表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

864/960

第27時限目 友情のお時間 その33

「ちょっと待って。しょぱなから気になるんだけど、好きかどうか分からないって?」


 羽海うみの制止に、けろりとした表情でほのかが答える。


「はい。気になっているのは間違いないんですが、これが恋心なのか、それともただの好奇心こうきしんなのかが分かっていないんです。だからこそ、経験者の意見を聞きたいなと思いまして」


「あー、なるなる。オッケー、ごめん続けて」


 先をうながす羽海だけれど、私は心の中で叫ぶ。


 いや、本人が別に好きでもなんでもないって言っていたはずなんだけど!?


 ……え、恋に恋する乙女おとめを装って、実は私以外にも彼氏になって、みたいなことを言っている相手が居るような、魔性の女だったの!?


 それはそれでまあ……うん、なんかちょっと、ほのかが言い寄っている相手は気にはなるけれどさ!


 脳内カオス状態の私をよそに、ほのかは話を続ける。


「その人は何と言いますか……お人好しで、基本的に誰からお願いされてもノーと言えないタイプなんです」


「それ、駄目だめなヤツじゃん」


「かもしれないですね」


 ほのかが羽海の言葉に同意しつつも、説明を続行する。


「なのに、正義感が強いせいで、他人の家庭に口を出して、大喧嘩おおげんかしたりもしたことがあるそうです」


「え、もっと駄目くない? それ」


「はい、正直どうかと思います」


 あまりに断片的すぎて、まだ断定は出来ないけれど……話を聞く限りでは、どう考えても私なのだけれど。


 でもそうすると、今までのほのかの態度と合わないし……心変わりしたということ?


 気になることはあるけれど、下手に首を突っ込むと色々とボロを出しそうだから、耳をそばだてるだけにしておく。


「ただ……何ででしょう、そういう悪いところも聞くんですけど、良いところを聞くと倍くらい返ってきて、最後には嫌いじゃないって皆が口をそろえて言うんです」


「……」


 皆が無言で、ほのかの話を聞く。


「確かに、私がからかっても無視せずに返してくれたり、大変な目にうと分かっていても付き合ってくれたり。そういう姿を見ていて、最初は私に対する物珍しさかなと思っていたんですけど、なんかそういうのじゃないんだなって思いまして」


「あ、あの……」


 躊躇ためらいがちに、まゆちゃんが手を挙げて、話に割り込む。


「はい、何でしょう?」


「そ、それって、椎田しいださん、ではない、ですか?」


「……ああ、ええ、もちろん! 智穂ちほさんは別格です」


 にこっと椎田さんの方を見て、ほのかが笑うと、椎田さんはほっとしたような、でもむしろ不安の色がにじみ出たような表情になった。


 ……それはそうだよね。


 実は気になっているのが椎田さんだったってオチだったら……いや、それはそれでどう転ぶのかちょっと心配ではあるのだけれど、少なくとも女の子同士の『スキ』という感情で収まるのかもしれないけれど、椎田さんではないとなると「一体、だれのこと!?」となってしまってもおかしくない。


 しかし……さっきから、自分のこと? 違う? とやじろべえみたいな不安定な感情で話を聞いているからか、自分でも分かるレベルに挙動不審きょどうふしんになっていると思う。


 他の子から見たら、かなり怪しい気がするけれど……まだほのかの話に夢中になっていて、気づいてはいないみたい。


「ああそれと、その気になっている人は生物学上では男性になりますし、彼氏になってもいいと言ってくれました」


 ほのかの言葉に、周りの子たちから黄色い悲鳴みたいな声が上がる。


 ちなみに、私が男だと知っている華夜かよがお風呂場の天井から落ちてくる水滴よりも冷たい目線をこちらに向けているけれど、完全に誤解だからね!


 彼女は勝手にときめいて、つきまといますっていうストーカー宣言をしたというだけ!


 まあ、別に男だとバラされたくなかったら……みたいにおどされているわけではないのだけれど、


 いや、そもそも私と決まったわけではないし、特定の誰かと付き合うとかそういうのも全然考えてないから!


 剣山の上ででんぐり返しをさせられているような、そんな心の痛みにさいなまれながらも、私は口をはさまず、耳だけ彼女の方に向けた。


「ただ、私は恋愛をしたことがなかったので、中途半端な気持ちで彼氏になってもらうのはどうなんだろうと思いまして……。”好き”というのは相手のことを四六時中しろくじちゅう考えるようなとき? それとも、たまに電話したくなるだけでも? 会いたくて震えてしまうような相手? と考えると難しくてですね……」


 ほのかが口を閉じたけれど、しばらくは誰もそれに答えを返せなかった。


 お風呂の換気扇かんきせんの音だけが響いていたお風呂場で、最初に口を開いたのは羽海だった。


「……アタシも別に彼氏が居たことないけどさ。まあ、別にそこまで堅苦しく考えなくていいんじゃね? 一緒いっしょに居たいとか、話をしたいとか、そういうのがあるなら付き合っちゃえばいいじゃん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