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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第28時限目 不思議のお時間 その23

 そんな中で月明かりに照らされる位置まで出てきたのは女の子。


 うちの冬の制服を着た、おかっぱ頭で、少し垂れ目の、高校生にしては少し背が低めの、”普通”の女の子。


 身長だって、まゆちゃんや花乃亜かのあちゃんが居るのだから別に不思議な話ではない。


 唯一ゆいいつの疑問点といえば、こんな時間に、たった独りで、そして電気も点けずに、こんなところにたたずんでいるということくらい。


 ……ただし、その1点が致命的過ぎる。


 私には分からないけれど、千早ちはやさんの表情からして……もしかして、この子が幽霊ゆうれい


 でも、まさか……普通に足もあるし……いや、幽霊じゃなくて妖怪ようかい? なら足があってもおかしくないのかな。


 そんな混乱している私をよそに、玉瀬家たませけの2人は人間以外の存在と思われる女の子と対峙たいじする。


 先にはるかさんの方が動いた。


 女の子に向かって大麻おおぬさを振り上げて飛びかり……直後、吹き飛ばされた。


 あまりに一瞬だったから分からなかったけれど、少なくとも私にはそう見えた。


「……えっ?」


 自分から単純に距離を取ったのではないという証左しょうさとして、遥さんは何度か床を回転して、背中を壁にぶつけて止まった。


「今、何が……あった、の?」


「下がってて」


 私の質問には答えず、私をかばうようにして前に出る千早さん。


 ……もしかして、そんなに危険な存在なの?


 何とか立ち上がった遥さんと共に、千早さんは2人掛かりでいどむのだけれど、それを簡単にいなしていく少女。


 素人目しろうとめに見ても、明らかに玉瀬家の方が押されていて、このままだと――


「このままだと危ないじゃん?」


「まー、いんじゃない? アタシらには関係ないしー」


「いや、そんな薄情はくじょうなこと……えっ!?」


 今、ここには4人……いや、1人は妖怪かもしれないという話だったから、人間で数えれば3人しか居なかったはず。


 そして、その2人は今、目の前で戦っている。


 ……じゃあ、今、私の真横からした2人分の声は一体……?


 びついた機械を無理やり動かすように、私はまずギリギリと首を右に向けた。


「アレって人間にまぎれて楽しむ、アタシたちと同じタイプじゃん?」


 茶髪でツインテール、そして八重歯の少女。


 続いて、左に。


「だね。まー、悪いことしてないのにケンカ吹っ掛けられたら、そりゃーあの子もキレるっしょ」


 黒髪くろかみ目尻めじりがやや上がり気味の、ちょっと高圧的な……くちびるが色濃いめの女性。


 さっき聞いたばかりの特徴の女性2人が当たり前のように私の横に居た。


 それも、何故か全裸ぜんらで。


「…………えっ……あ、え?」


 存在を確認して、私は思わず声が出なくなっていたけれど、私の狼狽うろたえる声を聞いて、こちらに顔を向けた2人? の吸血鬼きゅうけつきは笑い出した。


「何? じゅん、マジビビリしてんじゃん、ウケる~」


「マジめのマジ? あっはっは、マジマジのマジじゃん」


 けらけら笑う2人に、私は混乱していた。


「え、でもあのとき2人共、遥さんたちにやられて……」


 確か、煙のように消えていったはず……?


「あー、うん。不意打ちだったからちょーっち痛かったけどさー。えーっと……なんだっけ『人体モード』?」


「『実体モード』。相変わらずアンタ言葉を覚えないよねえ」


 妹の方が首をかしげながら言ったことを訂正ていせいする姉。


「だって、何か漢字多くて分かんないじゃん。まあとにかく、その『実体モード』を止めて、えーっと……『寄生モード』! あれになったからさー」


「実体……寄生?」


 駄目だめだ、言葉は耳に入ってくるけれど理解をこばむ。


 その私を見て、またあっけらかんと笑う2人。


「ちょっとー、じゅんが困ってんじゃんさー」


「えー、でもホントのことじゃーん?」


「ちょっとは相手のことを考えてしゃべれ、って話」


 混乱している私を放っておいて、姉妹はまた言い合いしているけれど……え、つまりどういうこと? 


 あのとき、2人は死んでいなかった……ってこと?


「え、じゃ、じゃあ、2人は今までどこに居たの?」


「え? 準の中だけど?」


「そうそう」


「…………?????」


 私の……中!?


 いや、変な意味を想像したのではなくて、言葉の意味が分からなかったからただただ混乱しているだけ。


 ……違う、実際は既に”その状況”になったことはあったけれど、そのときは”中の人”と会話が出来たから、同じ状態だとは思えなかったというのが正しいかな。


 まだ私の脳みそがカオスのうずの中に居る状態で、姉の方が説明してくれた。


「ほら、あそこの……なんだっけ、千早? あの子がさ、準のたましいかたよってるって言ってたじゃん? あれ、アタシたちが2人で無理やり入ってたから。まあ、何か知らんけど偏り自体はアタシらが入る前からちょっとあったけどさ。そこに2人でぐいっと」


 姉の言葉に「そーそー」と当たり前のような顔で妹の方が言う。


「で、でも千早、2人のことは何も言ってなかったけど……」


「アタシらがマジになったら、あんなトーシロに存在をつかませるわけないじゃん?」


 ……えっと、つまり?


 本当に?


 マリアさんのときみたいに、私の中にこの2人が居た、ってこと?

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