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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第27時限目 友情のお時間 その31

 よし、この手でいこう。


「あー、えっと、私はもうちょっと勉強してから入るね。やり残したところがあったから」


 これならいけ――


「先にお風呂入ってからでも出来るでしょう?」


「皆、一緒いっしょの方が、いいよ」


「早く入ろ」


 ――駄目だめだった。


 もえまゆちゃん、花乃亜かのあちゃんの包囲網をくぐり抜けることはできそうにない。


 他の手……他の手は!?


「あ、でも、みゃーちゃんたちの進捗しんちょくも見とかないと――」


「あの2人はもう寝ているでしょう? いいから、さっさと着替え持ってきなさい」


「……はい」


 萌の容赦ようしゃなくがっちりホールドするような言葉に、私はうなずく以外の反応をふうじられた。


 そんな私の様子を見ていた羽海うみが目をぱちくりさせて、私に聞く。


「あれ、じゅんって他人とお風呂入るの、駄目だめなタイプだっけ? 割と何度も一緒だったことある気がするけど」


 ……目立ちすぎた行動のせいか、不信感を抱かれてしまったみたいだから、とりあえず言い訳しておこう。


 首をかしげた羽海うみに、私は誤魔化ごまかし笑いをする。


「ほら、私って体が大きいから、これだけの人数で入ると邪魔じゃまかなーって……」


「気にするほどじゃなくない? りょうのお風呂、十分広いし」


 あっけらかんとした羽海の言葉は私を信用してくれているからなのだろうけれど、今回はそれがあだとなっている気がする。


 今までの寮生の中で、私の”事情”を知っているのは華夜かよくらいだったから、お風呂が被ったときには露骨にならない程度に時間をずらしていたし、そもそも今でも可能な限り、他の子とお風呂の時間が被らないように気を付けていたりする。


 でも、前にも言った気がするけれど、繭ちゃんと花乃亜ちゃんはむしろ私が入っている時間をねらって来るような節があるし、萌は単純に予習復習が終わる時間帯が同じせいなのか、お風呂で遭遇そうぐうすることがしばしばあるし、羽海も最近はアイドルのレッスンが終わった後に帰ってきたとき、お風呂タイムが重なることも結構ある。


 だから、事情を知っている華夜だけが時間を避けている……ように見えて、実は華夜もたまにわざとじゃないかって時間帯に入ってくることがある。


 もちろん、たまたま何か理由があって遅かったりするのかもしれないけれど、少なくとも私は事前に、9時以降の少し遅めの時間に入るよと言っているのだけれど、顔を合わせることは少なからずある。


 何にせよ、こうやって女の子とお風呂に入ることで、最終的に行き着く処遇しょぐうは受け入れるつもりだけれど、どうせ処遇を受けるのなら、自分から他の子が入っているお風呂に突撃しようというつもりはな――


「……ありがとうございます、智穂ちほさん」


 ――私の思考は、そこで中断された。


 ……うん、まあ、結局皆でお風呂に入るという結論は揺るがなかったので、なんかこう、あれこれ脳内で言い訳していただけです、はい。


「寮のお風呂って広くて気持ちいいですね」


 うーん、とびをした元橋もとはしさん。


「広いからって小学生2人がたまに泳ごうとしたりするのだけれど」


 苦笑する萌の言葉に、同じく苦笑を返した元橋さんだったのだけれど、


「でも、その気持ちは分かります。私も出来るなら、同じことしてたかもしれません」


 と答えた。


「え、元橋さんも?」


「ほのか、です」


「え?」


 さっき作ったあきれ顔のまま、萌が元橋さんの方を見ると、ちょっと茶目ちゃめのある表情で元橋さんが言った。


「こうやって、寮生として共に生活するんですし、下の名前で呼んでみませんか? ね?」


 元橋さんがそう言って、私たちを見た。


 ……勝手な解釈かもしれないけれど、元橋さん自身が下の名前で呼んで欲しいと思っているのと同時に、椎田しいださんが受け入れられやすくなるように、って配慮なんじゃないかなって思う。


小山こやまさん……いえ、じゅんとか、皆のことを下の名前で呼ぶことが多いですよね?」


「え? あー……まあ」


 視線の置き場所に困っていた私が天井を見上げていたら、突然声をけられたから、不意に元橋さんの方を向いて……いや、お風呂に浸かっていたら見てない! セーフ! 


「確かに、準ちゃん、お友達、すごく増えたね」


「まあ、”色々”あったからかな」


 繭ちゃんの言葉に、私はその”色々”を思い出しつつ、苦笑した。


 ホント、転校してまだ半年くらいしか経っていないなんて思えないほど、色々あったなあなんて思う。


「ま、そういうのもいいわね。で、ほのかもそういうのは好きなんだ」


「ええ。昔は木登りしたり、かけっこしたり、結構活動的な子だったんですよ?」


 微笑びしょうたたえた元橋さん……いや、ほのかはすっと表情を変えて続けた。


「あの”事故”がなければ……と思わない日はありません。でも、あの”事故”があったからこその出会いもあったと思っています。……いえ、そう思わないとやっていけないから、そう思い込んでいるだけかもしれませんが」


 そう言った後、切り替えるようにほのかは手を合わせた。


「……とそんな暗い話をしていても、勿体もったいないですよね。折角せっかく、皆さんと寮生活をするんですから、もっと楽しい話がしたいです」


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