血してもらえば良いのだけど、


「私の家、実は学校の隣なんですよ。だから、寮には入れないです、えっへん」


 と豊か過ぎる胸を張っての発言。つまり、正木さんの家の逆側?


 まさか学校の両側に住んでいる娘さんが同時にクラスに入ってくるとは誰が予想しようか……いや、そもそもあまり気にしないかな。


 そんなこんなで、前にも連れてこられた部室棟の空き部屋を使い、ひっそりとこうして吸血パーティーが開催される。……いや、パーティーと言いながら吸血する人、される人はそれぞれ1人なのだけど。


「…………んはぁぁぁぁぁぁぁっ、あいたっ」


 私の耳元辺りでごぅん! と結構な鈍い音がした。


「千華留、今女子高生がしちゃいけない顔してた」


「そ、そんなに醜い顔してた?」


「そっち系じゃない」


「どっち系!?」


 園村さんの困惑ボイスに血を吸われている私自身も気になってきた。でも、何となく響く艶やかな声で少しだけどういう状況か分からないこともない。


「次やったら首筋にチョップ」


「それは痛いからやめて!?」


「あのー……まだ吸いますか?」


「あ、ああ、ごめんなさい。もう少し……」


 首元を露出させたままで眉をハの字にしていた私に謝罪を入れつつ、再度歯を立てて血をごくんごくんと喉を鳴らしながら飲む園村さん。


「……んは、いたっ。ま、まだ大丈夫じゃないの!?」


 宣言通りに首筋に入れられたのかは視界の都合上見えないけれど、とりあえずまた吸血が中断された園村さんは不満を口にする。


「半分アウト」


「半分!?」


 工藤さんと園村さんがそんなやり取りをしているのは聞こえるけれど、私も徐々に感覚が朦朧としてきて、頭の中をぼんやりが駆け巡っている。


「……準、大丈夫?」


「…………ん? ああ、大丈夫」


「あああ、ごめんなさい。ま、また飲み過ぎてしまったみたいです」


 しょぼりん、とこうべを垂れる園村さんに私は淡く笑って答える。


「いえ、大丈夫ですよ」


 かぶりを振りながら私は緩めた制服の首周りを正すと、園村さんが人差し指で口元を綺麗に整えながら、


「私は後輩の面倒もあるので、申し訳ないですが早めに戻りますね。華夜、悪いけど……」


 と言い掛けると、


「大丈夫」


 すかさず工藤さんが答える。この辺りはやはり親友同士、阿吽の呼吸だなあ。


「ありがとう。じゃあ、小山さんまた後で」


「ええ、分かりました」


 園村さんが部屋を出て、扉を閉めたのを確認してから、私は少しソファで横になる。


「準、大丈夫?」


「うん、大丈夫。むしろ、工藤さんが今まで良く耐えてきたと思うよ」


 園村さんの血を飲む量が多いのかどうかは、吸血鬼の他の知り合いが居るわけではないから分からないけれど、やはり首元近くから飲むことで脳に行く血が減ることからか、毎回血を吸われる度に意識が緩やかに薄ぼんやりとしてしまう。


「これ、採血みたいに首じゃなくて手とか腕とかでは駄目なのかな」


「前に二の腕でやったら15分くらい掛かった」


「そんなに!?」


 さっきので2、3分くらいだから、いくらなんでも掛かり過ぎだと思うけれど。


「千華留の唾液で血が止まりやすくなっているから、手とか足みたいに血が簡単に止められるレベルの場所じゃ駄目。止血失敗したら死ぬくらいの場所じゃないと」


「し、死ぬの!?」


「多分」


 真顔で答えるから、工藤さんの場合は冗談なのか本気なのか分からないけれど、確かにちゃんと血の流れる量をコントロールしてくれないと自分の血の噴水を見ることになる気はする。それは怖い。


「太い血管かあ……それも血の出る量を考えると多分動脈じゃないと駄目だよね。あれ、でも二の腕とかって大きな動脈通ってる気がするけれど」


「通ってても、噛みにくい」


「あ、そっか。噛んで血を出す事ができないと駄目なんだ」


 太い血管を歯で傷つけて血を出し、かつ出て来る量を唾液で調整する……なんか言っているだけで結構大変な作業な気がする。


「……もう立てる?」


「あ、うん、大丈夫。戻ろうか」


 工藤さんの言葉に、私は頷いて立ち上がる。ほんの少しだけ立ちくらみがしたけれど、何とか倒れずには立ち上がれた。


 私と工藤さんは部屋を出ると、目の前をふらりと黒猫が通り掛かる。縁起がどうこう、と思うよりも先に。


「あれ、ノワールちゃん?」


 前よりも更にお腹の大きくなったノワールちゃんが私たちの前を通り、階段を下りていく。


「何処行くんだろう」


 ふらりふらりと尻尾を左右に振りながら歩いていったノワールちゃんを見送りながら私が疑問を何気なく口にすると、


「多分家庭科部」


 と隣から答えが返ってきた。


「家庭科部?」


「そう。多分、餌貰ってる」


「そうなんだ。うーん、人が食べるものは塩分が高いからあまりあげちゃ駄目なんだけど」


「大丈夫、猫用の餌を常備してるって言ってた」


「そこまでしてるの?」


「うん、寮長さんが」


「……益田さんが?」


 何故に? という疑問が湧いてきたけれど、その疑問にも工藤さんは答えてくれる。


「そう。家庭科部の顧問は別に居るけど、料理上手だから寮長さんがたまに特別顧問として行ってる」


「……初めて知った」


 何というか、初回のイメージが強かったからいい加減なタイプだと思っていたけれど、運動も出来るし、料理も出来るし、案外超人なのかも?


 それはそれとして、ノワールちゃんが太ってきた原因もこれで分かった。なるほど、みゃーちゃん以外も餌をあげてたんだ。テオも気をつけないと。


2017/10/25 誤字修正

「少しだけどういう状況下分からないこともない。」

「少しだけどういう状況か分からないこともない。」

漢字変換ミスです。


「みゃーちゃん以外にも餌をあげてたんだ」

「みゃーちゃん以外も餌をあげてたんだ」

こちらは頭の中で「餌をあげる」と「餌をもらう」がごっちゃになっていたのが原因ですね。


ご指摘いただきましたので、修正しました。

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