表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

899/961

第28時限目 不思議のお時間 その26

 新しい話題……と言っても、話題は当たり障りのない話ではなく、私が今やらなきゃいけない事情説明くらいだから、それを頭の中で必死に整理しつつしゃべる。


 幽霊ゆうれいが目撃されたらしいということで調査に来たこととか、危険かもしれないと不安だったから攻撃しようとしたけれど、今後何もしないのであれば今すぐ私たちはこのまま帰るということとか。


 ……かなりこちらに都合の良いことばかり言ったとは思うけれど、回答は、


「…………わかった。今すぐ帰るなら、いい」


 という見た目通り少し舌足らずな声でのOKを意味する言葉だった。


 ……あ、あれ?


 拍子ひょうし抜けというか、あまりにもあっさりすぎて、NGが出たら他に何を言おうかと脳をフル回転させる準備じゅんびをしていたら、脳内の私が勢い余ってずっこけてしまった。


「え、ほ、本当に大丈夫……なの?」


 自分から言い出しておいて、大丈夫と聞くのも妙な話ではあるのだけれど、私は念押しのために聞く。


「うん」


 おかっぱかみを縦に揺らして、少女が答えた。


 ……良かった。


 思っていたよりもずっと理性的というか、優しい子だった。


 ほっとした私は彼女に背中を向けて、


「……じゃあ、帰りましょう」


 と2人……はるかさんと千早ちはやに向かって笑顔を見せた。


 2人は何か言いたげだったけれど、これ以上戦うのは無理だと判断したのか、私がもう1度(うなが)すと素直に歩き出した。


 途中で1度、私は振り返って彼女がその場にそのまま立っているのを確認し、左右をぴったりと吸血鬼きゅうけつき姉妹も無言でついてきていることまで確認。


 うん、大丈夫。


 私たちが下の階に向かうスロープに差しかるまで後数歩。


 ここまで来れば、もう大丈夫だろうと安堵あんどの息をこうとした私は、直後にぞぞっと怖気おぞけが走って、足を止めた。


「準!」


 私が振り向く前に反応した遥さんと千早が私と少女妖怪しょうじょようかいの間に立ちふさが……る、その前に。


「それはさぁー」


「愚策なんだよなあ」


 吸血鬼きゅうけつきの姉妹が少女をり飛ばして……その少女はやみに溶けて、消えた。


 ……そう、消えた。


 もしかすると、蛍光灯けいこうとうけず、月明かり以外の光がないから暗がりに隠れたとか、それこそこの2人が私の中に隠れていたみたいな可能性もゼロではないけれど――


「アタシらめんなっての。……とはいえ、アイツもちょっと可哀想かわいそうだったけど」


「まー、いんじゃない? どっちにしても、悪さ続けるんだったらその内にママが来て消しちゃうだろうしー。今消しても変わんないって」


「それもそうか」


 ――という会話の内容からして、本当に消してしまったらしい。


「……いいか、準」


 姉妹の会話を終えたらしい吸血鬼姉の方が、振り返って私に言った。


 ……相変わらず、はだかのままだったのだけれど。


「あいつは人をだますことを生業なりわいとして、人間が混乱したときとか恐怖きょうふみたいな……簡単に言えば”負の感情”で生きながらえるヤツだ。お前の友人も騙されただろ?」


「え? ……あ、はい」


 確かに、真帆まほに限らず、桝井ますいさん……疑いながらもある程度は信じていた人間を含めれば相当数居たはず。


「だから、基本的には本気でこっちの命を取る気はない。もし、相手の生命を取ってしまったらもうその負の感情を食えなくなるからな」


 遥さんたちも私も、擦り傷はあれども本気で命に関わりそうな反撃がない理由はそういう意味だったんだ。


「とはいえ、今回は大人数で来て……その上、自分たちの状況が悪くなったから交渉だろ?」


「だから、さっきの交渉もさー……分かるっしょ?」


 吸血鬼妹の方がそう、私に尋ねた。


 あの少女は人を騙さないと生きていけない。


 つまり――


「最初から全部嘘、許すつもりはなかった……ってことですか?」


「そ」


 私の言葉に対して、短くそう答えが返ってきた。


 私がひざから崩折くずおれたのは自分がやったことが無駄どころか悪化させていたことによるものなのか、それとも体の奥底から上がってきた恐怖のためか。


 そんな絶望の私の肩を、きゃっはっはと笑いながらたたく妹の方。


「だから言っただろ? 相手が聞く気があるのが大前提だって。最初から約束を反故ほごにする気マンマンのやつに何を言ったって仕方がないってこと」


「そーそー」


「それは……分かってますけど……」


 だったら……最初から分かっていたのなら言ってほしかった。


 完全な無駄だったわけだから。


 そう思ったのが彼女たちにもバレていたのだろうか。


「もし、無駄むだだって言われててもさー」


「準ならやるんじゃん? あの状況、どうにかしなきゃってさ」


「…………」


 確かに、あの短時間で思いついたことは交渉くらいしかなかった。


 なら、ただ見守っているだけよりは……無駄を承知でやっていたかもしれない。


 でも、それが最悪な展開を生んでいたと言われたら、正直(へこ)む。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