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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第5時限目 合宿のお時間 その23

 私もよく食べる方だとは思っていたけれど、大隅さんも中々に良く食べるようで、クリームシチューを2杯お替わりするくらいだった。


 中居さんも「普段は夕飯そんなに食べないんだけどー」と言いつつもお替わりしていたから、よっぽど益田さんの料理が気に入った様子だった。


 食事が終わって私の部屋にすぐ集合。


 それでは勉強を……する気など2人には全く無いようで、入ってきてすぐにベッドの上で寝転がっていたテオと遊び始めた。


 でもまあ、今日は良いかな。


 確かに勉強するのだけが学生の本分じゃないと思う。彼女たちに考えが染まってきた……とも言えるけれど、同時に私自身が前の学校で汚染されていた勉強脳が和らいだ、と言うと流石に言い過ぎかもしれないけれど、でも勉強勉強って考えすぎるのも良くなかったんじゃないかって今なら思う。


「んでさー、こやまんはどうするの?」


「ん?」


「ゴールデンウィークー」


 ビッグ枝豆クッションを抱きながら、最近買ってきたもふもふカーペットの上でゴロゴロしている中居さんが尋ねる。


「あー、えっと正木さんたちと遊びに行く予定。まだ何も決まってないけど」


「なんだ、勉強じゃないのか?」


 意地悪顔の大隅さんはベッドの上でテオの頭を撫でている。撫でられているテオも基本的に尻尾の動きがゆっくりとしているからあまり嫌がってはいない様子。


「もちろん勉強もするよ。今日みたいな感じで寮に泊まって合宿しようって話だし」


「ああ、あたしたちが聞いたのはその話だったのか」


 ようやく合点がいった、との表情をした大隅さんの言葉に頷く私。


「そう。まあ、多分あの3人でも今日みたいな感じで、あまり勉強にはならないような気がする」


「だろうな」


 そして、お風呂が更に鬼門な気がする。


 笑いながら再度ベッドを占領した大隅さんは、部屋に戻ってきて早々にショーツとTシャツのみの姿に戻っていた。この子はそんなに見せたいの? それとも女同士でこういうのって結構普通なの? せめてこういうときはパジャマパーティーじゃないの?


「アタシはまだ何も決めてなーい」


「うちは……姉貴がどっか旅行行くとか言ってたが、あたしも何もねーな」


 中居さんの言葉に続けて、大隅さんが私の枕を抱きしめながらスマホをいじる。


「よし、じゃあアタシたちは3人で温泉旅行にでも行くっきゃないね」


 ばちこーん、と私にウインクしてくる中居さんのニヤけた表情から、何を意図しているかはよく分かる。露出狂じゃないんだから、そうやってすぐに裸になろうとするのはやめてくれないかな!?


 ……いや、中居さん、実はそういう趣味? 大隅さんも同じで、見せたい派とか。


「ま、別に――」


 大隅さんの言葉を遮るように私の携帯が鳴る。液晶画面に表示された電話の相手は正木さん。何かあったのかな?


