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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第5時限目 合宿のお時間 その18

「とりま、タオルと一緒に着替えも貸してちょ」


「……へ?」


 思わぬ言葉に、私も思わぬ声が出てしまう。


「ほら、良く考えたら着替え持ってきてなかったし、今から家まで帰るのもちょめどだからさー」


「ちょめど……?」


「ちょー面倒ってことー」


 新語がどんどん出来ていって、私ついていけないのですけれど!


「ああ、え、いや、でも……」


 確かに今日、寮に泊まれるという話を聞いて、その足で寮に来た2人だから確かに着替えまで準備してるとは思えないけれど、普通そういうのって友達に借りるものなのかな? せめて下着とかはコンビニで買ってくるとかしない?


「おーい、小山。寮ってシャンプーとかリンスの備え付けってあるのか?」


 脳内の疑問文を処理し切る前に大隅さんも現れ、私の頭に視線を向けて、


「――ん? なんだ小山、頭の上に何か灰色っぽいの……もしかして猫か?」


 と疑問に首を傾げた。


「あ、うん」


「頭に乗る猫とか聞いたことないな、珍しい……ってのはまあ良いとして、風呂の準備しようにも服もシャンプーとかも何もねーから小山貸してくれ」


「え? 大隅さんも?」


「別に良いだろ? ホテルみたいに浴衣でも置いてりゃ、浴衣1枚でも別に構わねーんだけど」


「いや、それはダメでしょ!?」


 大隅さんの大胆発言に私が口角泡を飛ばすように言うと、


「は? 別に浴衣1枚で十分だろ、寝るだけなら。まあ、まだちと寒いが、真夏とかならパンツ1枚とかで寝るのはフツーだろ?」


 意に介さない表情であっけらかんという大隅さん。


「いやいや、普通じゃないと思うよ!?」


「そうだよ星っち」


 中居さんの援護射撃が――


「こやまんとかアタシは胸ちっさいから良いけど、ちゃんと夜用のブラ付けとかないと星っちのサイズだったら寝てるときになんたらかんたらがダメになって胸垂れるじゃん」


 ――そういう問題!?


 後、岩崎さんもそうだったけれど、胸のサイズで仲間分けってされるのは普通なの?


「なんたらかんたらって何だよ」


「忘れたー。とにかく、胸の形が崩れるからちゃんとブラしないとヤバイって」


「はー、そうかよ。んじゃあ、ブラも貸してくれ小山」


 というか、もう全てを借りることが既定路線になっているんだけれども……ああもう、いいや、いいです、お好きにどうぞ!


「良いですよ」


「どこに入ってんだ?」


 部屋の中に入って、箪笥の引き出しを次々に勝手に開けていく大隅さん。


「箪笥の上から2番目、小さい引き出しにブラとパンツが入ってます」


 自由人の大隅さんへ投げかけた私の言葉に、中居さんがうーん、と唸る。


「こやまんもパンツ派か」


「え?」


 パンツ派って何? ちょっと卑猥な響き。


「ショーツって言わないんだ」


「あ、ええ?」


 箪笥を調べていた大隅さんが振り返って、


「やっぱ、そうだよなあ。ショーツとか気取って言わねえよ」


 と頷く。


「いや、気取ってないし。パンツって言ったらフツーはズボンの方を指すっしょ?」


「いや、ズボンはズボンだろ?」


「えー、マジでー?」


「つか、ショーツって言う方が珍しいっての」


「いやいや! 星っちのお姉ちゃんもショーツ派だったよ?」


「うちの姉貴は変人だからな」


 ギャル2人はファッショントークしながら、中居さんも並んで、私の箪笥から下着やシャツを取り出し、試着し始める。


 ……って、ここで試着するの!?


