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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第29時限目 出立(しゅったつ)のお時間 その4

「あ、えっと……」


 私の言葉で少し冷静になってくれたらしいみねさんは一呼吸おいてから、


「確かに、そういうのはありかもしれませんね。でも、倉岡くらおかさんたち、大丈夫かな……あ、佐野さんとかも声をけてみて……」


 とうつむきながら、友達の名前をつぶやき始め、その様子を見て、私を含め他の子たちも胸をで下ろした。


 ……あ、みゃーちゃんは仏頂面ぶっちょうづらだったけれど。


 峰さんだけ独りというのは確かに可哀想かわいそうだけれど、私たちでどうにか出来る問題ではないし、ならもっと楽しいことを考えてもらうしかないかなって。


 それはそれとして、私たちももうすぐ修学旅行だからってちょっと調子に乗りすぎたのは自省じせいしないと。


「峰ちゃーん。お取り込み中悪いけど、お土産みやげ何がいいー?」


 峰さんを温かい目で見ていた私たちの中から晴海はるみがそう言うと、峰さんは、


「えっ!? あ、えっと……さっきのはそういう意味で言ったわけではなくて……あの、そこまでしてもらわなくても……」


 とちょっと恐縮きょうしゅく気味。


「いいって、いいって。何でも言ってみー? こやまんおねーちゃんが何でも買ってきてくれるから」


「…………えっ、私!?」


 完全に傍観者ぼうかんしゃモードだった私は、突然名前を呼ばれたどころか巻き込まれたのにびっくりして、思わず部屋に不快害虫の代表格なアレでも出たような驚き方をしてしまった。


 ……あ、ちなみにりょうは古いけれど、今のところ食堂でも自分の部屋でも見たことはないよ。


「あ、そ、そうですよね……」


 しおしおとなってしまった峰さんに、


「あ、違うからね! 普通にお土産は買ってくるつもりだったけど、突然晴海(はるみ)が話を振ったからで……」


 と私は両手を振って釈明しゃくめいする。


「だってさー、峰ちゃん。良かったね」


「晴海ー……」


 私が眉頭まゆがしらを下げつつ、じりじりと近づくと、晴海はその私を降参ポーズで迎えた。


「あっはっはー、冗談じょうだんだってー……いやほら、アタシも買ってきたいんだけど、仲が良いおねーちゃんから貰っとかないと、よく知らないおねーちゃんが渡すのはちょっとハードル高いなーって思うじゃんねー」


「別にあげても大丈夫でしょ?」


「いやいやー、コミュパワーゲージ満タンのこやまんならあまり気にしないかもしんないけどー、そういえば最近寮で見掛けたような気がするような、そうでもないような……くらいの関係の相手から何かガチめなお土産とか貰ってもドン引きでしょ」


 そうかな? と私は首を傾げたのだけれど、周りはちょっとだけ「あー……」みたいな同意する感じの空気がただよっていた。


 ……あれ、別に普通と思っているのは私だけ……?


 いや、コミュパワーがどうこうはさておき、お土産貰うのは普通に嬉しいと思うけれど……。


「んでんでー、峰ちゃんはどんなお土産は何がいいー?」


 更に話を進める晴海に、うーん……と考え込んだ峰さんは、


「頂けるなら何でも……あ、でも逆にそうすると難しいかな……えっと……あ、そうだ、残るもの……何か残るものがいいです」


 と答えた。


「残るもの? あ、食べ物とか消しゴムみたいに消えるものじゃないってこと?」


 晴海の言葉に、小さくうなずく峰さん。


「残るものかー……何がある?」


「あれとかどうだ? 木刀ぼくとう


 星歌ほしかの言葉に、直後全員が静止。


「……うーん、星っちはあれだね、その少年ハートを大事にね!」


 親指を立てた、精一杯の晴海のフォローだったのだけれど。


「……ん?」


 言われた本人は気づいていなかった。


 ……うん、もし買って帰ろうとしていたらやめさせよう。


 暴力沙汰ぼうりょくざたになると心配しているわけではなく、単純にカッコいいから! とかいう理由から本気で買って帰りそうな気がするから。


「とりあえず、何があるかは現地で色々調べてみよっかー……って、ヤバ。いつの間にかこんな時間じゃん。もう、疲れたぴー」


 晴海の声をきっかけに、食堂の時計に視線が向かった後、あちこちで欠伸あくびがまるで輪唱りんしょうみたいに次々と発生していた。


 その様子を見て、ランナーズハイならぬテスターズハイ? みたいな状態になっていたらしいと気づく。


「おやすみー」


 口々にそう言って、皆が部屋に、そして千華留ちかるは家に帰っていく。


 よし、私もそろそろ帰ろうと席を立つと。


「……」


 立ち上がる様子もなく、何か考え込む様子の少女が1人。


 もちろん、考え事をすることは誰にでもあるし、別におかしい話ではないのだけれど、眉間みけんしわにならない程度に寄せている様子から、あまりいいことを考えているようではなかった。


 だから、少し気になって、私は声を掛けた。


智穂ちほ、何かあった?」


「え? あ……いえ」


 椅子いすに座っていた智穂がしゅっと背筋をばし……その後、少し緊張をゆるめてから言った。


「実は……」


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