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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第5時限目 合宿のお時間 その20

「シスコンどうこうはさておき、そんなの教師も含めてぶん殴っていいだろ、それ。っと、シャンプーとか借りるぞ」


「あ、うん。……まあ、担任の先生だけはちょっとドジだけど、前の学校の中でもまともな方、というかかなり優しい女の人だったから、私のこと理解してくれてたんだよ。転校のことも理解してくれて、この学校も前の先生が幾つか選択肢としてある中の転校先として勧めてくれたところだったんだよね」


 ……まさか勧めてくれた先が女子校だとは流石に予想していなかったけれど。まあ、砂糖と塩を間違えるとか、コケて書類をひっくり返すようなレベルの典型的なドジキャラだったから、もうちょっと自分自身でチェックしておくべきだったかなとは思う。


「とにかく、そんなのだから前の学校には良い思い出もなくて。だから転校した先では全部真面目にやるのはやめようと思ったんだけど、じゃあ真面目じゃないようになるにはどうすればいいのかな、とかなんて思ってたところだったんだよ」


「不真面目のお手本がここに! きゃるーん♪」


 私の横から目の前の鏡を覗くようにして、ピースする中居さんと、


「なるほどな。不真面目代表と関わってみれば、もしかすると何か分かるかもっつーことで関わろうとしたわけか」


 と少し不満そうな横顔が見える大隅さん。


「言い方は酷いけれど、結果としてはそういうこと」


「……は、そうかよ」


 頭からザバン、とお湯を被った大隅さんが口をへの字にする。


「んで、何か分かったのかよ」


「まだ全然。会ったばっかりだし」


「だよねー。んじゃ、今日はオールでギャルトークじゃん!」


「せめてガールズトークと……後、オールは無理!」


「えー、いいじゃん。今日金曜だし、明日何も無いし。何、こやまん明日デートとか?」


「い、いやそういうことではなく、勉強を……」


「つーか、学校があったとしても、宿題があったとしても、不真面目を勉強したいならサボらなきゃ駄目だろ」


 ふふん、と鼻を鳴らし、流し目で私を見る大隅さん。ああ、まあそう言われてみれば。いや、納得しちゃ駄目なんだけれど。


「ま、小山は太田ほど融通の聞かないヤツじゃねーが、元がクソ真面目なせいで、まだふざけるのも中途半端なんだよな」


「……そうなのかな」


「まだ小山を全面的に信用したわけじゃねーけど、サボリたくなったらいいとこ教えてやるから言えよ」


 親指を立ててニヤリと笑って、大隅さんはまたお風呂に入る。


「……よし、こやまん。次は前洗うからこっち向くじゃん?」


「うん……えっ? 背中だけじゃないの?」


「ん? 折角だから全身洗うぽよー」


「え、ええっと……」


 今はもちろん、みゃーちゃん命名の女の子変身セットを装着中だから、ぱっと見ではバレないかもとは思う。


 ただ、この変身セットはみゃーちゃんが言っていた通り、お風呂にしばらく入るか温かいシャワーをずっと当てていると剥がれてきてしまう。逆にシャワーの温度を下げれば、どうやら剥がれるまでの時間を稼げるようだということはお風呂に入りながら色々試して分かっていたから、今回は全身を少しぬるいシャワーを浴びて、お風呂入ってもすぐに上がって着替えればどうにかなるかな、と思っていたのだけど。


「ほらほらこやまん」


「え、ああ、うん……」


 強く拒絶するのはバレる原因かな、って思ったから私は素直に後ろを向く。ええい、どうにでもなーれ。


 お風呂だから当たり前だけれど、何も隠していない中居さんが視線の中へフレームインとフレームアウトを繰り返す。


「いやー、こやまんってホント体でかいし、疲れるわー」


「そ、それなら自分でやるから!」


「いやいやー、だいじょぶだいじょぶ。終わったら洗ってもらうしー」


「さっさとしろよー。あたしはもう上がってるからな」


 洗ったからだろうけれど、下ろした髪がしっとりと濡れていつもより大人っぽくなっていた大隅さんは軽く笑いながら浴室を出ていった。ああ、カラスの行水タイプなんだね。


「星っち、相変わらず早すぎるっしょ! ……んじゃあ仕方がない。オニダッシュで終わらせようそうしよう」


 そう言って、宣言通り私の前面を雑に洗って、


「はい、終了」


 と中居さんが宣言。


 ……本当に雑! ほとんど上半身しか洗ってないし!


「んじゃー、次はアタシの番じゃん?」


「そうだね」


 スポンジを受け取って、ボディソープをスポンジに追加しようとしたところで、中居さんが「あ」と声を上げる。


「こやまんって普段先に体洗う方?」


「あ、えっと、頭が先かな」


「あちゃー、んじゃ順番ミスったね。先に体洗っちゃったし」


「いや、別に構わないよ。こだわってるわけじゃないし」


「アタシも頭が先派だし、先にシャンプーよろ。その間にメイク落とすわー」


「うん」


 シャンプーで髪を洗っている間に、中居さんが洗顔料で顔を洗い、鏡を見たところで、今度は私が思わず「あ」と声を上げてしまった。


「な、中居さん眉毛……」


 洗顔後の中居さんの顔からは見事に眉毛が無くなっていた。


「ん? ああ、そだよ? え、こやまん気づいてなかった系?」


「え、あ、うん」


「別に珍しくなくね? ってまあうちのクラスはあまり化粧っ気無いのばっかりだからアレだけど、フツーじゃん?」


「ふ、フツーなのかな」


 う、うーん……私には分からない世界。


 シャンプーを流してあげて、今度こそスポンジにボディソープを追加したところで、


「……うーんとさ、こやまん。思ったんだけどさ」


 中居さんの疑問文が飛んでくる。


「ん、何?」


「……こやまんってさ、本当に女の子?」


「………………え?」


 今年最長記録を更新したか、しそうな勢いの沈黙だった。


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