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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第28時限目 不思議のお時間 その10

 とにかく、部室をこれ以上探しても、何の成果も得られそうにないということは理解してくれたみたいで、桝井ますいさんを私と星野さんでなだめすかしつつ、部室棟ぶしつとうを後にした。


 部室棟の入口にかぎけた星野さんを先頭に、桝井さん、私の順で侵入口の教室棟の1階トイレに到着。


 ……って、ちょっと待って!?


「トイレの花子さんは!?」


 トイレが入口ってことは花子さんと遭遇そうぐうするかもしれないのでは!?


 あわてた私が尋ねると、星野さんは首を横に振った。


「こちらで出たという話はありませんでしたわぁ」


 その証拠と言うべきか、桝井ますいさんの恐怖メーターである震えは今までとほとんど差がなかった。


 つまり、ここでは出ないはずと頭では理解しているのかもしれない。


 それにしても、トイレの花子さんって案外出現場所が限定的だなあと思ったのだけれど、そういえば昔聞いたトイレの花子さんの呼び出し方も3階、奥から3番目、3回ノックで全て”3”に関連していたような気がしてきた。


 星野さん情報でも、


「トイレの花子さんは3階の、左から3番目のトイレでしか目撃情報がないのですわぁ」


 ということだったから、トイレとアバウトに言っていてもその実、そうそう出会わないということ。


 なんだ、ちょっと安心した。


 ……と言いたいところだけれど、3階ということは私たちの教室に行く時点でどうしても出会ってしまうかもしれない。


 幸いにも、教室とトイレの間にはカフェテリアがあるから直接的には見えないけれど、トイレに入っていくのが目撃されているとすると、この階で出会う確率もゼロではない。


 それに、確か坂本先生からはトイレのみに現れるわけではないと聞いた気もするし……。


 でも、今回花子さんが見つかったってことはその噂の正体って結局みゃーちゃんじゃなかったんだよね?


 なぞが多いなあ。


「ですから、浅葱あさぎが心配するようなことは起こらないのですわぁ」


「心配してない!」


 まだ言ってる……と私は心の中でつぶやきつつも、怖いものは仕方がないよねと苦笑する。


 私にだって、怖いものはあるし。


 ただ、気になることがある。


 目撃情報があった日の3階のトイレ、その周囲にあった監視カメラにはだれも映っていなかった。


 なのに、トイレの花子さんが入っていくのを見た、と言っていた。


 ……やっぱり、カメラには映らない?


 というか……あれ?


 3階なら3年生?


 でも、後輩の子って言っていたような……?


 もしかして、追いかけて3階まで来た?


 私の脳内の疑問に答えられる人もなく、私たち3人はトイレの窓から無事侵入。


「…………」


 声は出さないけれど、私の前を歩く桝井さんが持っているスマホの明かりの動きからふるえているのが分かる。


 ……やっぱり、無理にでも咲野さきの先生に言って、もう1度プリントを印刷してもらう方が良かったんじゃないかなと思うけれど、流石さすがにここまで来たら今更帰るのも、と思う。


 トイレの方を出来るだけ向かないように、私たちはなかば教室に飛び込むように入った。


 最初に落ち着いた私が「えーっと、電気の場所は……」とかべに近づくと「待って!」と星野さんの制止が入った。


「え?」


 スイッチ手前で手を止めて、彼女の真意を確かめる。


「ここは浅葱の机だけ確認すればいいので、いちいち全灯点ける必要はないですわぁ」


「え? いやまあ、そうかもしれないけど……」


 さっきみたいに、桝井さんの心の安寧あんねいを確保するには必要なのでは?


 そう思った私に、暗闇の中の星野さんは追加説明を入れた。


「それに、教室棟の電気は入れると自動的に学校内のセキュリティに通報されるといううわさがあるのですわぁ」


「えっ!?」


 入口の鍵は開けると入った人がバレるって確か咲野さきの先生が言っていた気がするけれど、電気を点けただけでも?


 そうなると、確かに後々面倒になるかも。


「じゃあ、部室棟は? 大丈夫なの?」


「部室棟は建物が別ですから、そういうことは起こらないのですわぁ」


「へえ……」


 普通に考えると、どちらの建物でもセキュリティは一緒いっしょにすべきような気がするけれど、そういうものなのかな?


 とにかく、電気を点けてはいけないようなので、半泣き状態の桝井さんの手元を星野さんが照らしつつ、プリント探しを始める。


 暗い教室の中とはいえ、桝井さんの手元を照らす明かりがあり、この場に3人、それも音や声を出しているからさほど怖くないけれど、もしこんなところに1人で来ていたとしたら、きっと私だって恐怖で動けなくなるかもしれない。


 しばらくの間、桝井さんが机の中から取り出したプリントを見ては「違う……」というのを繰り返したけれど。


「あ、見つけた!」


 突然大声を出すから、その声に私は飛び上がりそうなくらい驚いた。


「びっ……くりした。と、とりあえずプリント見つかった?」


「やー、助かった助かった。あんがとさん」


「では、さっさと出ましょう」


 星野さんがそう言った直後、突然暗闇に響く愉快ゆかいな電子音。


 本日2回目のびっくりタイム。

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