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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第29時限目 出立(しゅったつ)のお時間 その7

 ゲームのリセットボタンを押しているおまめちゃんを想像して笑っていると、


「猫がリセットボタンとか押すなんてことあるんだな」


 と私の向かいに座った子が居て、


「だね。私も知らなかっ――」


 と何の気なしに話を返している途中で言葉を止め、座った人物を見て、目をしぱしぱさせた私。


「……どうしたんだ?」


 不思議ふしぎそうな表情で私を見るのは星歌ほしか


「いや、どうしたって……むしろ星歌の方がどうしたの? 昨日、家に帰ってなかったっけ?」


「帰ってたよー?」


「……??」


 私の質問に答えたのは星歌の隣に座っていた晴海はるみ


 ……んんん?


 あれ、晴海も?


「確かに帰ったんだけどな。なんつーか……あれだ」


「あれ?」


 星歌の言葉をさらう感じで晴海が続けた。


「ここ、便利! 暖房だんぼうとかも丁度良いし、大体空いてるし!」


「ま、そういうことだ」


 元気に回答した晴海と同意の言葉を発した星歌に、私は「あー……」とちょっと複雑な感情が渦巻うずまいた声を出した。


 寮内りょうないに寮生以外が入ってはいけないという寮則があったかは知らない。


 ただ、少なくとも2回は泊まっているから勝手知ったる他人の家……ならぬ勝手知ったる自校の寮、なのだけれど。


「…………」


 うん、私は隣が見れない、怖くて。


 だって……この2人と萌だよ?


 火とガソリンだよ?


 私は直視出来ていないけれど、萌の視線を直接受けた2人は、


「何だよ、騒がなかったらいいんだろ?」


「そうそう。普通にちょっとおおしゃべりくらいなら良くない? 良く良くない?」


 としれっとした表情で答えている。


貴女あなたたちにもうちょっと落ち着きがあればねえ……」


 萌も比較的ひかくてき押さえ気味の声だけれど、これはあきれを通り越して、むしろ無になった後、喧嘩けんかが起こるパターンかも……と思って戦々恐々(せんせんきょうきょう)としていたら。


「あのー、すみません! じゅん……じゃなかった、小山こやまさんは寮に居られますかー?」


 玄関の方から聞き覚えのある声。


「…………真理まり?」


 私が席を立って玄関に向かうと、果たして真理がそこに立っていた。


「どうしたの?」


「あ、準! あの、今度スタピのライブでサイドギターを担当することになったんですけど、練習場所がなくて……ここの娯楽室ごらくしつを借りられないかなと……」


 今日は色々とあるなあ……という言葉を飲み込んで、私は笑顔で答えた。


「ちょっと待ってね。益田ましたさんに――」


「……お? ホントに真理じゃねーか」


「どったの? いえーい」


 私が言い切る前に、私の背後から顔を出した2人は当然というべきか、さっきの星歌と晴海。


「……えっ! あれ、お2人も……?」


 強制ハイタッチをさせられた真理は状況が飲み込めないようで、私に状況説明を求めるような視線を向けられたのだけれど、私は知りませんと首を横に振った。


「アタシたちは暇だから遊びにきただけー」


「え、良いんですか? 寮に入っている生徒しか入れないものだと……」


「結構、泊まってるヤツも居るぞ。あたしらも小テの勉強会のときに泊まってたしな」


 3人で話が脱線し始めたから、私は一旦いったん割り込んで、


「あー……娯楽室の利用についてはちょっと確認してみるね」


 と言ってから寮の共用サンダルで外に出て、益田さんに電話をけた。


 食堂は3人がまだゲーム中だし、萌は間違いなく不機嫌ふきげん街道かいどう驀進中ばくしんちゅうだろうと思うので、寮の外に出るという選択肢せんたくししかなかった。


『ああ、他に特に使っている子が居ないのであれば構わない』


 事情を説明したら、益田さんは快諾かいだくしてくれた。


『しかし、最近の寮は随分ずいぶん活気かっきづいているな。良いことだ』


「それは……まあ、そうかもしれませんが、その……ちょっと騒がしいかなとも……」


 別に私がだれかの言葉を勝手に代弁する必要はないのだけれど……そういう意見もあるだろう、というていで私が言うと。


『ほとんど人が入らず、静かなだけというのも寂しいものだ』


「それは……そうなんですが」


『なに、彼女のことだったら心配はいらないさ』


 私は人の名前を言っていないのに、益田さんはそう返してきた。

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