「誰だ?」


「正木さん」


「心配性だなー。多分、こやまんが虐められてないかの確認電話じゃない?」


 匍匐前進ほふくぜんしんでベッドに近づいて、テオにちょっかいを掛け始めた中居さんがそう答えたから、私は思わず、


「あー」


 と納得の声が出てしまった。


「あーって何だよ、あーって」


 言いながら、大隅さん自身も苦笑する。


「あーはあーだよね、こやまん」


「うん、まあ、まず当たりだと思うよ」


 思わず苦笑した大隅さんと中居さんに向かって笑いを残しつつ、私は部屋の外で通話ボタンを押す。


「はい、小山です」


『あ、夜遅くにすみません。正木です』


「どうしました?」


『えっと……大丈夫ですか?』


「大丈夫、というのは」


 もう何となく答えは想像出来るのだけど、一応尋ねてみる。


『大隅さんと中居さんに、何か困ったことされたりとかないですか?』


 やっぱり。


「大丈夫ですよ。あの2人はそんなに悪い人じゃないですし」


『でも……あの2人、今まで学校でカツアゲしてたとか他のクラスの子に掴みかかったりしたとか、凄く悪い噂が立ってましたし、クラスでも授業サボってばかりでしたし』


「ああ、授業は……そうですね。今も勉強せずにサボってテオと遊んでます」


『そうなん……あっ』


 正木さんの驚嘆の声がフェードアウトしたと思ったら、


『小山さーん。ホントに大丈夫?』


 心配の濃度を濃くした岩崎さんの声がした。


「はい、大丈夫ですが……あれ、こんな時間に?」


『今日は紀子の家に泊まってるの。明日休みだし』


「なるほど」


『都紀子も呼んだんだけど、何か都合悪いから駄目だってさー』


「門限早いって言ってましたしね」


『うん。ていうか、寮での合宿ももしかすると駄目になるかもしれないって』


「え? もしかしてご両親が駄目って言ってるとか……?」


『どうだろうね。都紀子、自分のこと話さないからなー。ま、ギリギリまで行けるように説得はするらしいけど、また詳細は今度話すって言ってた』


「……合宿出来るといいですね」


『だねえ。あ、とりあえず紀子に戻すね』


「はい」


 ガチャガチャ音がしてから、また正木さんの柔らかいソプラノが聞こえてきた。


『あ、正木です。……えっと、とにかくあまり無理はしないでくださいね。あ、後あまり夜更かししちゃ駄目ですよ』


「そうですね、そうします」


『何かあれば電話してください』


「ええ、分かりました」


『おやすみなさい』


「おやすみなさい」


 電話を切って、私が部屋に戻ると、


「あたしたちに虐められてないかって電話だったか? ……おっと」


 と帰ってきた私に向かって、胡座をかいた大隅さんがテオの手を掴み、ピッと立てて尋ねると、テオは流石に嫌がったようで、足早に私の足元まで走ってきた。


「うん」


「やっぱねー。アタシたちがこやまん虐めるわけないじゃん」


 虐められてはないけれど、さっきお風呂で散々色々されたよ。いや、した方なんだけどされた方というか。


「ま、アタシたち色んな人に目ぇ付けられてる系だし、今更だよねー。でさ、そんなのはさておき……」


 むふふ、と笑いながら中居さんが言葉を続ける。


「せっかく合宿なんだからコイバナとかしないと意味ないじゃん? ってことでー、こやまんは彼氏居ないっての分かったけど、好きな男性のタイプはー?」


 分かってて言っているから質が悪いと思うけれど、残念ながら私は男の子より女の子の方が好きなので『彼氏』を『彼女』に置き換えて答える。


「え、ええっと……優しい人、かな」


「模範解答過ぎじゃね? おもしろくなーい。んじゃ次、星っち」


「あたしよりも強い男だな」


 白い歯を見せながら大隅さんが言う。


「あー、星っちは守られたい系女子だっけね。じゃあ、こやまんが、もし、男だったら良かったんだろうなー」


 え、守られたい系? 大隅さんが? と思ったけれど、言わない。


 それと、言いながらちらちらこっち見るのヤメテ!


「いや、初対面の人間を壁にゴリゴリ押し付けるようなヤツはちょっと……」


「それはうちの妹をカツアゲしようとしたから自業自得でしょ」


「まー、こやまんシスコンだからなー」


「シスコンも違う!」


「言っとくけど、あれはカツアゲじゃねーぞ」


「じゃあ何だったの?」


 私が物言いたげに粘度MAXな目で大隅さんを見ると、


「お金を永遠に借りておくだけだ」


 なんてどこぞの国民的アニメのガキ大将みたいなことをキリッ、とした顔で答える。


「結局同じじゃん!」


「ま、そうとも言う」


「そうとしか言わない!」

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