第27時限目 友情のお時間 その34
「付き合ってから考える、ということですか?」
「そうは言ってないけどさ。付き合うべき条件を悩むくらいなら、付き合ってから相手と合う合わないを決めた方がいいんじゃないかって話。少なくとも、会っていないときにでも意識する相手なら、好きになる要素はあるんだろうし、分からないなら付き合ってから考えても良くない? ってコト」
そう言ってから、羽海は苦笑して言った。
「ま、結局恋なのかどうかは本人しか決められないし」
「うーん……何だか煙に巻かれたような……」
「いや、真面目に答えてるつもりだけど。もし、今アタシがほのかの発言から『それは恋だ』とか『まだ恋じゃない』って断定したとして、受け入れられる?」
羽海の言葉に、ほのかはううん……と少し考えてから、ゆっくりと首を横に振った。
「でしょ? だから、アタシはそういう判断の仕方もありじゃない? ってことを言うくらいしか出来ないんじゃね? って話」
「そういうことですか……」
まだ完全に納得はしないものの、理解はしたといった表情のほのか。
そのほのかを見ながら、羽海は「でもさあ……」という言葉で切り出した。
「ほのかの気になってるヤツって、どこで出会ったん? 気になっている割に、相手のことをあんまり知らないように聞こえるんだけど。街ですれ違ったとか、同じバスに乗ってたとか、そんなレベル?」
怪訝そうな羽海に「ああ、すみません」と謝罪してからほのかは続けた。
「少々前に病院で初めて出会って……話は何度もしたことがあるのですが、あまり個人的な話題にまで踏み入ったことがなくて。そういう家庭の事情なども含めて話をしようとすると、何だか詮索しているようで気分が悪いのでは? と思ったのです」
病院で出会った……そういえば、元々クラスメイトではあったけれど、初めてほのかと話をしたのは病院だった気がする。
確かに、個人的な話もしたことはほぼないと言っていい。
……でも、ほのかは病院に行くことが多いだろうから、私じゃない可能性もまだまだ十分ある。
「あのっ、その人は、せ、背は大きいの?」
「え? ああ、はい。身長は私よりずっと大きいです」
繭ちゃんがそう尋ねたのを皮切りに、他の子たちもほのかに尋ねる。
「眼鏡は掛けてる?」
「いえ、多分ですけど裸眼です」
「多分?」
「本人に直接聞いてないですから。今度聞いてみますね」
まだ、私じゃない可能性も――
「部活は?」
「いえ、特には入っていないようです。なのに、色んな部活に顔を出していると聞きます」
私じゃないかも――
「勉強は出来る?」
「テストの点はいつも良いみたいですね」
私じゃ――
「動物は好きな人?」
「猫を飼っていると聞いたことがあります」
……私だよね、うん。
いくら何でも一致点が多すぎる。
むしろ、ここまで一致していて違ったらある意味では凄い。
「なんか、準っぽい」
「!!!!」
花乃亜ちゃんの言葉に、私は慌てて顔を逸らした。
だって、今の私の表情、凄いことになっていただろうから。
何とか、心に平静を取り戻した後、徐ろに皆の方を向いてから、
「……確かに、共通点は多いかもしれないかな」
と私は笑顔で言った……いや、言えた、はず。
……ちゃんと自然な表情、出来てるかな。
「準みたいな男子かあ」
まじまじと羽海が私を見てから――
「具体的にそう言われちゃうと……ないかな」
「ないわね」
「…………うん」
羽海の言葉に、萌、華夜が続く。
……そうだろうと思ってたけれど、ここまでストレートに言われると流石にぐさりと来る。
これ、私が男だと仮定したときだよね?
女の子……と思っているからじゃないんだよね!?
結構凹む私に、
「わ、私、好きな人が、準ちゃんみたいな、人だったら、嬉しい、よ?」
とフォローしてくれる。
相変わらず、繭ちゃんは優しいなあ……。
「私も、準が男だったら、あり」
花乃亜ちゃんも同調してくれた。
その反応を見て、羽海が「あー、いや」と弁解を始めた。
「いや、別に準が嫌いなわけじゃなくてさ。何ていうか……準みたいな男の人だったら、彼氏というよりも友達みたいな感じで、そういう関係にならないかなーって」
「私は毎日のように叱らないといけないわ……いや、まあ、私だって嫌いなわけではないけれど」
「……あまり、イメージ沸かないから」
その反応を見たほのかは、
「つまり、お3方は準が彼氏という選択肢はない、ということですね?」
と結論付けた。




