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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第30時限目 遊歩(ゆうほ)のお時間 その7

「うあー……つっかれたー……」


 大きなびをしながら、真帆まほがバスを下りて開口一番かいこういちばん溜息混ためいきまじりに言葉をらした。


「結構、かったねー」


 うへー、と疲れを隠せない都紀子ときこがバスのステップから下りてきて同意する。


「でも、ここが終われば、後は自由時間ですね」


 疲労の色はあるものの、ほっと一息の正木まさきさん。


「ですね。この時間だと……自由時間になったら、まず食事に行った方がいいかも」


 私が腕時計に視線を落としてからそう言うと、3人もスマホで時間を確認した。


「あー、確かに。12時になってからだと結構混むし」


「席は多いって書いてあったけど、この神社でも他の学校のバス停まってるしねー」


 そんな話をしながら、また全クラスで集合。


 そして、こちらもまた、代表で咲野さきの先生が色々説明しているけれど、基本的には以下の内容。


 ここは学問の神様をまつっているところ。


 全員のお参りが終わって、再度集合した後に自由行動だから、自分の参拝さんぱいが終わったからといって、勝手に神社を離れないこと。


 信教の問題とかでお参りしたくない子は申し出れば参拝しないという選択肢せんたくしもありということ。


「じゃあ、3のAから」


 特に急いでも仕方がないとはいえ、3のAからとなったので、私たちも並ぶ。


 ちなみに、最初に並んだのは星歌ほしかたちのチームで、その次に浅葱あさぎたちが並んでいて、その後ろに私たち、という順番。


 後ろには萌たちが並んでいて、最後に羽海うみたちの班。


 で、すぐに参拝が終わるようにと、更に3のBまではすでに並んでいるみたい。


「何をお願いするかねー?」


 頭の上で腕を組みながら、都紀子が話題を振る。


「うーん、受験を無事に合格出来るようにーとか?」


 腕を組んで考えてから、真帆が答えた。


「やっぱり、その辺りが妥当だとうだよねー。でも、結局勉強は自分でやるしかないから、どうなのかなー」


「それはそう。となると、受験でヤマが当たりますようにー、とか」


「あ、そっちの方が現実的かもしんないねー」


 都紀子の返答に「でしょー」と言った真帆が、


紀子のりこは?」


 とそのまま正木さんに話題をスライドさせて尋ねたのだけれど。


「こういうのは、言ったらかなわないんじゃなかった?」


 冷静な正木さんの言葉に対して、ほぼ同時に「あっ」という声と、しまったという表情を浮かべた。


「……そういやそうだった」


「ごめんねー。アタシが話題振っちゃったからさー」


 真帆と都紀子がしゅーんとなったのを見て、少し考える様子を見せてから、


「……私は受験のときまで健康でいられますように、かな」


 と正木さんが答えた。


 2人の願い事を聞いてしまったから、お相子おあいこになるように、と思ってのことだと思う。


 それなら、私も言わないと。


「……私は、皆が希望の進路に行けて……その後にも、また会えますように、かな」


「いいねー」


「でも、また会えますようにってのは、それこそあたしらの努力でどうにかなるもんじゃない? え、何? じゅんはもうこっちもどってこないつもり?」


 真帆の言葉に、私は首を横に振った。


 まあ、入試が上手くいったとしても県外に出なければならないのは間違いない。


 だから、今みたいに毎日のように会うことはできなくなる。


 でも、私が言いたいのは“そういうこと”ではない。


 卒業後はもう男としての生活にもどっているわけで……その状態で会うことが出来るかどうか。


 ……だから、希望だけでも。


「ううん、単純にバイトとか沢山たくさんやってかせがないと、こっちにそんなに簡単に戻って来ることが出来なくなるかなって」


 裏の事情を隠して、表の事情だけ説明する。


 実際、移動費というのはバカにならない金額になると思うけれど、その頃は……車とか運転も出来るようになっているかな。


「もし豊岡とよおか受かったら、新幹線で帰って来ることになるのかねー?」


「うん、多分そうだと思う」


「そっか。あたしも一人暮らししようと思ったら、バイト頑張がんばんないといけないや。あー、でも部活と両立が……」


 真帆がぶつぶつと言っていると、


「あ、もう順番来たよ」


 正木さんの言葉に前を向くと、確かにさっきまで騒がしくしていた浅葱あさぎチームが既に居なくなっているから、私は財布さいふから5円玉を取り出した。


「え、5円? こういうのは高い方がいいんじゃないの?」


「昔から、御縁ごえんがありますようにって語呂合わせ的な意味で使われてるみたい」


 私の言葉に、


「ふーん、じゃあ5円……ないや。10円は駄目だめ?」


 と小銭入れを見ながら真帆が聞く。


遠縁とおえんってなるから、あまり語呂的には良くないみたい」


「げー、じゃあどうしよ……」


「真帆、私が5円あるからこれ使っていいよ」


 正木さんが真帆に5円を差し出す。


「サンキュー、後で返すから」


 そう言って、真帆の準備が出来たのを確認して、4人で並んだ私たちは看板かんばんに書いてあった、二礼二拍手一礼で参拝した。

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