 当然の如く下着まで脱ぎ始める2人に私は視線を逸らし、でも変なところに視線を泳がせるのも変だと思ったから、頭上のテオへごく自然に向ける。


「うーん? 何かサイズが色々あるんだけど、これ全部こやまんの?」


「あ、はい」


 頭の上のテオと遊ぶフリをして、視線を2人に向けないようにしながら答える私。


「んー……やっぱサイズ合わねーな」


「まー、こやまんのサイズじゃ合わなくて当然じゃん? アタシは割りとぴったりだけど」


 多分、私が本当の女の子だったら結構傷つく言葉がさっきからポンポンと飛び交っている気がする。気兼ねない感じで喋っているから、悪意は無いんだと思うんだけど、人によっては剣山で心をさすられるような痛みがあると思う。


「つーかサイズバラバラ過ぎて、合うのがあるか良く分かんねーし、とりあえずパンツとシャツだけ借りるか」


「あ、アタシこれ良いかも。ほれほれ、星っちどーよ」


「ん? まあ良いんじゃねーの? ……よし、んじゃ風呂行くかー。小山―、シャンプーとかは何処にあるんだ?」


 大隅さんの声に、私はやはり視線を合わせずに答える。


「お風呂場のロッカーに置きっぱなしだよ」


「後、クレンジングもよろー」


「え? クレンジング?」


 ……ってなんだっけ。


「いや、小山は化粧してねーし、持ってねーだろ」


「えー? こやまんノーメイク?」


「あ、はい……そういうものではないんで……そういうものではないの?」


 未だにまだ敬語になり掛けたのを訂正しつつ、話の流れからクレンジングとは化粧落としのことだろうと思い当たったけれど、化粧なんかしたことはないのでもちろん持っている訳がない。


「小山、洗顔はあるだろ?」


「うん、洗顔なら」


「んならそれで落ちるのを期待するしかねーな」


「さげぽよー……」


「んじゃ、行くか」


 大隅さんが寮長室で私がやったみたいに、私を引っ張っていこうとする。ああ、一緒に入らないという選択肢をそもそも端っから潰されてしまった! と思うのはさておき。


「え? あ、ちょ、ちょっと待って! ま、まだ私着替え持ってないから」


「ん? ああ、まだだったのか。じゃあさっさと選べ、すぐ選べ、即選べ」


「急かさないでってば」


「ってかこやまん。風呂何処ー?」


「トイレの向かいにあるよ!」


 何でこんなにテンション高いの、この2人。


 ……まあ、この場合一緒に入浴することに拒否権は無いよね。理事長さんには他の子と入ることがないように釘を刺されていたけれど、こうなったら仕方がない。後で素直に怒られよう。そして、後で男とバレたときのために辞世の句をしたためておこう。合掌。


 テオをベッドの上に置いて「お留守番ね」と言うと、言葉が分かったみたいにその場で丸くなって寝始めたので、私は頭を撫でてから着替えとタオルを持って、先に部屋を出た2人を先導しつつお風呂場に。


「おー、銭湯みたいだなココ」


「いーじゃん!」


 お風呂の扉を開けると、すぐに部屋の中を見て回る2人。私はそんな2人を尻目にいつも使っている鍵付きロッカーからシャンプーとリンス、ボディソープ、洗顔を取り出す。


「よっしゃ、入るぞー」


「おー」


 テンション高い2人だけど、服を乱雑に脱いではロッカーに投げ込む大隅さんと対照的に、きっちり畳んで置いていく中居さんが少し意外だった。


 あ、いや、別にそんなにじっと着替えを見ていた訳ではないけれどね!


 もたもたと私が着替えて、最後に浴室に入ると、


「こやまん遅いっしょ」


 大隅さんも中居さんも既に湯船でくつろぎモードだった。大隅さんなんか頭にタオル乗せてるし。


 私は先に体を洗ってしまいたいタイプだということから、頭を洗って体を洗い始めたところで、


「お客さーん。お体洗いましょうかー」


 という声が掛かる。


「へっ?」


 振り返ると、いたずらっぽく手をワキワキさせた中居さんが立っていた。もちろん何も隠していない状態で。


「ちょっ……」


「まーまー、任せるぽよー」


 言って、私が体を洗っていたタオルを奪って背中を洗い始める。ああう。

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