第28時限目 不思議のお時間 その1
「そういや、準は知ってたよね? うちの学校の七不思議」
昼食の時間。
今日は結構カフェテリアが混んでいて、場所が取れそうになかったら仕方なく注文だけして、教室で机を合わせて食べることに。
そんな中、真帆がコロッケを咀嚼し終えて、飲み込んだ後にそう言った。
「え? あー、うん、3つくらいは。なんだっけ……トイレの花子さん的なやつと、夜な夜な美少女のみを狙う吸血鬼とかいうやつと、音楽室から聞こえてくる美少女の声……くらいだけど。あ、後、実はロボット、という渡部さんもそうなんだっけ? ってことは4つかな」
思い出しながら、指折り数えて私は答えた。
ちなみに、そのうち3つは既に知っている。
トイレの花子さんと言いつつ、その生活範囲が実はトイレだけではないらしい……という噂の存在は、坂本先生の話だとみゃーちゃんのことだろうという話だったし、吸血鬼は千華留のこと……夜限定というのは謎だけれど。
そして、最後に人間にそっくりに見えるけれど、実はロボット……の渡部さんもクラスメイトだし。
「そうそう。で、その中のトイレの花子さんなんだけどさ……」
次に、白米を口に放り込んだ真帆は続けた。
「なんふぁ、ふぁなふぉふぁんがね」
「いや、全っ然分かんない」
私の言葉に、こくこくと頷いてからごくんと飲み込んでから、
「……トイレの花子さんに会ったらしい、って子が出てきて話題になってるんだよね」
と真帆が言う。
「あ、準にゃんが前にトイレだけじゃない花子さんって言ってたやつかー。そういや、そんな話題もあったねー」
都紀子も、今日はお弁当持参ではなく、クラブハウスサンドを頼んだらしく、もっしゃもっしゃしていたのを飲み込んでから話に参加した。
「ということは、やっぱり赤い吊りスカートで、黄色いシャツだったのかねー?」
「あれ、白いシャツじゃなかったですか?」
「ありゃ、そうだっけー? アタシが聞いたことあるのは黄色いシャツだったような気がしたけどなー?」
都紀子の疑問に、持参のポットに入れていたお茶を飲んでいた正木さんが首を傾げたのを見て、都紀子も同じく首を傾げた。
いや、それ以前にあの話はみゃーちゃんのことではなかったの?
「それが、どっちでもなくって。何かこう……着物のおかっぱ少女だったらしいよ」
「着物……ってそれはトイレの花子さんというか座敷童子じゃない?」
花子さん、という名前自体には純和風な感じがあるとはいえ、良く聞く怪談では洋服のイメージ。
着物で建物内に居る妖怪とか伝承の類だと座敷童子かなって思うのだけれど。
「いや、あたしもそう思ったんだけどさ。陸上部の後輩なんだけど……その子に聞いたら、夜中にトイレに入っていく透き通った女の子を見たんだって!」
私の懐疑混じりの言葉に、真帆がずいっと顔を寄せて言った。
「そもそも、なんでその子は夜中に居たのかが……」
「確かに……」
「うんうん」
私の素朴な疑問に、正木さんと都紀子も同調する。
「明日までに提出しなきゃいけないプリントを忘れて、学校まで取りに来たら遭遇しちゃったんだって言ってた」
「へー……」
プリントを取りに行った、という話を聞いて、そういえば転校初日に咲野先生と……いや、完全に私は巻き込まれただけなのだけれど、とにかく先生が忘れた私の入学関連の資料を取りに行ったときのことを思い出した。
とはいえ、どうにも出来過ぎというか、タイミングが良すぎる気もするなあ……。
でも、真帆は本気だった。
「その子、誰も信じてくれないけど、先輩には話しますって言ってくれたからさ。あたしもちゃんと信じてあげなきゃって」
「……なるほど」
まあ、つまり……立場的なものもあるってことかな。
鰯の頭も信心から……だとありがたいものみたいな感じになっちゃうけれど、そんな感じで信じるだけならアリじゃないかな、とか思っていたのだけれど。
「でさ。あたしたちでその花子さん、探さない?」
「………………え?」
思わぬ提案に、思わず静止した後に、私は激しく目を瞬かせて聞いた。
……そういえば、前に吸血鬼騒動のときも、真帆は事件解決に結構前のめりだった気がする。
「え、いや……探すって、本気で言ってる?」
「本気」
そうなると、話はちょっと違ってくる。
「というか、幽霊とかそんなの居るわけ――」
そう言い掛けて、良く考えたら自分はマリアさんという、私の体に入っていた幽霊の同居人が居たことを思い出した。
「――なくは……ないかあ……」
「でしょ? 準に聞いた話がホントなら、花子さんも居るかもしれないってことでしょ?」
「ぐぬぬ……」
否定しようとした自分が、真実かもしれないと思うような体験をしているのだから、なんとも言い切れない。
とはいえ、探しに行こうという話に、簡単に首を縦に振ることは出来ない。
まあ、吸血鬼問題では桜乃さんとも色々あったし……ね。




