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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第29時限目 出立(しゅったつ)のお時間 その23

 咲野さきの先生に「もう寝なさーい!」と言われたから、各自で布団ふとんを敷いていたのだけれど、突然発された真帆まほの言葉に、また私たち3人は顔を見合わせてから、まくらの代わりに「もうこの困った子は……」というお母さん的な視線を投げつける。


 ちなみに、さっき布団の並び順はじゃんけんもなしで、都紀子ときこ正木まさきさん、私、真帆と決まったので、真帆以外の全員が同じ方向に、同じ感情を乗せた視線を向けていることになる。


「え、皆やんないの!?」


 とっても心外しんがい! とばかりに真帆が私たちを見るけれど……いや、流石さすがに、ね。


「いやー、もう高校生だし……ねー?」


 戸惑とまどう都紀子の視線がこちらに向くから、私も、


「う、うん……別に嫌なわけじゃないけど……」


 と言葉を濁しつつ答える。


 やったらやったで楽しそうだけれど、このメンバーでやる場合の問題点は多分すぐに私と真帆の一騎打いっきうちになるだろうということ。


「そんなことして障子しょうじとか破っちゃったら先生に怒られるよ」


 正攻法の説得で正木まさきさんもそう援護射撃をしてくれるけれど。


「ええ、でも折角せっかくの旅行じゃん。すぐ寝ちゃうのはもったいなくない?」


 布団の上で胡座あぐらをかく真帆。


 ……まあ、もう今更ではあるけれど、旅館の浴衣ゆかたに着替えているから胡座をかくと、色々と見えちゃうからやめた方が……って”本来は”女の子しか居ないから油断しても仕方がないかあ……。


 まだうずうずしてる感じの真帆をどう止めるべきか、そしてさり気なく色々見えているものを隠してもらうようにするにはどうすべきか、みたいなことを考えていたら、


「それだったらー……」


 と部屋の反対側、つまり背中の方から提案が飛んできた。


「こういうときの定番ならやっぱり恋バナとかー、そういうのはどうかねー」


 なるほど、確かに定番といえば定番。


 ……ただ、この話の最大の問題点。


「あたしはそういう話ないけど」


「……ない、です」


 真帆と正木まさきさんが回答。


「準にゃんは?」


「私も全然……」


 小学校や中学校の頃はそもそもそういう感情がなかったし、高校ではそんなことを考えている余裕よゆうがなかったし……。


 ということで。


「なっはっはー、話おわっちゃったかー。ちなみにアタシもー……うん、全然だねー」


 だれも浮いた話がないから、一瞬で終わってしまった。


「というか、あたしたちもうすぐ卒業なんだし、進路決めなきゃいけないんだから、恋愛とかそういうのやってる暇なくない?」


「いやいやー、なんていうか……ほら、およめさん的な進路もあるからねー」


「あー……まあ、なるほどね」


 ごろっと横になった都紀子の方を向いて、同じく横向きに寝転んだ真帆が理解を示す言葉を返す。


 将来……かあ。


「そういえば、小山こやまさんは……進学するんでしたっけ?」


 布団の上で足をくずして座っていた正木さんが私に話題を振った。


「ええ、そのつもりです」


「やっぱ皆、進学だよねー……」


 真帆が仰向けになって、天井を見上げて言う。


「真帆はどうするの?」


「まだ決まんなくてさ……。陸上を続けるかどうかも悩んでる」


「そっか、陸上か……」


 確かに、真帆としては陸上を続けるという選択肢せんたくしもあるんだ。


 そういう意味では、私は勉強しかしてこなかったから、テストでいい点を取って、いい学校を目指すということくらいしか出来ないけれど、悩むことも少ない。


 それがいいことなのかは分からないけれど。


「正木さんは?」


「私は……家から通える大学にしようかなって思ってます。お父さんもお母さんも、1人暮らしはあまりさせたくないみたいだから……」


「なるほど……」


 確かに、女の子に1人暮らしさせたくない親というのも居るのかも。


 私は聞いていないけれど、中身が中身だから、多分あまり心配されてないんじゃないかな。


「そういや、都紀子はどうなん? お母さん、ピアノの先生……って、あー……」


 多分、真帆も悪気があったわけではなくて、思いつくままにしゃべってしまったがために、途中で言葉を濁したようだったけれど、都紀子は意外な答えを返した。


「それがねー……アタシも音大目指してみようかなーって思ってるんだよねー」


「……えっ!?」


 あのお母さんとはかなりいろいろあったはず。


 もしかして、やっぱりあのお母さんに何か言われてるのかも……?


 私の感情が少し色めき立ったのに気づいてか、都紀子があわてて体を起こし、両手を左右に振った。


「あー、いやいや、大丈夫。別に、お母さんに無理やり行けって言われたわけじゃなくてねー……」


 そうして、都紀子はぽつりぽつりと話し始めた。

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