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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第28時限目 不思議のお時間 その3

「確かに、先生たちは何で見てないんだろう……」


 真帆まほの言う通り、もしそんな幽霊ゆうれいが居るなら、先生たちが見てもおかしくはない。


 じゃあ、見間違い……でも流石さすがに着物で見間違いはなあ……。


「もしかすると、何か伝えたいことがあるときだけ出てくるとか!?」


「……真帆」


 徐々にヒートアップしそうな真帆に向かって、くぎを刺すような視線を送る正木まさきさん。


「い、いや、別に探しに行くわけじゃないんだけど。ちょっと気になるじゃん? って話で……知的好奇心的ちてきこうきしんてきなー……?」


 何とかはぐらかそうとする真帆に、更にじとじとと視線を送る正木さんを見ながら苦笑していると。


「何だか、面白そうなお話をしてますねぇ」


 私たちの会話に割り込んでくる声が1つ。


 その声の方を向いて、真っ先に声を出したのは真帆だった。


「……何? 星野」


「お話の仲間に入れてほしいと思った次第ですわぁ」


 そう言いつつ星野さんは自分のおしりで、右から私を椅子いすの半分くらい押しのけて、そこに座った。


 ……いやいや、ちょっと待って。


 確かに、座る場所がないっていうのはそうなんだけど!


 星野さん、私が男だって分かっているでしょ!


 お尻で私をどかしたり、ずっと肩が触れるような距離感で座るのってどういうこと!?


うわさになっている、トイレの花子さんの話ですわよねぇ?」


「……そうだけど」


 とても不機嫌そうな表情で、真帆が星野さんを見る。


 ……ってあれ、真帆と星野さんって仲悪かったっけ?


 いや、まあ写真部は色々やらかしてそうだから、私の知らない内に何かあったのかもしれないけれど。


「丁度良かったですわぁ。わたくし、今トイレの花子さんの情報を集めていたところで……なので、情報交換と行きましょう?」


「情報交換?」


 怪訝けげんな表情の真帆だったけれど、私はその前に1つ気になったことが。


「そういえば、桝井ますいさんは?」


 ここの3人、華夜かよ千華留ちかる星歌ほしか晴海はるみ、ほのかと智穂ちほみたいに、大体は仲の良い組み合わせだったり、グループだったり、基本的に彼女……星野さんの隣には桝井さんが居ることが多い。


 今日は休み……というわけでもなかったはず。


 2人で居るところを見掛みかけた、というか朝に挨拶あいさつしたし。


「あー……浅葱あさぎはこういうの、駄目だめなのですわぁ」


「こういうの?」


「怪談とか、幽霊とか、そういうたぐいのもの全般ですわぁ。彼女、図体ずうたいはでかいのに、そういうところ苦手なのですわよねぇ……」


 あきれた溜息ためいきく星野さんだけれど、普通に考えたら嬉々(きき)として幽霊の情報収集とか探しに行くとかの方が珍しいというか、あまり一般的ではない気がするけれど。


「情報って言っても、あたしの後輩の子がトイレの花子さんを見たって話をしただけだけど」


「後輩って部活の? いつ頃ですの?」


 星野さんの質問に答える真帆。


「そう、陸上部の後輩。時間は良く覚えてないらしいけど昨日の夜で、日が落ちてから学校に行ったって言ってたから多分、6時半とか7時以降だと思う」


「……」


 星野さんはしばらく黙り込んでから、


「確認ですけれど、そのトイレの花子さん……着物を着ていた、という話ですわよねぇ?」


 と確認する。


「そうだけど」


 真帆の言葉に、星野さんは真顔になって、


「……やっぱり、妙ですわねぇ……」


 とつぶやいた。


 多分、本人は独り言のつもりだったのだろうけれど、ほぼ密着しているから聞こえてしまった。


 一体、何が妙なのだろう? と聞いてみようと思ったら、先に真帆が口を開いた。


「で、アンタの方の情報は?」


 真帆がうながすと、星野さんは首を横に振った。


「残念ながら、私も同じ情報しか持っていませんわぁ。ただ、同じ情報を複数人から仕入れた、ということだけは答えておきますわねぇ」


「ってことは、やっぱり気にして色んな人に相談してるってこと……」


 そして、また考え込む真帆。


「真帆」


「大丈夫、探しには行かない。ただ、力になってあげたいと思って……」


「……」


 そんな真帆の様子を見て、


「もし、何か新しい情報があれば持ってきますわねぇ」


 とだけ言い残し、星野さんは席を立った。


 うーん……幽霊騒動、結構大きな騒ぎになっているんだなあ。


 一体、何が起こっているのやら――


「いやー、なかなか興味深い話だねー」


「だ、ぬぇぇっ!?」


 同意しようとした私だったのだけれど、星野さんが立ち去ったから元の位置にもどそうとした私のお尻を跳ねのけて、都紀子ときこが私と同じ椅子に座ったせいで奇妙な声を上げてしまった。


 ……いや、都紀子は自分の席あるよね!?


「あ……」


 真帆と正木さんがそれを見て「しまった」みたいな表情をしている。


 いや、しまってないですよ?


 全然、しまってないですよ?


「都紀子に先越された」


「にゃっはっはー。早いもの勝ちさー」


 勝ち誇った都紀子。


「よし、じゃあ逆から攻めよう」


「じゃあ、う、後ろから……?」


 そう言って立ち上がる真帆、と無言で頷く正木さん。


「え、いや、ちょっと? 2人共!?」


 いやいやいやいや、無理!


 1つの椅子に4人は無理!!


「左右から頑張がんばればいけるんじゃない?」


「無理無理!」


「じゃあ、アタシがひざの上に座ればいいかねー?」


「それだ!」


「それだ、じゃない!」


 皆、ご飯を食べ終わって暇だからって、もうしっちゃかめっちゃかになり――


「昼食中とはいえ、限度があるわ」


「……すみません」


 で、4人(そろ)ってもえしかられたのだった。


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