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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第30時限目 遊歩(ゆうほ)のお時間 その3

 しおらしくとはいえ、修学旅行の移動中はずっと無言をつらぬき通すというのは結構……いや、かなり厳しい。


 きっと、先生だって「一生黙ってなさい!」という意味で言ったわけではなくて「常識的な声量せいりょうで話してね」という意味だったに違いないと私たちは勝手に解釈して、様子を見ながら会話を再開した。


「しかし、真帆まほちんは食べてもなかなか太らなくていいねー」


 椅子いすと椅子の間から、都紀子ときこが前の席の真帆たちに声をけると、こちらをのぞく真帆が不服そうに言葉を返した。


「いやいや、最近部活行ってないし、バイトもなくなったから、今まで通り食べてたらちょっと体重増えてきたし! むしろ、あたしよりも紀子のりこの方がうらやましいんだけど」


「……えっ、私?」


 蚊帳かやの外のつもりだった正木まさきさんが、自分の方に話題が向いたからか、小さく声を上げた。


「そうそう。あたしほど食べてないけど、結構甘いものは食べててもせてるじゃん」


「そ、そんなことは……」


じゅんと都紀子もそう思うでしょ?」


 ……あ、今度は私にも流れ弾が。


「え、えーと……まあ、うん」


 当たりさわりない程度に、でも同意しておく。


 実際、正木さんはかなりスタイル良いと思うな、うん。


「つまり、エネルギーは全部……」


「ちょ、ちょっと真帆!?」


 皆まで言わずとも、そして椅子の隙間から見える真帆の視線が向いている方向を考えると、何となく言いたいことは分かる。


 確かに、正木さんの普段の様子と体格からすると、エネルギー消費はあまりなさそうに見えるし、そうしたらまあ……どこにエネルギーがまるかと言うと、という話。


 で、このまま放置してたら真帆のことだから、正木さんのボディチェックまで始めそうだったから、


「真帆、あまり騒いだらまた怒られるよ」


 と私がそっと隙間から声を掛けた。


「むむ、そうだった。ふっふっふ、命拾いしたね、紀子のりこ


「もう、真帆は……小山こやまさん、ありがとうございます」


 ふふんと鼻で笑う真帆と、はぁ……と深い溜息ためいきいた後、隙間から声を返してくれた正木。


 2人のやり取りに苦笑する私だったのだけれど、乗っているバスがブレーキを踏んで止まったから「あれ?」と疑問符ぎもんふ脳裏のうりに発生した。


 確か、まだ出発して30分も経っていないし、目的地到着まではまだ時間があるはず……と思って、体を傾けてバスの通路に視線を向けると、


「ごめーん、何か渋滞じゅうたいにハマっちゃったみたい。今スマホで渋滞じゅうたい情報調べてるけど、折角せっかく、高速使ってるのにちょっと時間掛かるかも」


 と前の方の席に座っている咲野さきの先生の声が聞こえた。


「マジで?」


「あー、行楽こうらくシーズンだもんねえ」


「ってことは自由時間短くなっちゃう?」


 それぞれの席から、どちらかというと不満多めの声が流れてくるけれど、咲野先生が追加で言う。


「こればかりはバスの運転手さんが超絶ちょうぜつテクを持ってても、どうしようもないからあきらめてー……って事故渋滞で片側通行かー。こりゃ、結構時間掛かるかも」


 不満から悲哀ひあいに変わった声を聞いた後に、咲野先生が「そうだ」と椅子から身を乗り出してこちらを向く。


「今トイレ行きたい子とか居る? まだしばらく目的地まで到着しないんだけど、この様子じゃそれなりにバスの時間伸びそうなんだよね。他の先生たちとも相談するけど、もう少し行ったら大きなサービスエリアがあるから、1度そこで止まっといた方がいいかもって。これ逃すと、次は下手すると1時間以上先になっちゃうかも」


「1時間かー……ちょっと心配だねー。行っとく?」


「うーん、私はまだ大丈夫かなと思うけど……でも、渋滞が長引くなら行っておいた方がいいかなあ」


 私と都紀子がそう話していると、私の真後ろで「はーい」と元気よく手を挙げた生徒が大声でこう言った。


「せんせー、トイレー」


 それに対して、返した咲野先生。


「中居ー、先生はトイレじゃありませーん」


 そんな晴海はるみと先生のやりとりで、バス内が笑いに包まれた。


 ……なごませてくれた、のかな?


「んじゃー、次のサービスエリアで止まるからー」


 そう言った先生は電話で、多分他のバスに乗っている先生たちと連絡を取り始め、15分もしない内にバスはサービスエリアに。


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