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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第28時限目 不思議のお時間 その13

 りょうに帰ってきた私はお小言こごと……いや、お説教……じゃなくて、指導のために寮で待っていた益田ましたさんに事情を説明すると、この日はもう部屋にもどってよいということに。


 もちろん、明日放課後に理事長さんに怒ら……指導を受けることは確定しているのだけれど、流石さすがに今すぐ桝井ますいさんをたたき起こしてでも注意、という流れにはならなかった。


 部屋で星野さんにその辺りの事情を電話してみると、星野さんの方は咲野さきの先生から直接連絡があったらしく、一足先に少しだけ怒られたらしい。


「ただし、どちらかというとわたくしたちを心配した言葉の方が多かったですわぁ」


「……そっか」


「それと、今後もし忘れ物をしたときはすぐに電話をけるように、とくぎを刺されましたわぁ。もし、勝手に入って怪我でもしたら大事おおごとですからって」


 そう言う本人が学校に不法侵入してたんだけど……まあ、先生としては「いいよ」とは言えないよねえ。


 それに、転校直後の不法侵入でかなり理事長さんにこってりしぼられたみたいだったし。


 とりあえず、明日の放課後は集まっていこう、という予約を取りつけて、電話を切った私は予習復習を開始した。


 ちなみに、桝井さんだけれど、何故か一時宿泊をする皆がそろって使っている、私の隣の部屋。


 別に、他の部屋でも構わないのだけれど、今回については色々な事情をかんがみると、この方がいい。


 その理由というのが――


「……れ!? ……ろに……。…………こと!?」


「あ、起きたかな?」


 ……というように、桝井さんが起きたことを確認するため。


 隣の部屋がドタバタとにわかにぎやかになったのを確認した私は、電話中にひざの上で丸くなっていたテオを抱え上げ、ベッドに移動させた。


 折角せっかく惰眠だみんむさぼっていたのに……と言いたげな視線でこっちを見た後、ごろんとかべの方を向いて丸くなり直したテオに苦笑しつつ、私は隣の部屋のドアをノックした。


 その音にびっくりしたのか、部屋の中で一際ひときわ大きな音がした後、金属のこすれる音と共に部屋のとびらが開いた。


「あ、桝井さん。ようやく、目が――」


 最後まで私が言葉を発せなかったのは突然桝井さんが胸に飛び込んできて、受け止めきれなかった私ごとひっくり返ってしまったから。


 その時の衝撃しょうげきは結構だったようで、あまりのドタバタに寮の中に居た全員が私たちの様子を見に来るくらいだった。


 そして、また騒動の中心に私が居るのを見て、寮生の各々(おのおの)が各々の反応を示した。


 ……今回、私は悪くないと思うのだけれど……。


「いやー、すまんすまん。起きたら知らない、真っ暗な部屋やったし、もしかしてトイレの花子さんに連れて行かれたかと思っとってん」


「そんな訳がないでしょう……」


 頭に手をやって、特大の溜息ためいきいたのはもえ


「いや、でも小山こやまも見たよな? あの”目”!」


「あー、そのことなんだけど……」


 桝井さんが気絶していた間に話した星野さんとの会話結果を説明すると、


「……あー、なるほど。そりゃ、確かに可能性はあるなあ」


 と桝井さんが腕を組みながら答えた。


 良かった、桝井さんも勘違かんちがいだったんだ、と胸をで下ろそうとしたところで。


「ただなあ……ねこの目ってまん丸やろ? あのときの目、人間みたいに横長だった気がするんよな……」


 ……そう、ぼそりとつぶやいたけれど、


「あ、いや、まあ猫かもしれんな! そう考えたらこわなくなったわ!」


 と言い直して、桝井さんが大笑いした。


 ……桝井さんが気にしていた、目の形。


 確かに彼女が言う通り、私が見た”目”は丸くなく、少しツリ目気味ぎみの、人間っぽい目だった気がする。


 だから、完全に不安が払拭ふっしょくできたわけではない、という桝井さんの気持ちは何となく分かる。


 けれど、そうそう幽霊ゆうれいなんて居るわけがない……居てほしくない。


 実は気付いていないだけで、ありふれた存在です、なんてことになったら、それこそ今後の生活に支障が出てきてしまうから、猫だったと思い込むことが今取れる最善策なんだと思うしかない。


 多分、桝井さんがさっき言い直したのも同じ理由だろうと思う。


「いやー、しかし困ったなあ。風呂も着替えもないんよなあ……」


 桝井さんが学校に侵入したときの服装はセーターにスカートと、少し寒くなってきた秋に合うような服装。


「制服は星野さんが明日早めに学校に来て、寮まで届けてくれるらしいから、パジャマは私の使う?」


 身長的には、桝井さんは私よりも少し低いくらいだから、丁度合うんじゃないかな。


「おー、助かるわー。ただ、下着がなあ……」


「……あの、それであれば……」


 おずおずと手を挙げたのはちょっと意外な人物だった。

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